


カテルニャ・カダバシー
ドバイ:最近のソーシャルメディアは、勉強台でぐっすり眠る子供から、机や椅子が簡易なブランコになる家具で遊ぶ子供まで、さまざまな形で遠隔学習に取り組む子供たちの画像や動画であふれている。
パンデミックで複雑になった社会生活が既に何ヶ月も続く中、大人でさえ都市封鎖や安全対策の徹底で精神的な緊張を感じている。
「ニューノーマル」が長引くにつれて、多くの人が忍耐と気力の維持にも限度があると不満を募らせている。
特別な支援が必要な子供たちにとって、その影響ははるかに顕著となっている。ガザに住み、息子兄弟の世話をするモハメッド・ダウードはアラブニュースに、「彼らは、時には電気や水の供給にも事欠く中で、何ヶ月も自宅に閉じこもる生活に慣れていないため、心理的に影響を受けている」と語る。二人とも脳性麻痺がある。
ダウードは、屋内で何週間も過ごすことを強いられたことで、いつもは大人しい二人でさえ怒りっぽくなっていると語る。二人の変化に、「彼らと話していて、あるいは兄弟で叫びあっているのを見て気が付きました」とも述べている。
特別な支援が必要な人々は、規則的な日常生活に深く執着していることがよくある。それが封鎖措置によって大きく様変わりを余儀なくされている。
「子供たちの多くは、慣れ親しんだ環境でこそ元気に生活してきたのだと思います。また、子供たちはそれぞれに自分の1日のスケジュール、決められた生活のリズムを持っています」と、ドバイに拠点を置く特別教育ニーズと教育法の専門家であるアルバ・クアドロスは述べる。「都市封鎖によって、こうした彼等自身の日々のスケジュール、リズムが完全に崩壊しています」
コロナウイルスの蔓延を抑えるための公共スペースや学校の閉鎖、社会的機能の制限も、仲間との交流に影響を与えている。
ドバイのスニータ・ラマクリシュナンは、アラブニュースに、「影響が大きかったのは、友人に会えないことでした」と、息子のシッダールスに対する封鎖の影響を説明する。
「息子はこれまで、日常的な食品を買うために近くの店に行き、そして一人で特別支援未来開発センターに通っていましたが、閉鎖されています」
エジプトに住むジーナ・ラスミは、14歳の息子マークのために、封鎖された生活の単調さを打破するために、あらゆることを試みたと語る。
「とても大変でした。家に座っていると彼は怒り出すので、車に乗せて1、2時間ドライブして周りました。少なくとも家から出かけることで満足してくれました」とラスミは述べる。
多くの政府が学習課程に生じたギャップを埋めるために遠隔学習を採用しているが、レバノンの一部の特別支援教育の子供たちは対象から抜け落ちている。
数字が語る現状
68.9% – パレスチナ農村地域における、15歳以上の障害のある男性の非識字率。
170万人 – 2014年にモロッコで報告された障害者の人数。
677,492 – 2013年にイラクで報告された障害者の人数。
4x – オマーンで何らかの形式の教育を成就した障害のない人とある人の割合の違い。
出典: WHO
レバノンのRobouana Social Charitable Associationの管理責任者であるカマル・ナセルは、「親が子供を助けることができず、また電気やインターネット回線も頻繁に途絶するため、多くの子供たちがオンライン教育の恩恵を受けていません」と、述べている。
ナセルは、彼らの子供たちを支援するために設計されたテクノロジーや特別カリキュラムに慣れていない親もいれば、家庭用コンピューターを買う余裕がない親もいると付け加えて述べた。
さらに、すべての特別支援者が遠隔教育に同じように反応するわけではなく、まだ多くが対面式のセッションを好むという実情もある。
クアドロスは、彼女自身のイニシアチブであるDetermined and Dramaticを通じて、ドバイで特別支援を必要とする子供たちと協力して、パンデミックが日常生活に与える影響についての仮想演劇を制作している。
「対面で指示した方がはるかによく反応する俳優が何人かいます」と彼女は述べる。「彼らが自分たちのセリフを覚えているか確認しなければなりませんでした。しかも、そもそも教える段になると、やはりロックダウンが解除された後にしか出来ませんでした」
