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アウン大統領支持者たちが行動開始するも、反政府デモ隊の納得は得られず

レバノンのミシェル・アウン大統領の支持者が、11月31日にレバノン西部バーブダ市でのデモ参加中に大統領のポスターを掲げる様子。(ロイター通信)
レバノンのミシェル・アウン大統領の支持者が、11月31日にレバノン西部バーブダ市でのデモ参加中に大統領のポスターを掲げる様子。(ロイター通信)
04 Nov 2019 08:11:25 GMT9
  • 反政府グループと政権支持グループの両者が街頭に繰り出す

ナジア・フッサリ

ベイルート:レバノンの反政府グループは11月3日にデモを再開し、政治体制の全面的刷新を要求したが、同時にミシェル・アウン大統領を支援するデモも発生した。反政府と政権支持という2つの対立するグループがそれぞれ、政治信条にふさわしい別々な広場に集結した。

ミシェル・アウン大統領の所属政党「自由愛国運動(FPM)」が膨大な人数を動員した。自由国民運動の支持者や党員たちがバスに乗って、大統領官邸近くの場所に続々と集まった。この集会で自由愛国運動のゲブラン・バシル党首が、大規模反政府デモが始まってから初めて演説し、汚職に関わっていると自分を非難した人々に反論した。

別な広場にはベイルート、トリポリ、クファラーマン、ティール、ザハレなど各地域で18日間続く反政府抗議活動の参加者が集結した。人々は自然発生的に反政府デモが行われている広場の方に集結し、自らを抗議活動と腐敗撲滅運動の味方と位置づけようとしているアウン大統領の辞任を求めた。

アラブニュースの取材に応じた活動家の1人によると、アウン大統領を非難する理由は「自由愛国運動の支持者には喜んで大統領官邸から直接語りかけるが、我々一般国民に語りかけようという姿勢が全く見られなかった。要するに、就任以来国父を自称してきたが、それが嘘だったという証拠だ」からという。

2つの広場では全く逆の主張が繰り広げられていた。アウン大統領支持派の集会は、1989年にバーブダ宮殿(現大統領公邸)暫定政府のトップを務めていた時以来の、長年の支持者であふれかえり、子や孫まで駆り出されていた。

このため、進歩社会党(PSP)のワリード・ジュンブラート党首がツイッターでコメントを発表した。「とある広場で、中身のないポピュリストの話が30年ぶりに再開した」

ゼンノという活動家は、ツイッターでこう述べた。「今日はマーターズ・スクエアに行きたくなかったが、ゲブラン・バシル党首の演説を聞いてから、家族を連れて広場に行こうと決意した。レバノン国民の力が自由愛国運動より強いことを示すためだ」

エリアス・サワヤという活動家は、こうツイートした。「1989年、3人の子供を連れバーブダの大統領官邸に行った。子供たちはレバノンを出ていってしまった。今日私はマーターズ・スクエアに行く。ひょっとしたら、子供たちがレバノンに戻ってくるかもしれない」 このツイートを読むと、マーターズ・スクエアが若者の心情・痛み・要求を象徴する広場だということが分かる。

大統領官邸に通じる道は午前中、執行部の呼びかけに応じた自由愛国運動支持者であふれかえっていた。彼らはレバノン国旗、自由愛国運動の党旗、アウン大統領とバジル党首の写真を掲げた。「アウン大統領とナスララ師が率いる国家は絶対に屈しない」というスローガンが党旗の1つに書かれていた。

支持者は「大統領は辞めない、政権は倒れない」、「バシル党首は最高」などのスローガンを唱えた。一部の支持者は、アウン大統領を「サイディナ」(私たちの指導者)と呼んだ。これは、レバノンでマロン典礼カトリック教会の総大司教に与えられる称号だ。スローガンは、抗議活動への反論に聞こえた。自由愛国運動執行部は、集会が「別な場所にいる抗議活動に対抗する意図ではない」と、主張したが。

アウン大統領は街頭ビジョンの画面に登場し、自由愛国運動の旗を掲げ、30年前に使用したキャッチフレーズ「偉大なレバノン国民よ」を使って支持者たちに呼びかけた。

こう述べた「広場はたくさんあります。権利を失い、自国への信頼を亡くした貧しい人々が反乱を起こしたのです。この問題を解決するには、自国への信頼を取り戻すしかありません」

