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レバノンとイラクの選択:統治国家か準軍事的無政府状態か

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14 Feb 2021 11:02:19 GMT9
バリア・アラマディン
14 Feb 2021 11:02:19 GMT9

国家の崩壊は、こうして起こる。イラクとレバノンは、否応なしにイエメンとシリアと同じ道を辿ろうとしている。国家としての地位を保つために必要な基盤は崩壊し始めており、変化をもたらすだけの権力がある者たちは行動ができないか、する気がない。両国が直面する壊滅的な状況が提示するのは、明らかでシンプルな選択肢のみ、つまり、民主主義によって統治される国家となるか、準軍事的無政府状態となるかということだ。

知識人、活動家のロックマン・スリム氏の暗殺は、悲劇的に完璧なタイミングで準軍事的無政府状態とはどのようなものかを我々に思い出させた。レバノンとイラクの国民は、毎日、朝起きると銃弾を撃ち込まれた遺体が道端に転がっていることが何を意味するのか、嫌というほど知っている。「武器は国を助けはしない。私を助けてはくれなかった。武器は私の息子を奪っていった」と、ロックマン氏の母親は彼の葬儀で主張した。

サード・ハリリ前首相も、この意味を理解している。ちょうど16年前にハズボラとシリアの工作員によって仕掛けられた巨大な爆弾によって彼自身の父親が暗殺されているからだ。

次期首相として指名されてから4ヶ月が経った先週、ハリリ前首相は新政府樹立に向けた動きに進展はないと語った。効果的なテクノクラート政権だけがレバノンを救済に導き得る唯一の道だとハリリ氏は認識しているが、自党に有利な条件でない限り政権樹立を目指す意図のない政党と無益な交渉を続けることにすでにあまりに多くの時間を費やしてきている。

政権樹立を妨げている強引な政党の提携―ハッサン・ナスララ師、ミシェル・アウン大統領、ゲブラン・バジル氏による―は、必要性と毒気に満ちた互いへの嫌悪に基づいている。アウン大統領とバジル氏は、自由愛国運動キリスト教の支援ベースが、イランの代理勢力と化し自国を崩壊と紛争に陥れているヒズボラに縛られることを嫌い、消滅するのを目撃したが、それにもかかわらず、バジル氏に対する米国の制裁は彼をさらにナスララ師の懐に引き込んだ。広く忌み嫌われているバジル氏はシニカルな日和見主義者で、大統領選に勝つためには自らの魂を悪魔にでも売るだろう(まだそうしていなければだが)。ヒズボラは彼を信用できないことをわかっているが、国への抑圧を維持するためにバジル氏を必要としている。この三人の指導者たちには、共にレバノンを奈落の底に突き落とした責任がある。

イランがレバノンをその軌道に引き込んでいることを示すもう一つの事実として、レバノンがイラクから50万トンの原油を受け取るという取り決めは、制裁に違反して原油を密輸しようとするイランのあからさまな策略だと専門家は考えている。レバノンのレイモンド・ガジャル暫定エネルギー大臣の言葉が、裏事情を暴露してしまっている。「イラクの重油はレバノンのニーズには合わないが、イラクのある企業では交換の手配が可能だ」。イラクが近隣のどの国と原油を「交換」するのか想像するのは難しくない。ヒズボラがレバノンの港を支配していることも、大量の原油がイランから輸入されるためにはちょうどいい。

ヒズボラとイランはレバノンとイラクの庇護者を気取っているが、実際には目前に迫る両国の破滅を確かにする存在だ。

バリア・アラマディン

また、イラクでは多くの活動家やジャーナリストがイランの支援を受けた民兵によって殺害されている。イラク首相の反テロリズム顧問を務めていたヒシャム・ハシミ氏は、代理軍事組織に関する調査を行っていたためにヒズボラによって暗殺されたというさらなる証拠が浮上してきている。ヒズボラは、その活動を抑制しようとするムスタファ・カディミ首相の努力をあっさりと打ち負かし、国のほとんどの地域において事実上の権力を握るのは自分達だと誇示してみせた。特にイラクの東側と西側の国境付近の県ではその傾向が強く、ヒズボラは合法、違法の品をイランから輸入し多大なる利益を上げている。

イラクとシリアの国境付近にイランが建てた巨大な要塞は、頻繁にイスラエルのシリアに対する激しい空爆の対象となっている。これらの要塞は国境をコントロールし、シリアの東側を支配する前進基地として機能しており、特により広い地域を支配するための脅威となるミサイルや武器弾薬の輸送に使われる。イランの代理組織のヘゲモニーを確立するために、何千何百人ものシリア人の大量殺戮が行われた。シリアとして成り立つ存在はすでになく、イランやトルコ、その他の黒幕に忠誠を誓う代理組織によって支配された機能不全の小国の単なる寄せ集めがあるのみだ。

イランの支援を受けるもう一つの組織フーシ派は、先週、サウジアラビアの民間人が利用するアブハー国際空港に攻撃を仕掛け、旅客機を炎上させた。明らかに死亡者が出ることを目的としていた。湾岸アラブ諸国の民間施設を狙ったフーシ派の攻撃は、地雷や爆発物を搭載したボートに加え、イランに供給されたドローンやミサイルに使用するなど、巧妙さを増している。

ヒズボラとイラクの準軍事組織はそれぞれのレバノンとイラクの基盤を支配することを目指しているが、その目標が達成された時、それは我々の知る両国の終わりを意味する。イスラエルは決して、レバノン北部の国境沿いのヒズボラに独占された地域の統合を許さないだろう。

イスラエル軍はよく現状を「戦争間の戦争」と表現する。イラン拠点に対するイスラエルの攻撃や、イラン国内でのサボタージュ攻撃や暗殺、領空侵犯や小さな戦闘などは、地域全体での戦争を先延ばしにするためのイスラエルの努力だ。とはいえ、イスラエル軍司令部はより大規模な戦争は避けられないと踏んでいる。レバノンとイラクの大規模な体制崩壊、または準軍事組織による権力の掌握は、その時期を早めるだけだろう。

シーア派のアラブ人コミュニティーでは反イラン感情と怒りが沸々と高まり続けているが、窮状に苦しむ市民達の多くは単純に安全と生活の保障を与えてくれるヒズボラとその同盟国に感謝の念を抱いている。彼らはヒズボラを愛し、ヒズボラも自分達を愛していると信じ込んでいる。だが、イランはシーア派イスラム教徒の庇護者ではなく、レバノン、イラク、パレスチナの庇護者でもない。

「イスラム抵抗運動」は何度、ガザの人々が木っ端みじんに爆破される様子を何もせずに黙って見ていただろう。ヒズボラはイスラエルへの抵抗からは程遠く、イスラエル軍の空爆や動向に対して反応することを恐れているように見える。であれば、この「イスラム抵抗運動」の目的とは何なのだろう?

イラクにとって、支配下にあるこれらのアラブ諸国は交渉用の手札であり、軍事的な防波堤だ。アヤトラ達は自分の利益になると見れば、躊躇いなくこれらの国々を売り渡すか好きなだけ破壊させるだろう。

ヒズボラとイランはレバノンとイラクの庇護者を気取っているが、実際には目前に迫る両国の破滅を確かにする存在なのだ。

  • バリア・アラマディンは受賞歴を持つジャーナリスト兼報道キャスターで、中東及び英国で活動している。「メディア・サービス・シンジケート」の編集者として多数の国家の指導者をインタビューしてきた。
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