東京: 顔を真っ赤にした二人の力士が激しくぶつかり合い、土を盛ってつくった土俵の上で取っ組み合いを繰り広げ、やがて片方が端から転げ落ちる。
日本の伝統的なレスリングスポーツ、相撲の典型的な一幕だ。ただし、まわしを締めた力士たちが11歳で、二人とも大人の男性より体重があることを除けば。
「嬉しい。本当に、すごく嬉しい」と、勝者の佐々木久継くんは言う。135㎏(298ポンド)の体重ながら、今だに声変りをしていない子どもらしい声だ。「将来は大相撲の力士になりたい」
佐々木くんと対戦相手の熊谷毬太くん―体重は90㎏―は同じ夢を追っている。プロの力士になりたいのだ。昇進して、特に最も上位の横綱と呼ばれるところまでいけば、大金持ちになれるし、日本中で名を知られた有名人になれる。
成功するかは「相撲部屋」に入れるかどうかにかかっている。相撲部屋で、力士たちは共同生活を送り、共に訓練を積む。10代半ばから部屋に入る力士もいる。
日本では尊敬される力士だが、生活のすべての面において何世紀も続いてきた伝統を守らなくてはならない。力士となるために体重を増やさなければいけないことについて懸念の声が上がることもある。医学的調査によれば、力士は一般の人に比べて若い年齢で亡くなる傾向があるという。ただ、これは、彼らが引退後に体重を減らせるかどうかにもよる。
そのことについて質問された熊谷くんのコーチ、平真一氏は、子どもの場合の体重増加による健康への影響についてはよく知らないと答えたが、熊谷くんの体重は同い年の少年力士の平均を少し上回っていると言った。
わんぱく相撲全国大会実行委員会によれば、10歳~12歳の子どもたち約40000人がわんぱく相撲に参加しているが、プロを目指す子は少ないという。
佐々木くんや熊谷くんのようにプロを目指している子は、練習も一生懸命だ。
熊谷くんは、都内の相撲で有名な地域に一家で引っ越してきた。幼稚園で初めて参加した相撲大会で才能を見せたためだ。一方、佐々木くんの才能が注目され始めたのは最近のことだと平氏は話す。
東京で所属する相撲クラブの仲間より頭一つ大きい熊谷くんは、元アマチュア力士の父親が考案した練習ルーティーンを一週間に6日間こなす。ルーティーンには相撲、ウェイトリフティング、水泳、陸上が含まれ、相撲に必要とされる柔軟性と瞬発性を鍛えることを目指す。
熊谷くんは学業もこなしながらの厳しい練習に涙を見せることもあるが、結果は実を結び始めている。2019年、熊谷くんは10歳以下の世界相撲選手権大会で優勝した。
「自分より年上の人に勝つのが楽しい」と、熊谷くんは1月、トレーニング後のインタビューでロイターに語った。
10月、熊谷くんはわんぱく相撲全国大会で学年優勝を果たした。倒した対戦相手の中には佐々木くんもいた。
日曜、全日本小学生相撲大会での再戦は、2人の将来にとって重要な試合であり、熊谷くんの勝利が広く予想されていた。
だが、日本全国からの最強の力士たちが集まる大会で、競争は厳しかった。
「佐々木くん?彼は型破りだよ」と、平氏は言う。「今年の子どもたちは特に体格のいい子が多かった」
熊谷くんの両親が観客席から録画する中、2人の少年は突進してぶつかり合い、土俵中で激しい取っ組み合いを繰り広げた。勝利をおさめ、優勝を手にしたのは佐々木くんだった。
熊谷くんの父親、太助さんは思慮深く語った。「手強い相手に対し、とてもいい戦いを見せた…。これからやるべきことが見えてきたというところだ」
若き力士は、すでに前を見ていた。
「すごく悔しい。でも、すぐに次の大会があるから、そこでは勝ってみせる」
ロイター