
タジュラ、リビア—- 多くのリビア人は、紛争や貧困、パンデミックに疲弊し、今年の犠牲祭を迎えるにあたり、気分が沈んでいる。
毎年、首都トリポリの郊外で行われ、いつもは賑わいのある羊市場が閑散とし、ほとんど客の姿が見えない中、金網の囲いの中で子羊が鳴いている。
タジュラ郊外では、一握りの潜在的な買い手が生贄の動物に目をつけている。間に合わせの囲いが照りつける夏の日差しに部分的に陰を作っている。
繁殖家のスレイマン・アーテルは、日の出よりもかなり早く起床し、約140キロ離れた町、自宅のあるズリテンからリビア西部最大の家畜市に自分の家畜を連れて来た。
イスラム教徒にとって、この祭りは、預言者アブラハムが神に従順であることを示す行為として自分の息子を自ら進んで生贄にしようとしたが止められ、代わりに生贄の子羊を捧げたことを称えたものである。
信者は儀式として動物(羊や山羊、牛、さらにはラクダ)を犠牲にすることにより、これを祝っている。生贄の動物は、3つの部分に分けられ、貧しい人、親戚、自分の家に充てられる。
アーテルは、砂埃の舞う3km2の広大な土地を見渡しながら、「いつもなら、祭りの前日には人々が押し寄せ、羊を飼っています」と話した。
しかし、今年は、家畜の価格が高いことやパンデミックに由来する混雑した市場への恐れ、財政危機、リビア自体がいっそう不安定な情勢になったこと、これらすべての影響で客足が遠のいた。
彼のような牧畜農家にとって、「すべてにこれまで以上の費用がかかります。飼料代は2倍になり、一部の経路の情勢が不安定なため、町から町への輸送費もしかりです。」とアーテルは述べた。
「がっかりします」と彼は言う。同国ではそれ以外に、水不足や停電が蔓延しているため、空調が滞るだけでなく、肉を冷蔵庫で保管することもできなくなっている。
この悲惨な状況は、COVID-19危機による世界的な石油価格の低迷で悪化している。リビアでは、外出禁止令や学校およびモスクの閉鎖、旅行の禁止にもかかわらず、ウイルス自体は再び勢いを増している。
ここ数週間の新たな感染者数は、3月下旬に北アフリカの国でウイルスが検出されて以来、初めて1日あたり100人を超えた。
リビアではこれまでに3,017人の感染者が出ており、呼吸器疾患による死者数は67人だ。しかし、国が分裂し、公共医療制度が分断されているため、多くの人がこれを実際よりも少なく見積もった数字だと考えている。
タジュラの市場では、アハメド・アル=ファラーハが、重要な家族の宗教的伝統を続けようとして絶望的なつけ値で、手の届く価格の羊を探し、3日目に入っていた。
彼は、3人の息子のうちのひとりが羊の横で写真のポーズをとっているのを見守りながら、「値段を聞いて何も買えないままです」とAFPに話した。
「満足なお金がありません。少し借りなければいけなくなると思います。」
標準サイズの羊の価格が1,200から1,400ディナールである。これは、手段があったとしても銀行口座から十分な現金を引き出すことのできない多くのリビア人にとって高すぎる額だ。
「ほとんどの銀行が、犠牲際までの間、1日あたりの引き出し額の上限を1,000ディナールと決めています」と語るのはモハメド・ケッチャー。彼もまた市場で苛立ちを募らせる客のひとりだ。
「だから私たちは躊躇しているのです」と彼は話した。「全額を生贄の羊に使うべきでしょうか。それとも、家族の1ヶ月分の生活費としてとっておくべきでしょうか。」
AFP