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イラク新政府は危機を解消できそうもない

2022年10月25日、イラクの首都バクダッドのタハリール広場の自由記念碑の前で、ムハンマド・シア・アル・スダニ首相率いる新政権への抗議行動を展開し、イラクの国旗を振るデモ隊。(AFP)
2022年10月25日、イラクの首都バクダッドのタハリール広場の自由記念碑の前で、ムハンマド・シア・アル・スダニ首相率いる新政権への抗議行動を展開し、イラクの国旗を振るデモ隊。(AFP)
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29 Oct 2022 07:10:52 GMT9
29 Oct 2022 07:10:52 GMT9

アラブニュース

  • スダニ氏は今、汚職撲滅の公約を実現するという途方もない課題に直面している
  • スダニ氏は、イラク国内が激しく対立する陣営に分かれていた過去のような「二極化した政治を採用しない」とも宣言している。

バグダッド:イラク国会は、1年以上にわたる政治空白の後、ムハンマド・シア​​・アル・スダニ首相の政権を承認したが、戦争で荒廃した同国が安全な岸にたどり着くにはほど遠い状況だ。

スダニ氏は今、汚職撲滅の公約を実現し、不満を持つ若者に仕事の機会を提供するという途方もない課題に直面している上に、予断を許さない政敵とも格闘している状況だ。

また、同首相率いる親イラン派の国会議員に対する批判を払拭するため、イラクが激しく対立する陣営に分裂した過去のような「二極化政治を採用しない」とも宣言している。

しかし、石油資源の豊富なイラクでは、長年にわたり汚職がはびこり、十分な資金配分が行われていない。このため、アナリストは、同国の長期的な危機がすぐに終わるとは予想していない。

スダニ氏と21人の閣僚は、前回の総選挙から1年以上経った今月27日の投票で、国会議員らの信任を得た。

ステファン・ドゥジャリク国連事務総長報道官は28日、アントニオ・グテーレス国連事務総長が、この重要な一歩に歓迎の意を表明したと述べた。

イラク国会の多数派は、かつての準軍事組織ハシャド・アル・シャービ を含む親イラン派を中心とする政治連合「調整枠組み」によって占められている。

「調整枠組み」にはヌリ・アル・マリキ元首相も参加している。

アル・マリキ氏は、イラクの反政府聖職者ムクタダ・サドル師の長年のライバルで、今年に入ってから調整枠組みと激しく争っている人物だ。

メッセージ一つで何万人もの支持者を動員できる能力を持つサドル師は、すでにスダニ政権への参加を拒否している。

イラクでは2003年の米国主導の侵攻後、権力の分担制を採用しており、閣僚ポストをイラクの民族、宗派間で分け合っている。

そのため、12人の大臣が調整枠組みのシーア派、6人がスンニ派、2人がクルド人、1人がキリスト教徒で構成されている。

クルド人が担うことになっている他の2省のポストは、まだ埋まっていない。

政治アナリストのアリ・バイダル氏は、新政権は、2003年に独裁者サダム・フセイン氏が倒されて以来イラクを統治してきた「これまでの政権と同じ手法、同じ議員連合、同じ政党によって」樹立した、と説明する。

そして、それら新政権の各政党は、「国の資源と能力を自分たちの間で山分けできる戦利品と見なしている」という。

しかし、新内閣は重要な派閥であるサドル派からの支持を欠いている。

調整枠組みとサドル師との間の緊張は今年8月下旬にピークに達し、イランに支援された派閥やイラク軍との衝突により、サドル師の支持者が30人以上殺害された。

サドル師は繰り返し早期選挙を要求してきたが、調整枠組みは投票が行われる前に、政府が既に発足していることを確認するよう求めた。

スダニ氏は、表向きはサドル師の要求に応える形で、「3ヵ月以内に選挙関連法を修正し、1年以内に選挙を組織する」と約束した。

バグダッド大学の政治学者であるイフサン・アル・シャマリ氏によると、政権がサドル派に譲歩することで「相対的な安定」が保証される可能性があるという。

一方、ブリュッセルのシンクタンク、インターナショナル・クライシス・グループのラヒブ・ヒゲル氏は、「現政権の背後にいる政党は、早期に選挙を実施することに関心がない」とし、「1年(以内)というのは非現実的」だとみている。

しかし、シャマリ氏は、サドル派が「孤立」したり、「彼らの政治的将来を損なわせる計画がある」と感じたりすれば、「極端な反応」を起こす可能性があると指摘した。

スダニ氏は「市民の生活に影響を与える」改善や進展に向けて、自ら緊急に取り組むと述べている。

イラクでは2019年10月に勃発した、風土病的な汚職に対する全国的な反政府デモが記憶に新しい。28日には、南部の都市ナシリヤで数百人が集まり、新政府に反対するデモが行われている。

外交面では、スダニ氏は「イラクを他国への攻撃の拠点にしない」と繰り返し公言している。

さらに同氏は、対立した過去の陣営間の権力闘争には関与せず、その代わりに「すべての人との友好と協力」を主旨とする政策を追求するとも述べている。

前出のヒゲル氏は、スダニ氏が「外交政策に力を入れるよりも、失業や水、電気の不足といった国内の問題を優先させるだろう」とみている。

また、イラクが外国からの投資を切実に必要としていることから、スダニ氏は、頑強な親イランの支持基盤にもかかわらず、「欧米とイランの間のバランスを取ろうとするだろう」と分析した。

しかし、シャマリ氏は、最近もトルコとイラン両方の攻撃目標になるなど、地域紛争の矢面に立たされることが多いこの国では、”バランス”は十分には取れないかもしれない、と指摘した。

同氏は、イラクは「自国の主権の尊重と内政不干渉を要求する必要がある」と述べた。

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