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ベイルートの子どもたち、死者が出た爆発によりトラウマに苦しむ

先週ベイルートに大規模な爆発の衝撃が走ったとき、3歳のアベド・アチ君がレゴブロックで遊んでいたそばで、ガラス製のドアが砕け散った。(AP)
先週ベイルートに大規模な爆発の衝撃が走ったとき、3歳のアベド・アチ君がレゴブロックで遊んでいたそばで、ガラス製のドアが砕け散った。(AP)
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12 Aug 2020 09:08:03 GMT9
12 Aug 2020 09:08:03 GMT9

ベイルート:先週ベイルートに大規模な爆発の衝撃が走ったとき、3歳のアベド・アチ君がレゴブロックで遊んでいたそばで、ガラス製のドアが砕け散った。

アベド君は頭に怪我、小さな手足に傷を負い、救急治療室に搬送され、血を流す他の人々と一緒に腰かけて順番を待った。

以来、アベド君は変わってしまった。レバノンの他の何千人と同じように、アベド君はトラウマ(精神的外傷)に苦しんでいる。

「私が病院に着くと、アベドは救急治療室の隅で、ひどい怪我を負った人達や床中にしたたる血を見て震えていました」と母親のヒバ・アチさんは言う。ヒバさんは爆発があった8月4日は仕事に出かけており、アベド君をおばあさんに見てもらっていた。

「アベドは赤の色が大嫌いになりました。赤い靴を履くことも拒否します」とアチさんは言う。また、アチさんに靴を洗うよう強く要求するのだと付け加えた。

約3,000トンの硝酸アンモニウムによりベイルートの港で起きた大規模な爆発により170人以上が死亡、6,000人が負傷し、広範な損害が生じた。国連の児童機関ユニセフによると、死亡者の中には3人の子どもが含まれ、31人以上の子どもが病院での治療を要するほどの深刻な傷害を負ったという。

NPOセーブ・ザ・チルドレンによると、10万人もの子どもが家を出ることを余儀なくされ、その多くが心に傷を受けている。

「どんな音にも飛び上がるようになりました。以前ほど食欲もありません」とアチさんは言う。「以前は人懐こくて、機嫌のいい子だったんです。今では誰ともしゃべりません」

セーブ・ザ・チルドレンの精神衛生の専門家、ジョイ・アビ・ハビビ氏は、トラウマを負った子どもの反応はさまざまに異なると語る。

「頭痛、吐き気、夜尿症、消化の問題等は親が見過ごしがちな身体症状です」とハビビ氏は言う。「親にべったりとくっつき、非常にピリピリするようになります」

ゼイナブ・ガザリさんの娘たち、8歳のヤスミンちゃんと11歳のタリアちゃんは爆発以来、子どもたちだけで寝室で寝ることを拒否している。ガザリさんのアパートでは爆発の衝撃で窓が割れ、部屋じゅうにガラスが飛び散った。

「私たちは奇跡的に助かったんです」とガザリさんは言う。窓を修理する数日間、ガザリさんは子どもたちをよそで過ごさせなければならなかった。「でも、娘のヤスミンは『どうして普通の子どものように暮らせないの?どうしてこんなことを経験しなくちゃいけないの?私はまだ8歳なのに』と何度も言ってきます」

偶然同じ苗字の精神分析医、マハ・ガザリ氏は爆発以後、病院で多くの子どもたちの治療に当たってきた。ガザリ氏によると多くの子どもが精神的に不安定になり、「またこのようなことが起きるのかと繰り返し聞き続ける」と言う。

「多くの子どもたちが家に帰りたくないと言い、ガラスのドアや窓に近づくことを拒みます」とガザリ氏は付け加えた。

事故の日、リカルド・モラスキ君はイタリア人の父親とレバノン人の母親とともにベイルートの祖父母宅を訪れていた。爆発が起きたとき、6歳のリカルド君は飛び散ったガラスで怪我をし、何針か縫うことになった。祖父のカゼム・シャムセディンさんは亡くなった。

誰が爆発を起こしたかもわからない、その相手に対して、リカルド君は繰り返し怒りを爆発されるようになったという。

「火山の中にぶち込んで、爆発させてやりたい」とリカルド君は言う。

ガザリ氏によると、子どもたちがトラウマを感情的に処理することを許すことが極めて重要なのだという―怒ることを許しつつ、同時に子どもにとってのストーリーを言葉で、あるいは図画工作やごっこ遊びを通じて話すよう促すのだ。

「息子のファレスは、火事が起こってそこから逃げなくてはいけないという設定のごっこ遊びばかりします」と、2児の母であるラニア・アッカーさんは言う。4歳の娘ラヤちゃんは、レバノン国歌から替え歌を作り、爆発の歌にしてしまった。

「世界中が爆発しちゃった」とラヤちゃんは歌う。「そこらじゅうが火事、テレビではみんな私たちのことを話してる」

子どもたちが爆発に関するニュースや大人の会話に晒されれば、トラウマが再現されることになりうるとガザリ氏は語る。子どもがそのようなものに接触しないようにし、助けを求めることを氏は勧める。

「子どもは柔軟性と回復力がありますが、トラウマを処理しないままにすると不安の増加や行動上の問題へとつながり、トラウマが人生の一部となってしまい、後にネガティブな対処メカニズムを引き起こすことになりかねません」とガザリ氏は言う。

「安全、普通、日常の感覚を取り戻すことがプラスに働きます」

ヒバ・アチさんは息子とともにレバノンを離れ、ドバイで働く夫のもとへ行くことに決めた。多くの人が同様の思いを抱いている。

「ここはアベドにとって安全な場所ではありません。今までも、これからも」とアチさんは言う。「もうここにはいたくない、それだけです」

アチさんの感じる罪悪感は多くの親が抱くものだ。特に1975~90年のレバノン内戦を経験した者は、子どもに対して申し訳なさを感じている。

「私たちの世代は永遠のトラウマを抱えています」と、2児の母であるアッカーさんは戦後のレバノンで育った層について語る。「でも、なぜ子どもたちまでもがこんな経験をしなければならないのですか?」

AFP

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