ナジア・フッサリ
ベイルート:貧弱なボートに乗りレバノンからキプロスに逃れる若者が増えるなか、東地中海の難民危機が深刻さを増している。
8月6日のキプロス警察発表によると、過去2日間に123名のレバノン・シリア難民を乗せたボート4隻が、キプロスの東部・南部の海岸沖合に現れたという。
キプロス入国を許可された者もいるが、少なくとも20名の難民がエンジンの故障したボートに乗り、キプロス南東部の半島沖合で漂流を続けている。女性3名と子供9名が先にボートから降ろされ、念のためキプロスの病院に移送された。
5日には30名以上が乗ったボートが南海岸の沖合で警察に拿捕され、キプロス当局がチャーターした別な船に乗せられてレバノンまで強制送還された。キプロスとレバノン両国は、難民船のキプロス上陸を認めないことで合意している。
5日にはキプロス東岸の荒磯にボートがたどり着き、乗っていたレバノン難民50名が難民収容施設に連行された。ボート到着地点はキプロス本土と国家承認を受けていない北キプロス・トルコ共和国を隔てる緩衝地帯にあり、国連が管理している。
国連平和維持軍(PKF)は、男性35名・女性5名・子供11名の身柄をキプロス政府の管理下に移した。6日に裁判所は男性4名がボートの乗組員である疑いがあるとして、拘留を続けるよう命じた。
6日午前には、首都ニコシアから西に15㎞離れた北キプロスとの緩衝地帯付近で、さらに20名のシリア難民が逮捕され難民収容施設に移送された。
キプロスのニコス・ヌーリス内相は、状況を判断するため7日に緊急会議を開くと述べた。キプロスの難民収容施設は、新型コロナ感染拡大への懸念により収容定員を減らしており、定員を超過しつつあるとヌーリス内相は述べた。
レバノンには、シリア難民100万人とパレスチナ難民25万人が暮らしている。密入国あっせん業者がここ数年間増加しており、経済の崩壊に失望した若いレバノン人が主なターゲットとなっている。
昨年の9月・10月・11月は海が穏やかだったので、ボートでレバノンを脱出する人々が急増した、とレバノン・プロダイバー組合のムハンマド・アルサージ組合長がアラブニュースに語った。
「レバノンの密入国業者は海に詳しい船乗りです。彼らは中古のボートを購入して、改修し、密入国に利用しています。船が海に沈んでも大きな損害は出ませんが、難民の方は業者に大金を払っていたのでしょう」とアルサージ組合長は語った。
「キプロスに最も近いのは、レバノン北部のトリポリからアクカルに伸びる海岸線で、わずか90 kmの距離しかなく、国家が機能不全状態なので監視がなされていません」