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ハリリ元首相殺害事件の判決によりヒズボラへの責任追求の流れが強まる

西側諸国およびアラブ湾岸諸国と緊密な関係にあったハリリ元首相の殺害は、同地域を揺るがせた歴史的な大事件となった。(AFP)
西側諸国およびアラブ湾岸諸国と緊密な関係にあったハリリ元首相の殺害は、同地域を揺るがせた歴史的な大事件となった。(AFP)
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19 Aug 2020 09:08:57 GMT9
19 Aug 2020 09:08:57 GMT9

ジュマナ・アル=タミミ、ドバイ

レバノンの基準からしても難しい状況の中での今回の判決となった。わずか2週間前、レバノンは首都ベイルートが爆発によって街のほぼ半分が破壊ないしは損害を受けたばかりである。国民の怒りによって内閣は総辞職に追い込まれており、新型コロナウイルスのパンデミックによってより一層深刻化している経済および金融危機の最中でリーダー不在の状態となっている。

それでもなお、2005年2月14日にラフィク・ハリリ元首相が殺害されてから15年以上が経ち、ついに正義が勝利した。国連が後ろ盾となっている特別法廷は、レバノンで活動を展開し、イランからの支援を受けているヒズボラの構成員に対し、トラック爆破に関連する5件の事件に共謀したとして有罪判決を言い渡した。

ヒズボラの構成員である4人の被告(サリム・ジャミル・アイヤシュ 56歳、アサード・ハッサン・サブラ 43歳、フセイン・ハッサン・オナイシ 46歳、ハッサン・ハビブ・メーヒ 54歳)の公判は、2014年1月16日からレバノン特別法廷(STL)第一審裁判所で始まっていた。18日、公判を欠席していたアイヤシュ被告に対してSTLから有罪判決が言い渡され、残りの3被告には無罪判決が言い渡された。判決は今後に持ち越しとなる。

国連が後ろ盾となっている特別法廷は、レバノンで活動を展開し、イランからの支援を受けているヒズボラの構成員に対し、トラック爆破に関連する5件の事件に共謀したとして有罪判決を言い渡した。

今回の争点となっていた事件は、2004年に国連安保理決議1559が採択され、レバノンからのシリア軍の撤退、およびヒズボラの武装解除要求がなされた5カ月後に起きた。

西側諸国およびアラブ湾岸諸国と緊密な関係にあったハリリ元首相の殺害は、同地域を揺るがせた歴史的な大事件であり、疑いの目は当時レバノンを支配していたシリア、そしてヒズボラへと即座に向けられることになった。

多くのハリリ元首相の支持者らは、暗殺の動機や、ハリリ元首相の車列を攻撃した爆発物を積んでいたトラックに乗っていた人物の身元の特定といった重要な問いへの答えを提示できなかったSTLに失望するだろう。

今回の争点となっていた事件は、2004年に国連安保理決議1559が採択され、レバノンからのシリア軍の撤退、およびヒズボラの武装解除要求がなされた5カ月後に起きた。

5人目の男、ムスタファ・アミン・バドル・アル=ディンは2016年にシリアで殺害され、起訴が取り下げられていた。検察はヒズボラ軍部の司令官だったバドル・アル=ディンが、ハリリ元首相の暗殺において「計画全体を管理していた」と述べている。

「残念ながら、STLはレバノンの人々を15年間失望させ続けてきました。多くの人々が殺害されました。特別法廷にとってはさらなる殺しを止める機会が何度もありましたが、そのために必要なことを行わなかったのです」国際弁護士で法学教授のチブリ・マラットは、ベイルートからArab Newsに対してそう語った。

レバノンのラフィク・ハリリ元首相は、2005年2月14日に殺害された。

「刑事弁護士、そして多くの被害者遺族の友人として、ヒズボラであるアイヤシュ氏の即刻引き渡しを求めます」マラットはそう話す。「そうでなければ、レバノンの司法当局にはアイヤシュ氏の捜索および逮捕、そして特別法廷への引き渡しを求めます」

「次に、特別法廷の不十分さ、および同法廷が期待に応えられていないという点から、被害者遺族には今回の特別法廷での判決において、司法の深刻な欠陥について訴えを行うよう求めます」

デヴィッド・レー裁判長は、ヒズボラ指導者層およびシリア政府にはハリリ元首相および彼の政治的同胞を排除するに足る動機があった可能性がある一方、STLは2005年の攻撃に関して彼らの関与を示す証拠を発見できなかったと述べた。だがマラットは、「世界中のどこにおいても」刑事司法でそのような区別が行われることはないと主張する。

「レー氏および特別法廷は、ヒズボラ指導者層およびシリア政府が暗殺に関与していないことへの理由説明として、誤った論拠を示しています」マラットはArab Newsに対してそう述べた。

「今回の判決は、両陣営どちらに有利とも言えないでしょう」国際危機グループでイラク、シリア、レバノンにおけるプロジェクトディレクターを務めるヘイコ・ヴィメンはArab Newsに対して文面でそう述べた。

反ヒズボラ派の人々は「他の被告を有罪にするに足る十分な証拠がなかったとしても、有罪判決を受けたのは独自の判断で行動を起こすはずがないヒズボラの工作員だったという事実を指摘するでしょう」ヴィメンはそう話す。

ヒズボラの構成員、サリム・ジャミル・アイヤシュ 56歳、アサード・ハッサン・サブラ 43歳、フセイン・ハッサン・オナイシ 46歳、ハッサン・ハビブ・メーヒ 54歳

他方、「ヒズボラの支持者は、10年以上にわたって西側諸国とイスラエルの情報機関がこの件に取り組んできたにも関わらず、特別法廷はかろうじて構成員の1人を有罪にするための欠陥のある証拠をでっち上げたに過ぎず、そのことは今回の件全体がなんの根拠もなく作られたものであることを示していると主張するのではないでしょうか」

今後ついてヴィメンは「ヒズボラが3人の被告の無罪判決を公平な裁判の証拠だとみなすことはないでしょうし、8月4日に起きたベイルートの爆発に対する国際的な捜査に対し、同組織の姿勢が軟化することもないと思います」と述べた。

処罰が下されるまで我々は休みませんラフィク・ハリリ元首相の息子、サード・ハリリはそう述べた。

ラフィク・ハリリ元首相の息子であり、同氏の暗殺後に自身もレバノン首相を務めたサード・ハリリは、STLの判決を受け入れ、この判決がヒズボラに責任があることを示したと述べた。

「今、犠牲を払うべきはヒズボラです」彼はSTLの判決傍聴後にそう語った。「責任がヒズボラ上層部のネットワークにあることは明らかです。処罰が下されるまで我々は休みません」

サードは、公判によってより多くの情報が出てくることを期待していたという。「皆、実際の結果よりも遥かに大きな期待を抱いていたと思います。ですが、特別法廷は満足のいく結果をもたらしてくれたと考えています」

ハリリ首相のもう1人の息子であるバハー・ハリリは、今回の判決によって暗殺が「私の父が我々の国からシリアを撤退させるという決断を下したことを受け、自分たちの活動が脅かされた者たちによってなされた政治的活動だった」ことが確定したと述べた。

バハーは、「法廷は動機、地域での活動能力、このような活動における経験などから、事件に関わった人間たちの政治的背景を明確にしました」と述べた。

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Twitter: @jumanaaltamimi

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