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この記事は、当初UAE時間の水曜日午前0時51分27秒に予定されていたホープ探査機の打ち上げ延期を反映して更新されました。
ジュマナ・カーミス
ドバイ: 私たちの宇宙に魅せられる気持ちはとどまるところを知らない。宇宙の神秘と謎を解き明かしたいという願望は何十年にもわたり、各国が未知の世界の調査に力を入れ、進化し続ける科学技術の知識の限界を推し進める原動力となってきた。
こうした間には歴史的なできごとがいくつもあり、1957年に打ち上げが成功した人工衛星スプートニク1号、1961年のユーリイ・ガガーリンによる地球周回軌道到達、そして1969年の史上初の月面着陸などがある。
アラブ首長国連邦はエミレーツ・マーズ・ミッションの最終発射カウントダウンを間近に控えており、こうした輝かしい一覧に、アラブ地域の国では初となる惑星間探査機をもうすぐ加えることができるようになる。
ホープと呼ばれるこの無人探査機は、月曜日早朝に日本の種子島宇宙センターから打ち上げられ、赤い惑星までの4億9,500万キロの旅路に出る予定だ。
「このホープ・マーズ・ミッションの費用は2億ドルに達しましたが、他の似たようなプログラムに比べるとコストは世界最低と思われます」とムハンマド・アル・ガルガーウィ内閣府担当兼未来相は同国首相官邸によるツイッター投稿メッセージで述べた。
このホープ探査機は、重さ289トン、高さ53メートルの三菱重工業のH2Aロケットによって打ち上げられる予定だ。
探査機は2021年2月に火星の軌道に入る予定で、アラブ首長国連邦の建国50周年記念に間に合う。
「本ミッションは(アラブ首長国連邦の)大いなる志を具現化したものであり、世界に前向きなメッセージを送り、障害や困難があっても手を緩めずに続けることの重要さを示すものです」とサラ・アル・アミーリ先端科学担当国務相兼エミレーツ・マーズ・ミッション副プロジェクトマネージャーは話す。
同地域にとってのこの歴史的瞬間は数十年にわたる準備と、アラブ首長国連邦建国の父であるシェイク・ザイード・ビン・スルターン・アル・ナヒヤーンが1970年代に定めた大局的ビジョンの達成に向けた取り組みによるものだ。同氏が宇宙に興味を持つようになったきっかけは、何度もアポロのミッションで月に向けて飛んだことのあるNASAの宇宙飛行士と1976年に面会したことだ。
米国大統領のリチャード・ニクソンもシェイク・ザイードに、1972年のアポロ17号のミッション中にタウルス・リットロウ渓谷で採集された月の石を贈り物として進呈している。これを最後に現在に至るまで実施されていない月面着陸からの記念品はアル・アイン博物館に展示されている。
それから間もなく、シェイク・ザイードは国民と世界に向けて、宇宙探査への同国の好奇心と熱意はとどまるところを知らないという明確なメッセージを送った。そうして同国の宇宙への旅路が始まった。
2006年にアラブ首長国連邦は、いつの日か火星に宇宙船を送るという目標のもと一連の知識移転プログラムを確立すべく世界中の大学や宇宙機関と密接な協力を開始した。
しかしながら、2014年にアラブ首長国連邦宇宙機関が設立されるまで、世界が同国の意欲的な宇宙探査計画に関心を示し注目することはなかった。
2017年に34歳の軍パイロット、ハザ・アル・マンスーリが4,000名の応募者から2人選ばれた同機関初の宇宙航空団の1人となった。
厳しい知能検査と体力テストの後、同氏はムハンマド・ビン・ラシード宇宙センターとロシアの宇宙機関ロスコスモス間の合意の一環として、ロシアで訓練を受けた。
このアラブ首長国連邦初の宇宙飛行士は、2019年9月25日に打ち上げられた国際宇宙ステーションに向かうソユーズMS-15宇宙船の搭乗クルーの一員となった。
