
タレク・アリ・アフマド
ロンドン:アルジャジーラがアラビアの若者向けチャンネル「AJ+」で「ホロコースト否定」という映像を放映し、その中でユダヤ人がイスラエルを建国するために大虐殺の規模を誇張したと主張したことから、先週末に再び非難を浴びた。
しかしこのカタールが有するニュースネットワークが反ユダヤ主義で、このようなレトリックを喧伝していると見られるような出来事はこれだけではない。アルジャジーラが憎しみ、戦争、過激主義を伝えるためのプラットフォームであることは繰り返し証明されている。
専門家はアラブニュースに対し、ヘイトスピーチはアルジャジーラ設立以来ずっと不可欠なものであり、最近のAJ+のアラビア語ビデオが理由で解雇された2人の従業員に関しては、単なるスケープゴートに過ぎないと語った。
もし誰かに責任があるとすれば、それはアルジャジーラ・ネットワークで長年会長を務める、カタール王室のハマド・ビン・サーメル・アール=サーニー氏であると、専門家は語った。
「もし誰かが罰せられるとしたら、それはチャンネルを長年管理してきた彼になるでしょう」と、2011年までエジプト国営放送でニュースの責任者を務めていた、ベテランジャーナリストのアブデラティフ・エル・メナウィ氏は語った。
エル・メナウィ氏は、アルジャジーラの評判と歴史が「人々の憎悪を煽ることに基づいている」ために、AJ+で起きたことは驚くべきことではないと述べている。
また同氏は「その証拠は、このチャンネルがその歴史の中のある段階で、世界を分断するオサマ・ビンラディンと彼の過激派の演説を放送したことにある。またアルジャジーラには、他者への憎悪を理由に長年テレビ番組に出演してきたユスフ・アルカラダウィのような、テロと差別の支持者もいる」と、付け加えた。
一方、アルジャジーラ・イングリッシュの元国際局長であるモハメド・ファフミー氏はアラブニュースに対し、アルジャジーラの編集方針は、同局の「日々の取材を促し、資金を提供しているカタール政府の外交政策と同じくらい嘘つきだ」と語った。「ある時は欧米の視聴者に向けた英語チャンネルでユダヤ社会を褒め称え、次の日にはアラビア語チャンネルでユダヤ人へのヘイトスピーチを放映している。そしてアルジャジーラ・アラビックの中で、カタールのユスフ・アルカラダウィのような説教者が、ユダヤ人だからという理由で罪のない女性や子どもたちを殺すことに賛成するのを許している」。
アルジャジーラの番組「シャリーアと生活」を通して、エジプトの聖職者であるアルカラダウィ氏は、ユダヤ人の殺害を求める宗教的布告を出した。
「裏切り者であるユダヤの侵略者たちを処せ…彼らはあまりにも多くの暴虐と腐敗を地球上に広めている。ああ神様、このユダヤ・シオニストの侵略者集団を1人も救済してはならない。ああ神様、彼らの数を数え1人ずつ殺し、根絶やしにしてくれ」と2009年1月9日、アルカラダウィ氏はアルジャジーラ・アラビックで放送された説教の中で語った。同年の1月29日、30日に放送された説教で同氏は「歴史の中で、神は彼ら(ユダヤ人)の堕落のために、彼らを罰するための人々を与えてきた。ヒトラーによる罰もそうだ。ユダヤ人はこの問題を大げさにするが、ヒトラーは彼らの行為になんとか制限をかけていた。これは彼らにとって神罰であった。次回は神の思し召しで、罰は忠実な信者たちの手で行われるだろう」と語った。
ファフミー氏はこのネットワークに過失があるとして現在訴訟を進めており、また法的措置をとったのは同氏だけではない。アルジャジーラ・アメリカの番組作成・ドキュメンタリー部門の元副代表であるシャノン・ハイバサリック氏は、市民権の侵害と契約違反を理由に、廃止されたアメリカでのネットワークとその元CEOであるエハブ・アル・シハビ氏を提訴した。
訴訟の一節の中でハイバサリック氏は「視聴率が経営陣の期待に応えられなかったため、アルジャジーラはアラビア的な視点を前面に出して中立的なふりをすることを堂々と放棄し、アメリカ、イスラエル、エジプトなどの国々を批判する番組を放送することを公然と要求した」と、述べた。
また従業員らが「イスラエル人はヒトラーのようなものだ」「イスラエルを支持する者はひどい死を遂げるべきだ」などの扇動的な発言をしたと、訴訟の中で主張している。「このような違反社員を懲戒処分するのではなく、特に表面上は偏見のない報道機関から出たこのようなあからさまな差別について、非難するために敢えて立ち上がった人たちを解雇することで、アルジャジーラは露骨に本音を示した」。
ネットワークの電波を通して反ユダヤ主義的なレトリックを示す例が多く放映される中で、最新のビデオが2人のジャーナリストの停職処分に繋がり、トップはこの件における責任を拒否している。
「映像の内容とそれに付随する投稿はネットワークの編集基準に違反しているとして、AJ+の経営陣によって全てのAJ+のページとSNSのアカウントから速やかに削除された」と、同局の声明では述べられている。
しかしエル・メナウィ氏は「このようなドキュメンタリーを制作した人たちを止めて処罰するという決定ははったりだ」と語った。同局の他の従業員に対しても同じ処分を行うかどうかをアラブニュースが聞いたところ、アルジャジーラの代表らからの返答はなかった。
2009年に英紙ガーディアンが入手した米国の外交公電は、カタール政府とアルジャジーラがいかに相互に関係していているかを証明している。
「中東で最も試聴されている衛星テレビ局であるアルジャジーラは、カタール政府から多額の補助金を受けており、同局の政治家にとって便利な道具となっていることが証明されている。(カタール政府が)反発しているにもかかわらず、アルジャジーラはカタールで最も有益な政治・外交手段の1つであり続けている」と公電には書かれていた。
現在はカナダの「Investigative Journal」でCEOを務めるファフミー氏は「残念ながら、アルジャジーラはカタールの諜報機関の延長でしかない。これは放送している内容だけでなく、悪質なニュース取材のプロセスや、個人やテロリスト集団との裏で行われている不正・違法行為も含めての結論だ。ジャーナリズムの気高い技術とは決して相容れないプロセスを彼らは採用している」。