
シリア、アザズ:モハメド・モスタファ・アル・モハメド氏は、反乱軍が支配するシリア北部で、内戦犠牲者を助けるために医学を学び始めたのだが、卒業すると、そこはむしろ新型コロナウイルス感染症拡大との戦いの世界だった。
反体制側の大学を卒業した29歳の彼は、ロシアを後ろ盾とするシリア政府による砲撃の恐怖の下で、負傷者の手当をしていることだろうと予想していた。
しかし、シリア最後の反乱軍拠点であるイドリブ県に対する政府の絶え間ない攻撃の後、新型コロナ感染が世界的に拡大し始めた3月に、停戦が実現した。
「私の夢は、シリアを立て直し、病人を治療することです」と29歳のモハメド氏は、親トルコの反乱勢力が支配するアレッポ県アザズの町での卒業式で、AFP通信に語った。
しかし、新型コロナウイルスで「我々は困難な課題に直面しています」と救助隊員から医師になった彼は述べた。
人道支援活動隊員たちは、シリア北西部で新型コロナウイルス感染がこれ以上拡大すれば悲惨なことになると恐れている。この地域では、人口300万人の約半数が紛争で住む場所を追われ、過密なキャンプや一時的避難所で暮らしている。
イドリブ県や、アレッポ県の隣接する地域では、反体制当局が、死者166人を含む延べ1万5766人の感染を記録している。
シリア北西部で確認された新型コロナ感染者の約3分の2は、この1カ月で発表されたものだ。
モハメド氏は、「解放地域のアレッポ大学」を最初に卒業した32人の医師たちのひとりだ。同大学は、2014年にシリアの反体制派勢力の支援で設立された。
紺と緑の、卒業式のガウン、帽子、マスクに身を包んだ新卒医師たちは、友人や家族が参列するホールのステージ上に並んだ。
彼らは右手を正面に伸ばし、声を揃えて「ヒポクラテスの誓い」をアラビア語で唱えた。
シリア東部出身のモハメド氏は、2012年に紛争により勉学の中止を余儀なくされた後、今回ようやく卒業できることを喜んだ。
彼は2年間、反体制派が支配する地域で砲撃による負傷者を助ける救助隊員としてボランティアで働いていたが、2014年に一から勉学を再開した。
「我々は常に空爆と砲撃に晒されていました」と彼は、シリア民間防衛隊の中の「ホワイトヘルメッツ」と呼ばれる救急隊員として働いていた時代を語った。
シリア内戦では、2011年に反政府抗議への残虐な弾圧が始まって以来、38万人以上が殺害され、何百万もの人々が家を追われた。
そして医療分野の大部分が荒廃し、医療従事者の70%が国外逃亡へと追い込まれた。
残った医師たちが新型コロナウイルスと戦うことを余儀なくされてきた。
医学部長ジャワド・アブ・ハタブ氏は、10年近い内戦で打ちのめされた国でパンデミックと戦うことは、簡単なことではないと述べた。
「新型コロナウイルスは、安定した国をも含む、すべての医療部門にとっての難題です」と、医師であり反体制勢力「シリア暫定政府」の元トップでもあった彼は述べた。
「我々のような地域を想像してみてください。医療部門は破壊され、代わりに設置された医療センターはとても十分と言えるものではありません」
世界保健機関(WHO)の記録によれば、2016年から2019年の間にシリア北西部の医療施設への攻撃は337件に及んだ。
損傷、治安の悪さ、人々が周辺地域から逃げたことなどにより、3月までには、この地域にある550の医療施設のうち開業しているのはわずか半数となっていた。
ここ数カ月間、人道支援活動の職員たちは、新型コロナウイルスの検査数と感染患者受け入れのベッド数の増加のために奔走してきた。
アザズにあるこの大学では、医学部と薬学部の学生たち数千人が、自分の役割を果たしたいと望んでいる。
医学部で学ぶモハメド・シャアシャア氏もそのひとりだ。
「2011年から、医療スタッフが減少しています。医師たちは移住したり、拘束されたり、中には殺害された者もいます」と26歳の彼は述べた。
「我々はこの地域の人々に奉仕すべく、医学部に入学したのです」と彼は述べた。
助けることが「我々の義務です」
AFP