アル・マンスーリの8日間のミッションは、無事カザフスタンに降り立ち「シェイク・ザイードの宇宙ミッションは成功を収めた」上で帰還したと誇らしげに宣言し、10月2日に終了した。
24年前の1985年6月に、サウジアラビア空軍のパイロット、スルターン・ビン・サルマーン王子がスペースシャトル・ディスカバリーのSTS-51-Gミッションに搭乗し、宇宙を訪れた初のムスリム、またアラブ人となった。同王子はまた、初めて宇宙を訪れた王族でもあり、当時28歳で最年少のスペースシャトル搭乗員ともなった。
2年後、シリア軍のパイロット、ムハンマド・ファーリスがソビエト連邦のインターコスモス訓練プログラムに参加し、搭乗科学技術者としてソユーズTM-3ミッションでミール宇宙ステーションに飛んでいる。同氏は宇宙で7日間23時間5分を過ごした。
現在、初の月面着陸から51年後、UAE人のチームが赤い惑星へのミッションを主導しており、世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって難易度が上がった任務、ホープ探査機の全ての側面を監督していくことになる。
結果として本ミッションのチームは、輸送、旅行、ロジスティクス、健康を守る上での適切な予防措置に従う必要といった課題を鑑み、3つのグループに分割された。
最初のグループのメンバーは4月6日に日本に到着し、義務づけられている検疫と健康診断を受けた。2番目のチームは4月21日に続いた。3番目のチームはアラブ首長国連邦に留まる予定で、本ミッションのための後方支援を提供する。
パンデミック中のマーズ・ミッションの安全性に関する懸念を和らげるため、シェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アル・マクトゥーム、アラブ首長国連邦首相兼ドバイ首長は7月1日に同ミッションの最終準備を再確認した。
同氏は打ち上げ予定日を確認し、同ミッションを「全てのアラブ人の成果、全てのUAE人のプライドの源」と表現した。
シェイク・ハムダーン・ビン・ムハンマド・アル・マクトゥーム、ドバイ皇太子は「ホープ探査機は我が国の宝である何百名ものUAE人の若手エンジニアと専門家達の集大成です。。。人類に向けた希望と楽観論のメッセージを表しています」と話した。
スハイル・アル・ザフリー、エミレーツ・マーズ・ミッション副プロジェクトマネージャー兼宇宙船リードは、4月に種子島宇宙センターに到着して以来、同探査機は一連の検査を受けてきていると話した。
50営業日に渡って実施した検査には電力や通信、高度制御、指揮統制、推進力、温度制御およびソフトウェアシステムなどの宇宙船の各サブシステムの機能試験を含む。
「最終チェックは、燃料注入前に全システムが確実に機能し要件を満たすようにするために重要なステップです」と同氏は話した。「発射時限に従って探査機の発射準備を完了する前にこれらのパラメータを取得することは極めて重要です。」
火星の軌道に入った後、ホープ探査機は火星の大気浸食とともに、同惑星の日次・季節サイクル、水がなくなり生命に適さない環境となったプロセスを調査する予定だ。
アラブ首長国連邦は探査機で収集したデータを200以上の世界の学術・科学団体と無償で共有する意向だ。
アラブ首長国連邦は2117年までに火星に人類初となる都市を建設する計画だ。今月、シェイク・ムハンマドがアラブ・スペース・パイオニア・プログラムの立ち上げを発表した。同プログラムはアラブの宇宙分野における科学技術の専門知識の発展を狙いとしている。
3年プログラムの一環として、アラブの若手研究者、科学者、発明家と創造的な才能を持つ者が拡大を続ける宇宙セクターでのキャリアに必要となるスキルを学んでいく。
アラブ首長国連邦は、2117年までに人類が居住できる最初の都市を建設することを目指しており、それにより世界をいつでも動ける構えにしておくと公約している。これは専門知識と将来の世代の意思決定を通じてのみ達成可能なことだ。