それに加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界経済にもたらした負担は、家計にさらなる経済的不安をもたらしている。
パンデミックによる経済的低迷により、5億人が貧困に追い込まれると予想されている。
推定4億人の雇用がすでに失われており、国際労働機関(ILO)は4億3000万社以上の中小企業が行き詰りの危機にさらされていると推定する。
中東全域で、多くの家庭が貧困に追いやられている。「最近仕事を失ったばかりの母親がいます。彼女は中流階級の家族の出身ですが、それでも自宅にWi-Fi環境が無いため、彼女の息子とオンラインでリハーサルするのは本当に大変でした」と、クアドロスは述べる。
最低限の必需品を確保することさえ、多くの家庭で苦労するようになっている。「物価が2倍になりました。ビタミンや新鮮な果物を買うのはやめました」とダウードは述べる。
「食料品をたくさん買いたいのですが、公共交通機関が止まっているし、お金も不足しています。滞納家賃も8ヶ月分になります」
政府やガザの慈善団体の何らかの支援を期待したが、その期待はすぐに打ち砕かれた。「誰も我々のことに関心を払ってくれません」とダウードは述べる。
レバノンの家族も同様の困難に直面している。保護下にある子供たちに軽食と1日3回の食事を提供することで、「(特別支援)協会では、以前は生活にかかる負担の一部を負担していました」と、ナセルは語る。
しかし、危機前にでさえ様々な費用、給与、暖房ヒーターの燃料費を賄うのにギリギリだった政府の援助金は、2019年以来支払われていないと、ナセルは付け加えて述べた。
中東政府が都市封鎖措置を緩和し始めて以来、人々はニューノーマルと呼ばれる、パンデミック下の新しい生活様式に適応することを余儀なくされている。現在、親は子供たちに安全対策を説明するという課題にも直面している。
ラスミの息子、マークが生徒として通っているエジプトのHope Academy では、教師と保護者が子供たちを怖がらせることなく安全教育をすることに最善を尽くしている。
「我々は子供たちを怖がらせて、生きていることが大変なような想いをさせるべきではありません。『今起こっていることは人生の一フェーズの出来事に過ぎず、いずれ過ぎ去るが、その間、病気にならないように用心して、自分を守る必要がある』と彼らに伝えるべきです」と、ラスミは述べる。
両親とスタッフは子供たちに定期的に手を洗い、フェイスマスクを着用し、社会的距離の規則に従うように教えている。
「多くの子供たちは理解して(安全対策を)守ることが出来ますが、守ることが難しい子供たちは、私たちの方で手を洗うのを手伝ったり、その他の守るべき事柄にも配慮したりするようにしています」とラスミは述べる。
Robouana Social Charitable Associationのナセルによれば、他の学校では、生徒やその家族の状況をチェックするために、家庭訪問を始めているとのことだ。
「また、実演やゲームを通じて、更にコロナウイルスやその症状、予防方法について学ぶ、1日イベントを開催しました」とナセルは付け加えて述べた。
シッダースの母親であるラマクリシュナンなど、一部の親は、この隔離期間を利用して、音声メッセージングやオンラインショッピングアプリの使い方を子供たちに教えている。
「彼は、アプリの使い方を学ぶことで、友人、祖父母、その他の家族と連絡を取るためのタイムスケジュールを作成しています。この訓練は、話している間の『発話順序交代』について学ぶ助けとなりました」とラマクリシュナンは述べる。
パンデミックは多くの家庭に甚大な負担をかけているが、クアドロスは、そうした中でも、特別な支援を必要とする子供たちに、光明、希望の兆しもあると見ている。それはこれまで以上に両親と共に過ごす時間が増えていることである。
「子供たちはいつも周りに両親がいて、それにいつも関心を持ってもらえる環境にいます」と彼女は述べる。「家族の時間がたくさんあったからこそ、ここまで何とか対処して来れたように感じます」