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国民の不満が募る中、虚空を見つめるイラク

2022年7月30日、バグダッドのグリーンゾーン地区に向かう橋を渡るため、コンクリートの壁を取り除くイラクのデモ参加者ら。(AP)
2022年7月30日、バグダッドのグリーンゾーン地区に向かう橋を渡るため、コンクリートの壁を取り除くイラクのデモ参加者ら。(AP)
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01 Aug 2022 12:08:43 GMT9
01 Aug 2022 12:08:43 GMT9

7月27日水曜日、デモ参加者らはバグダッドのグリーンゾーンにあるイラク議会を襲撃し、反イランのスローガンを叫びながら防壁を取り外し、要塞化された区域に押し寄せた。

グリーンゾーン自体は、問題を抱えた土地で政府の機能を維持するために有益とされるものだが、イラクの過去40年間の痛手の名残となっており、 約42年前のイランとの8年にわたる悲惨な戦争に始まり、1990年代の壊滅的な打撃を与える制裁、2003年の米国主導の侵攻、2014年以降は国境を越えたテロリストの台頭が続き、そして現在、イラクの他の地域が低迷する中、ほぼ恒久的に膠着状態が続いている。

戦争、内乱、抑圧に加えて、イラクは時折起こる宗派間暴力やクルド人の分離主義の脅威も抱えている。その 一方でイラクでは、政治的な争いが絶えず、内部財政の圧迫、激しい対立、制度的能力が限られていることなどが、改革の着手、ガバナンスの強化、汚職の制圧の大きな障害になっている。
より広い意味で、イラクの政治・社会・経済は近年、劇的な変化を遂げ、長年にわたる不満や緊張が高まり、新しい「国家」の登場ごとに国民の不信感が高まり、首都南部の宗派間の暴力が深刻化した。こうした課題に取り組むことは、イラク、さらにはより多くの地域の長期的な安定のためには、依然として重要であるが、この地域に対する米国の関心が低下しているため、このような変化は、外部で画策されイラク人に強制されるのではなく、内部から生じざるを得ないだろう。

しかし、残念ながら、炭化水素の供給、ダーイシュの「敗北」、依然として明白な米国の安全保障の存在感があるにもかかわらず、イラクは20年近く、一貫して自国の存在を再び主張し、国家の結束を高め、政府への国民の信頼を回復することに失敗している。
多くの観測筋によれば、水曜日のデモは、イスラム教シーア派聖職者ムクタダ・サドル師の支持者が、モハメッド・シーア・アルスダニ氏の首相への指名を阻止することによって、長らく遅延していた政府樹立プロセスを頓挫させようとするものであった。

しかし、人口4,000万人のうち半数が貧困にあえぎ、若者の5人に4人が職を失い、住民の約5分の1が緊急に人道支援を必要としているこの地で、何らかの変化を求めて街に繰り出すイラク人がいても不思議ではないだろう。デモ隊による議会占拠後、こうした要求が受け入れられるかどうかは、何とも言い難い。

今回の動きは、170億ドルの食糧・安全保障開発法案が可決された後の6月9日のサドル師の撤退と同様、サドル派の支持者(またはサドル派)が政界の勢力図をひっくり返すための策略に過ぎないとする見方もある。サドル師は、米軍に対する武力闘争の中心人物として有名になったが、数か月かけて政府樹立の統括に失敗した後、サドル派の73人の議員に辞表を提出させるなど、政治パフォーマンスで高い評価を得てきた。その結果、新たなパフォーマンスのたびに、イラクはいっそう政治的な不確実性と行き詰まりを深めている。

サドル師の駆け引きの最終目標は多くの場合、解読や見極めが難しいが、最近のデモや先の辞任は、次なる政府が極めて弱体化することを意味している。

ハフェド・アル・グウェル

今回のデモで数か月にわたる政治危機が最高潮に達したが、それまでは、サドル派は昨年10月の選挙で最多議席を獲得し、イラク議会を支配する勢いであった。サドル師は早急に、マスード・バルザニの率いるクルディスタン民主党(KDP)と、モハメド・アル・ハルブーシー議長率いるスンニ派「タカドゥム」の連合と合流して、イラク初の多数派政府を樹立しようとしたのである。

