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固唾をのんでアメリカの選挙結果を待つイランの人々

1面にドナルド・トランプ米大統領の写真が掲載された新聞を眺めるイラン人。アメリカの大統領選挙の結果に対するイラン国民の関心は国内で急上昇している。(AFP)
1面にドナルド・トランプ米大統領の写真が掲載された新聞を眺めるイラン人。アメリカの大統領選挙の結果に対するイラン国民の関心は国内で急上昇している。(AFP)
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30 Oct 2020 05:10:34 GMT9
30 Oct 2020 05:10:34 GMT9
  • イラン国民の間で米国の大統領選挙への関心が急激に高まっているにもかかわらず、ハメネイ師自身は一切選挙についてコメントしていない

ドバイ:イランの高官は、来たる米国の大統領選挙には、特に関心は無いと述べているが、イランの他のほとんどの人々は固唾をのんで、その行方を見守っている。

ホワイトハウスを目指すレースは、ドナルド・トランプ大統領の「最大限の圧力」キャンペーンが更に4年間継続される結果を招く可能性もあれば、あるいは、米国が2015年のイランと世界の列強との核合意の枠組みに復帰する可能性を高めるジョー・バイデンが新大統領に選ばれる可能性もある。

81歳の最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師が率いるイラン・イスラム共和国の上位高官レベルでは、反米主義は1979年のイスラム革命以来常に深く根付いており、両党の大統領は等しく嫌悪感を持って捉えられていると思われる。

半官半民のファールス通信社によると、「アメリカはイラン国民に対して根深い敵意を持っており、トランプが再選されようが、バイデンが初めて選出されようが、イラン国民を攻撃するという点で、米国の主要政策に影響はないだろう」と議会議長のモハンマド・バーガー・カリバフは9月に述べている。

しかし、注目すべきことに、巷での関心がうなぎ登りになっても、ハメネイ師自身は一切米国の大統領選挙についてコメントしていない。国営ラジオは、イランが英放送局のジャーナリストを非難のターゲットにし続けているにもかかわらず、米国大統領選挙討論会のBBCペルシア語サービスの同時放送をライブで中継放送している。

米国の大統領選挙に高い関心を持っているイランの人々の中には、イランの治安機関も含まれていると言われている。2016年のアメリカ大統領選挙でのロシアの干渉のように、混乱を巻き起こすために、大統領選挙に対して、明らかな選挙干渉を試みている可能性も語られているが、 テヘランはそのような関与を否定している。

イラン国民は確かに関心を示している。国営の世論調査センターISPAは今月、55%の人々が、選挙結果がイランに「大きな影響がある」と信じていると述べた。調査に回答した半数以上の人々がトランプの勝利を予想し、5分の1がバイデンと答えた。ISPAは、電話で1,600人以上を調査したと述べたが、その許容誤差は伝わっていない。

トランプの再選は、ハメネイ師や他の高官に対する制裁を含む、彼の圧力キャンペーンが延長されることを意味する。米国が課した制裁のいくつかは象徴的なものに過ぎない—ハメネイ師は一度だけしかアメリカを訪れたことが無いし、米国の銀行口座を持たない—しかし他の項目はイラン経済を荒廃させ、現地通貨の価値を急落させた。ヘッジとして、イラン人は外貨、不動産、貴金属、株式市場に資金を注ぎ込み、株式市場は8月に過去最高値を更新している。

選挙遊説中のトランプは、今年1月にイラン革命防衛隊の司令官にドローン攻撃を仕掛け、殺害した決断を下したことを語っているが、その報復としてテヘランは弾道ミサイル攻撃を決行し、数十人のアメリカ軍兵士を負傷させている。

トランプ氏は、イラクで米軍兵士に重傷を負わせた簡易爆発物による攻撃や、シリアのバッシャール・アサド大統領を支援したことで勇名をはせたガセム・ソレイマニ司令官を「世界一のテロリスト」と称賛している。多くのイラン人は、イスラム国との戦いや1980年代のイラン・イラク戦争での活躍からソレイマニ司令官を崇拝し、数百万人が彼の葬列に加わるために通りに殺到した。

