
ナジア・フサリ
ベイルート:中東訪問の最期の目的地、レバノンを訪問した2日目に、アメリカのデイビッド・シェンカー国務次官補(近東問題担当)は、市民社会活動家たちと会談した。
シェンカー国務次官補同席の下に、活動家の自宅の1つで企画された昼食会に出席していたある活動家は、同国務次官が次のように言った、とアラブニュースに語った。「アメリカはフランスのイニシアチブに反対する立場を取るつもりはありません。しかし、ヒズボラに期待し、ヒズボラの戦闘部隊の存在を誤魔化し続けているならば、恐らくこれは失敗に終わるでしょう。物事はこのように上手く進みません。私たちはヒズボラをまっとうな政治組織ではなく、テロ組織だと確信しています。政治組織ならきっと間違いなく、民兵など所有していないでしょう」
この活動家によると、シェンカー国務次官補は次のように言ったという。「アメリカ側が考え出したヒズボラ支持者への制裁は、まだ進行した段階に達していません」
匿名扱いを望んだこの活動家は、「シェンカー国務次官補が、アメリカ大統領選挙の結果がどうなるのか、ということに明け暮れている」と語った。活動家によると、シェンカー国務次官補は次のように言ったという。「フランス人は、アメリカ人の視点を考慮に入れずに、イニシアチブを担っています。だから、彼らにやらせてあげます。トランプ政権が続投するかどうかが決まり次第、アメリカの視点が明確になるでしょう。こうした結果が出る前に、フランス人にはあと2カ月あるのですから」
シェンカー国務次官補がフランスのイニシアチブと要求に関して、活動家たちの意見に耳を傾けた、と活動家は語った。フランスの要求とは、早期の議会選挙実施や、予め設定された期日の一切遅延なき遵守だったという。
アラブニュースの情報筋によると、シェンカー国務次官補は学術関係者、レバノンの銀行出身のエコノミスト、レバノンの世界銀行代表者たち、辞任した議員とも会談したという。また、同次官補はレバノン軍の司令官、ジョゼフ・アウン将軍、国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)関係者、ヤン・クビス国連レバノン特別調整官とも会談した。さらにまた、ベイルートの爆発で被災した人々に、現在支援を行っている米国国際開発庁(USAIDS)の施設も、同次官補は訪れていた。
天然資源ガバナンス研究所(NRGI)の中東・北アフリカ地域責任者、ラウリー・ハイタヤン氏は、シェンカー国務次官補と市民社会活動家の代表者たちの昼食会に参加しており、この会の目的は、「お互いのことを知るようになり、次に起きることや、2019年10月に始まったレバノンの暴動から派生したこの活動グループの取り組みに関して、私たちの見解を伝えること」だと語った。
「この会の間、私たちは議会選挙の準備が整っていることを強く主張しました」と、ハイタヤン氏が語った。
シェンカー国務次官補はアンナハール紙に対して、次のように語った。「ヒズボラは改革に興味はないが、汚職を利用しています」。市民社会活動家たちとの昼食会に出た目的は、「彼らの改革ビジョン」を確認し、「改革、透明性、汚職との闘いに、レバノン政府を深く関与させること」だ。と同次官補が語った。
「アメリカは依然として、レバノンの主要な支援国のままであり、現在私たちはNGOや国連世界食糧計画を通じて、レバノンのための大規模な支援策に取り組んでいます」と、同次官補が付け加えた。
レバノンへの訪問中、シェンカー国務次官補は、「1つの政権がレバノンで樹立されようとしており、これは国家の内政に関する問題だ」と考えたので、レバノン政府関係者の誰とも会うことを避けていた。しかし、同次官補は「次期政権が、前の政権やそれ以前の政権のようになるべきではないし、その代わりに改革を実行し、腐敗と闘い、説明責任と公平性に全力を注ぐことに集中すべきだ」と考えていた。
新たに任命されたレバノンのムスタファ・アディブ首相は、9月2日に実施した議会協議の結果の概要を、レバノンのミシェル・アウン大統領に伝えた。この議会協議の後、アディブ首相は「直ちに改革を実行し始めるために、首尾一貫した改革チームと、専門家たちを集めた政府を発足させよう」と務めていると語った。
アディブ首相が、自分は大臣14人体制の政府をつくりたいが、アウン大統領は24人体制を強く求めていると明かした。
フランス大使館は、次期政府に対する改革要求プログラムの草案を詳しく述べた。この草案はマクロン大統領が9月1日、フランス大使公邸で会談したレバノンの各党代表者に伝えたものだった。マクロン大統領はこの草案を、次期内閣のロードマップだと考えていた。
この改革要求プログラム草案は、「新型コロナウイルスとの闘いや、人道的状況のために、ベイルートの爆発の影響への対処、ベイルートの再建、迅速で透明性のある有効な方法で、国際社会が提供した支援を入手し易くすることが、優先事項となっている」
この改革に関して、改革要求プログラム草案は「国際通貨基金(IMF)との速やかな交渉再開と、資本規制やバンケ・デュ・リバン(BDL)収支決算書の会計監査に関連する法律制定を始め、IMFが要求する事前防止策の迅速な承認」を要求していた。
このフランスのプログラム草案はまた、1カ月以内に電力部門の緊急改革を実施し、この部門の関係者を指名し、ガス発電所に関する入札公告を開始し、現在まとめられている(自由愛国運動が今でも固執している)セラータプロジェクトを断念することも要求していた。
この草案はまた、「有効性に基づいた透明性のある基準と、司法の独立に関連する法律提案の議会による承認に従って、財政、司法、各部門担当者の指名」にも及んでいた。またこれは、「最長1年以内に議会選挙を実施することに加えて、国内の汚職防止委員会の委員指名、その職務を遂行する委員会の支援、2020年末の前に、緊急の税関改革の実施、均質予算の策定と採択」も含まれていた。