この動きは、シーア派の調整枠組み派の中で最多議席を占めるヌーリー・アル・マリキ前首相の「法治国家連合」の要請で、対立するシーア派連合が国民統合政府を模索しているのとは対照的である。ヌーリー・アル・マリキ氏のグループは、サドル師の駆け引きや外国の影響に対する非難演説をほとんど無視したまま、サドル師をシーア派政党の緩いグループの中で最終的に屈服させられるならず者と見ており、イラクの観測筋とアナリストは、問題を抱えた隣国内の「友好的」政治要素をまとめるためのイランの試みであると見ている。

残念ながら、イラクの民族・宗派別の権力分担モデルは、知名度の低い政党の参入と代表権を向上するように作られているため、単に議席の過半数を獲得するだけでは議会を支配することはできないのである。例えば、サドル派の政府樹立の失敗を考えてみよう。これは、シーア派の調整枠組み派が、政府樹立プロセスの一部でもある大統領選出を妨害したことが主な原因である。
このシステムは、書類上では最も善意のアイデアが、現実には最悪のジレンマに陥ることが多いという典型的な例であり、特に脆弱で紛争の多い国では、いつも変わらず一般市民がその代償を支払わされるのである。

この抗議デモが、現在シーア派の調整枠組み派が主導している政府樹立プロセスに重大な影響を与えるかどうかを判断するには、時期尚早である。シーア派の調整枠組み派とクルド人は、次期政権について議会での信任投票を求める前に、誰が大統領になるか(通常はクルド系の人物がなる)についてはまだ合意に至っていない。 今のところ、クルド系の主要2政党のうち1政党だけが、アルスダニ氏の首相指名を支持することを表明しているが、サドル派に属するクルディスタン民主党(KDP)は沈黙を守り、最近の情勢が政治情勢を大きく変えるかどうか、またどう変化するかを見極めているようである。

また、現職のバルハム・サリフ氏の任期を更新するか、イラク第8代大統領バルハム・サリフ氏の後継者としてクルディスタン地域のレーバー・アフマド内相を指名するかについても、両者の意見はまだ一致していない。シーア派の調整枠組み派は、最大の争点であるアルスダニ氏の指名を「首尾よく」解決したことで、両当事者に圧力をかけ、すぐに合意に至ることが予想される。このように、サドル師の抗議と、アルスダニ氏率いる政府への邪魔者であり続けようとする決意に反して、あるレベルでは、イラクは今にも政府が樹立されようとしているかのように見えるかもしれない。

結局のところ、この大衆迎合主義者の聖職者は、国会を辞めたにもかかわらず、政府内やさまざまな産業、国営石油会社、さらには要衝の地方の知事にまで、多大な影響力を持ち続けているのである。サドル師の気まぐれな駆け引きの最終目標は多くの場合、解読や見極めが難しいが、最近のデモや先の辞任は、次なる政府が極めて弱体化し、自己主張することができなくなることを意味している。
アルスダニ内閣は、これまでの多くの内閣と同様、競合する政治的利害の対立に悩まされることになる 一方、議会は分裂し、どの政党も決定的な多数を占めていないため、大規模な介入、支出、国家のまだ荒廃しかけている処理能力の動員を必要とする緊急の優先事項を実現するのに苦労することになる。
逆に、サドル師による数ヶ月にわたる果てしない政治的駆け引きは、イラク政治は単に政界のエリートの椅子取りゲームに成り下がってしまったとますます確信を深めているサドル師陣営の一部にも大打撃を与えており、同時に街は幻滅と怒りで煮えたぎっている。

• ハフェド・アル・グウェル氏は、ジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院の外交政策研究所で外部シニアフェローを務める傍ら、国際的な経済コンサルタント会社の「マックスウェル・スタンプ」と地政学的リスクコンサルティング・調査会社「オックスフォード・アナリティカ」でシニアアドバイザーを務めており、ワシントンDCの「ストラテジック・アドバイザリー・ソリューションズ・インターナショナル・グループ」のメンバーで、「世界銀行グループ」理事会の元顧問である。Twitter: @HafedAlGhwell

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