アウン大統領はこう付け加えました。「広場はたくさんありますが、別な広場にいる人々と対立すべきではありません。国民全員が一致団結しましょう。腐敗は何十年も前から根付いているので、撲滅は容易にいきません」

アウン大統領は10月31日に発表済みの3つの重要政策を繰り返した。腐敗撲滅・経済活性化・国民国家の設立だ。「妨害者が多いと、実現が困難になります」と大統領は述べた。

バシル党首は歓迎の声を浴びながら政権支持デモ隊の中に入り、こう述べた「党員に対し、この場に行くけど、国民が先に待っているぞとあらかじめ警告しておきました。我々は皆さん同様、不当行為に反対して立ち上がったのです」

バシル党首は抗議デモを「不正行為」と評し、こう述べた。「腐敗している人々も清廉潔白な人々も一緒くたに腐敗していると責めるなら、誰の責任も追及できなくなります。そして全員が腐敗しているわけではありません。腐敗した人々というのは、国家と国民からお金を奪い豪邸を建てた人たちです」

「これから困難な日々が続きます」とバシル党首は述べた。「我々のような党上層部に、裏切り者はほとんどいません。大きな危機が生じると、2つのことが発生します。恐怖、これは理解できますが、裏切り、これに関しては理解不能で正当化できません」

政府支持デモに参加したイリヤース・ブサアブ国防相は、声明を出しこう確約した「誰も我々政府を『問答無用で排除』することはできませんし、政府側もいかなる人物であれ『問答無用で排除』することはありません。政府を『問答無用で排除』する人は、誰であれ負け犬です」

この声明は、スンニ派のサアド・ハリリ首相がバシル党首を今後政府の一員に加えることを拒否しているため、次期首相を誰にするかで論争が続いている点を踏まえたものだ。シーア派のヒズボラとキリスト教マロン派のアウン大統領側は、何らかの形でバシル党首が政権に入るべきだと主張している。

官邸近くで大統領支持のデモが開かれ、自由愛国運動の支持者が反政府デモ隊には接近禁止の場所に入場を許可されたことが契機となり、宗派や党派を超え何千人ものレバノン国民が反政府デモに参加するに至ったようだ。

「バシル党首は自分が潔白だと言い、ヒズボラのナスララ師は自分の組織が腐敗していないと言い、ナビー・ベリ議長の支持者は彼が腐敗していないと言ってます」とベイルートで子供たちを連れてレバノン国旗を掲げていた女性が語った。「そうすると腐敗しているのは誰なんでしょう?貧しく飢えている人々が腐敗しているのですか?」

「政権が倒れた後には、公正な法律に基づき早期に議会選挙を行うため暫定政府を発足させることが絶対必要です」とリアド・アル・ソル広場での抗議デモに参加していた通信省の職員が語った。「そうでなければ意味がなく、問題の先延ばしにしかなりません」

「抗議デモ参加者の大半は若者で、若者の要求を聞き入れるべきです」と、ある元官僚は述べた。「若者たちの要求は、雇用機会の創出、住宅ローンの付与、選挙法を改正し宗派による割り当てを廃止することです。政治家からの口利きがないと就職先のない大学卒業者が5万人以上います」

マーターズ・スクエアにいた若者はこう述べた。「大統領官邸でアウン大統領が言ったのと同じことを、30年前に両親が聞きましたが、うまくいきませんでした。信用をなくしているから国民は政府による改革を求めていないという事実に、政府側は気付いていません。我々の求めているのは現政権の退陣であり、自浄作用など期待していません。法により民意が反映されない仕組みになっているのに、国民が選挙に足を運ぶような国が世界のどこにあるのでしょう?まともな国家を樹立しようと運動しているんです。この点を政府側に理解して欲しいのです。政府側は何度も演説を繰り返して、改革を約束しています。我々国民がそこまで愚かでプライドがないと思っているのでしょうか?」

トリポリからマーターズ・スクエアに来たデモ参加者は、こう述べた。「ベイルートも南部各県も北部のトリポリも、同じ1つの痛みを抱えているのです。団結して声を上げるしかありませんよ」

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