
テヘラン:イラン最高位の高官が11月30日(月)、核科学者モフセン・ファクリザデ氏は新たなタイプの「複雑に込み入った作戦」により暗殺されたと述べ、宿敵イスラエル並びに国外追放されていた反政府グループを非難した。
「その作戦は電子機器を利用した非常に複雑なもので、犯人はその場にはいなかった」とイランの国家安全保障最高評議会事務局長アリー・シャムハーニー少将が国営テレビに語った。
さらに彼は、モジャーヘディーネ イスラム人民戦士機構(MEK)が、「シオニスト体制とモサド」と共に「間違いなく」関与していたと言い、イスラエルの国外警備機関について言及した。
ハッサン・ロハニ大統領は、「来るべき時が来たら」イランは報復するが、慌てて「罠」にかかるようなことはしないと強調した。
イスラエルはファクリザデ氏をイラン軍の核開発プログラムの首謀者だと言い、イラン側はそうしたプログラムの存在をずっと否定してきた。米国政府は2008年に、イランの原子力関連活動への関与に対し、ファクリザデ氏に制裁を課していた。
イランのメディアによると、ファクリザデ氏の遺体は11月29日(日)に聖地ゴム市の主要霊廟における葬儀のために搬送され、その後イラン建国の父イマーム・ホメイニ師の廟へ運ばれたという。
11月30日(月)、イラン政府による生中継が国営報道局イランプレスによって配信され、葬列に先立ってか、ファクリザデ師の肖像の周りに集まる男性らが写っていた。
防衛省のウェブサイトによると、彼の葬儀は軍の上級司令官たちとその家族の参列のもとで行われ、場所については不明。
イスラエルはファクリザデ氏の暗殺に関し、公式にコメントを出していない。この暗殺は、ドナルド・トランプ政権下での4年間にわたる強硬路線の外交政策に続き、ジョー・バイデン次期大統領がむこう2ヶ月以内に就任するという時点で起きたものだ。
トランプ大統領は2018年にイランとの多国間核合意から米国を脱退させ、イラン政府に対する「最大限の圧力」キャンペーンの一環として、再度制裁措置を課して圧力強化を図った。
バイデン氏の政権はその核合意への再加盟を検討していることを匂わせているが、今回のファクリザデ氏の暗殺によって、イランの保守派グループの間では核合意に対する反発が再加熱している。
中心的な諮問・調停機関であるイランの公益判別会議の議長は、「イランが核拡散防止条約を再検討してはならない理由は無い」と言っている。
モーセン・レザイ元革命防衛隊司令官は、追加プロトコル(イランの原子力施設に対する強制立ち入り検閲について規定する文書)の施行もイランは取りやめるべきだと述 べた。
イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は11月28日(土)、ファクリザデ氏の暗殺犯を処罰するよう訴えた。
議会のモハンマド=バーゲル・ガーリーバーフ議長は11月29日(日)、ファクリザデ氏(イランの報道によると享年59歳)の暗殺に関与した人間に対し、「さらなる暗殺を抑止し、報復を施す」ような「強硬な対処」を行うよう求めた。
イスラエルの新聞ハアレツは、ファクリザデ氏の殺害は明らかにバイデン氏の大統領就任と関連していると述べている。
「暗殺のタイミングは、たとえそれが純粋なる作戦上の考慮から決定されたものであったとしても、ジョー・バイデン次期大統領に対する明白なメッセージであり、米国が核合意に復帰する計画に対するイスラエル側の批判を示すことが意図されている」とハアレツ紙は報道する。
イスラエルと9月に国交正常化を果たしたアラブ首長国連邦(UAE)は、この殺害を非難し、暴力行動の抑制を促した。
UAE外相は同国の公式報道機関WAM の報道を引用し、UAE政府は「モフセン・ファクリザデ氏の凶悪なる暗殺を非難する。このことによって中東内の対立をさらに煽ることにもつながる…
「UAE は、全関係各所に対し、最大級の自粛をもって中東に新たなレベルの政情不安と平和への脅威をもたらすことを回避するよう求める」と述べた。
核合意に加盟している英国は11月29日(日)、暗殺事件に続いて中東の緊張が高まる可能性があることを「憂慮」していると述べ、一方トルコは、その暗殺は「中東の平和をかき乱す」「テロ」行為だと述べた。
イランでは超保守派のカイハン・デイリー紙が、暗殺事件の背後にイスラエルが絡んでいることが「証明された」場合は、イスラエルに対して軍事攻撃を行うよう訴えた。
カイハン紙は、港湾都市ハイファを標的として「 インフラストラクチャを壊滅させ、多くの人命が犠牲となるような」攻撃を求めている。
イランは2015年の協定からの米国撤退に反応して、核合意に規定される核開発への主要コミットメントの大半を徐々に放棄していった。
ISNA通信社の報道によると、レザイ氏はイランの原子力機関が「カメラによるオンライン配信をとりやめ、検閲官の立ち入検閲を少なくさせるか中止させ、検閲官による原子力施設へのアクセスに制限を設ける」といった「最低限の手段」を講じるよう要請したという。
イランの議会は、暗殺事件への「最善の対応」は「イランの輝かしい核産業を復活させる」ことだと言っている。
議会の通信社ICANAによると、イラン議会は国際原子力機関(IAEA)の検閲官をイランの原子力施設に立ち入らせないようにすることを求めているという。
先日一部の下院議員は、検閲官らが「スパイ」のような行動を取っており、ファクリザデ氏の死に関与している可能性があると非難した。
しかし11月28日(土)、イランの原子力エネルギー団体のベロウズ・カマルヴァン ディ広報官がIRNA に語ったところによると、検閲官のアクセスに関する問題はイランの指導者グループの「上層部で決定される必要がある」という。