「我々が勝利した暁には、イラン大統領から直接電話があるであろう。取引しようと。イランの経済は崩壊しかけている」とトランプ大統領は月曜日にペンシルベニア州アレンタウンでの選挙集会で語った。「彼らが電話をかけてくれば、彼らの経済の回復を望むが、核兵器の保有は許されない」

バイデンは、テヘランが経済制裁の解除と引き換えにウラン濃縮を制限することに合意した核合意に戻る可能性を残している。他の署名国(英国、フランス、ドイツ、ロシア、中国)は、核合意にコミットし続けており、ホワイトハウスがイランに対する武器輸出の禁止を維持しようとしているにもかかわらず、核合意の一環として国連の武器禁輸の期限が切れるのを認めている。

トランプが2018年に核合意から一方的に脱退し、イラン経済にとって壊滅的な制裁を復活後、イランは、濃縮に関する協定の制限を表立って放棄し始めている。国際原子力機関(IAEA)による9月の報告によると、現在、少なくとも2.32トンの低濃縮ウランを保有している。専門家によると、通常1.15トンの低濃縮ウランで、核兵器を1つ製造するために再濃縮するのに十分な量であると語っている。

イランは、核開発計画は平和的なものであり、IAEAの査察官が同国の原子力サイトを査察することも許していると主張している。しかし専門家は、イランが核兵器を1つ製造することを選択した場合に必要な「ブレイクアウト期間」は、協定の下での1年からわずか3か月に短縮されたと述べている。

イランは過去にも、核不拡散条約を放棄したり、国際的な査察官を追放したりすると脅迫してきた経緯がある。最近、今年半ばにサボタージュ攻撃でダメージを受けた後処理として、地下の核サイトの建設が開始され、新しい遠心分離機組立工場が建設されている可能性がある。

「『アメリカ・ファースト』はアメリカを孤立させた」とバイデンは今月ABCテレビが企画・放映したテレビ版タウンホール・ミーティングで、長年のトランプ大統領のスローガンを皮肉交じりに取り上げた。「トランプはイランが核爆弾を作るのに十分な核物質を持つ状態に追い込んでいる」

しかし、核合意への復帰が何を意味するのかも疑問が残る。バイデンのキャンペーンウェブサイトでは、バイデンはイランへの対応として、「現実的な外交努力と、核合意を強化、拡大するために、同盟国の支援を利用する」と述べている。核合意に対する批判の1つは、イランの弾道ミサイル計画とイラク、レバノン、シリアでの存在力に対する米国、イスラエル、湾岸アラブ同盟国の懸念にもかかわらず、核計画に対する焦点が狭いことである。

イランは、同国の弾道ミサイルプログラムは潜在的な攻撃を阻止するために不可欠であり、交渉する余地は無いと主張している。また、イスラム国との戦いにおいて、かなりの血と財源を費やしたシリアとイラクでの軍事活動を停止する可能性も低い。

しかし、特にコロナウイルスのパンデミックの中でイスラム共和制の存続を確保するには、イランが最初に米国との交渉に同意したのと同じ柔軟性が要求されるであろう。 イランは6月に大統領選挙を行うが、ワシントンとの再関与の決定は最高指導者が下さなければならないと思われる。

「ハメネイ師の革命的な道は、実際にアメリカとのつながりを要求する。つまり、米国との安定した、安全で、綿密に計画された関係を模索することができれば、彼は政権とその革命的な内容とその方向性の両方の存続を保証できると信じている」と、Washington Institute for Near East Policyのアナリストであり、シーア派教徒の巡礼地クムで研さんを積んだシーア派の神学者、Mehdi Khalajiは記している。

「したがって、テヘランが抱く目標はスキャンダラスでパラドックスでもある。反米を維持するために、アメリカと取引をすることである」

AP

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