ロンドン:イスラエルの攻撃による負傷は、ガザ地区における「風土病」となっていると、著名なパレスチナ系イギリス人の外科医が警告する。
再建外科医のガッサン・アブ・シッタ医師は、負傷したパレスチナ人を治療するために1980年代から定期的にガザ地区を訪れている。
イスラエルとパレスチナ間で新たな対戦が勃発し、先週、アブ・シッタ医師は戦争で破壊されたこの地区へ再び戻ってきた。11日間の交戦により、ガザ地区では250人、イスラエルでは13人の死者が出た。
しかし真の犠牲者は、人生が変わってしまうような負傷を抱えても生きていかなければならない生存者たちなのだと医師は警告する。「戦傷はもはや、ガザ地区においては風土病のようなものです」と彼はデイリー・テレグラフ紙に語った。
国連人道問題調整事務所によると、今回の交戦で2000人近くのパレスチナ人が負傷し、そこには600人以上の子供たちと400人以上の女性たちも含まれていたという。
さらにそれらの負傷者の約10%が、大掛かりなリハビリを必要とする長期的な障害に見舞われる可能性があるという。
ガザ地区でのこれまでの紛争により、全人口の5%から10%の人々が戦傷による障害を負った。
アブ・シッダ医師は、今や複数の紛争で負傷してきた人々を治療することが普通になっており、今回の場合は、多くが圧挫損傷の治療を伴うものだと述べた。
過去の紛争で最も多かったのは、銃や榴散弾による負傷で、同じ姓をもつ人が「繰り返し手術室に現れるのです」と医師は語った。
「多くの人は自宅で怪我を負ったため、病院内のそれぞれの部屋で家族全員が入院することになります」と彼は付け加えた。
「(イスラエルの空爆の)標的とされた多くは、ガザ地区中心街の都市部でした。田舎の周辺地域ではありませんでした」
今回の交戦での負傷は複雑であるため、ガザ地区では、通常の医療システムには存在しないレベルの高度なスキルを備えた専門外科医を必要としている。
「これは公的医療のピラミッド構造を覆すものです」とアブ・シッタ医師は述べた。「ガザ地区では、ここで暮らす2万という人口には不釣り合いな数の外科医が必要なのです」
51歳の外科医であるアブ・シッタ医師は、1980年代からシリア、イラク、レバノン、ガザなどの紛争地域を訪れ、ボランティアで医療活動をしてきた。
爆撃関連の負傷を多く扱ってきた経験から、彼はこの分野に関するいくつかの書籍を執筆し、インペリアル・カレッジ・ロンドンで研究をするようにもなった。
アブ・シッタ医師の家族は、元はガザ地区出身で、難民としてそこで暮らしていた。彼はクウェートで育ち、その後に英国に移住した。
負傷した子供たちを治療するのは、この仕事の中で最も辛い部分だと彼は言う。そして、「それこそが、私をガザへ戻って来させる要因となのです」
自身の3人の子供に言及しながら、彼は次のように付け加えた。「自分の子供を持つと、負傷した子供たちを治療するのがさらに辛くなります。(ガザの)子供たちは、次回の紛争でまた傷を負うために今回の応急措置を施しているようなものなのですから」