• パンデミックが始まって以来、インパクト投資にはMENA（中東北アフリカ）のベンチャーキャピタルに対する魅力が更に増している
• 社会起業家は、政府と市場から十分なサービスを受けていない領域へ緊急援助を行った

キース・J.・フェルナンデス

ドバイ：社会起業家は、中東と全世界で、コロナウイルス感染症（COVID-19）パンデミックにより課せられた大きな課題に初めて対応している。

チュニジアではBanque Alimentaire Durable（持続可能な食品銀行）がラマダン期間とそれ以降、困窮家庭に食料を配り、レバノンでは非政府組織のAbaad（アバード）は家庭内暴力ヘルプラインを今年の最初4カ月間で2019年全体の2倍近く処理した。

政府と市場から十分なサービスを受けていない領域に緊急援助を提供する能力は社会起業家の投資に現れ、比較的安定し成長さえしていると、ニューヨークを拠点とするグローバルインパクト投資ネットワーク（GIIN）の6月調査で明らかになった。

インパクト投資は世界全体で7,150億ドルの価値があるが、社会や環境にプラスの影響を生むプロジェクトへの資金提供と定義される。

GIINの調査は、4,040億ドルのインパクト投資資産を持つトップクラスの投資家294名を聞き取り調査し、大多数（73％）からは、2020年は計画した支出を維持または増加すると回答があった。

「COVID-19はインパクト投資の必要を増加し、インパクトを促進する企業への投資家の関心は拡大しています」とC3（変化を創る会社）の共同創業者でCEOのメデア・ノチェンティーニ氏は語った。

「社会起業家の大半は、COVID-19パンデミックの最中に生き残っただけでなく、目標に向かって前進しています。変化を創る企業は未来であることを証明しています。」

C3は、中東、北アフリカ、トルコ（MENAT）の11カ国で持続可能性に関するアクセラレータプログラムを運営している。社会的インパクトを最大化し、財務的安定性を確保するため、国連の持続可能な開発目標（SDGs）の少なくとも一つの実現に向けて働いている起業家を助ける狙いがある。

プラスのインパクトを生み、ビジネスモデルの理解を改善する地域企業への関心が増えたと、同氏は指摘した。

「投資家はこのような企業を小規模なイニシャチブか非営利組織と見ていました。しかし、このパンデミックにより、プラスのインパクトを生み出そうとする企業はスケーラブルで、持続可能で、強靭で、実は投資可能であることに認識させられたのです」と同氏は付け加えた。

テクノロジー、開発、社会的インパクトが交差するスタートアップ企業、特にMENAT域内ではヘルステック、エデュテック、アグリテックは、増えた関心の恩恵を受けている。

Nabta Health（女性の健康状態に内在する診断に集中したハイブリッドなヘルスケア企業）の共同創業者兼CEOのソフィー・スミス氏は、COVID-19の大流行以来、関心が高まったと指摘した。

「COVID-19前は、中東のベンチャーキャピタル企業の間には、ライフサイエンスやヘルスケアへの投資には関心がほとんどないかありませんでした。現在、大手ベンチャーキャピタル（VC）数社がeコマース、マーケットプレイス、物流、フィンテックからピボットしてほぼ独占的にヘルスケアを集中しています」と同氏は付け加えた。

「VCは、人口全体の健康を改善し、将来のパンデミックを予防する、地域全体でアクセスしやすく手ごろなヘルスケアに投資する必要性を認識し始めています。」

社会的インパクト企業間の一般的な総意では、COVID-19パンデミックにより投資家を引き付けやすくなり、逆の視点はないと、同氏は付け加えた。

「国境閉鎖と貿易停止により、政府は、特に食糧と全住民の医療保障に集中した、地域で持続可能なビジネス構築の重要性を認識しました。これは、ほとんど常に持続可能性の命令があり、地元コミュニティを向上させたい社会的インパクト企業には良い知らせです」と同氏は語った。

社会起業家は、ミクロレベルのインパクトを超え、更に大きな国家的役割を演じられる。例えば、PwCの9月の推定では、サウジアラビアでの財務的に持続可能な社会起業家は、年間GDPに2.5%追加の貢献が可能で、2030年までに25万人の仕事を生み出すという。比較して、イギリスで同セクターはGDPの3%を占める。

PwCによれば、10万人あたり非営利組織数は、カナダとアメリカの50組織、フランスの200組織と比較すると、サウジアラビアでは現在1組織しかない。同社は、サウジをビジョン2030開発プランで概略が述べられた野心的な経済変革の達成に役立つ有望な方法として社会起業家を見ている。

サウジアラビアでもどこでも、インパクト投資は、社会、環境、経済へのリターンを生みながら、リソースのより公正な配分になりうる。

• Middle East Exchangeは、ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥームのグローバルイニシャチブの一つで、人道主義および世界開発の分野におけるアラブ首長国連邦首相兼ドバイ統治者のビジョンを示し、アラブ地域の状態を変える可能性を調べるために開始された。このイニシャチブでは、アラブ社会に影響を与える問題に関する一連の報道記事を提供している。

社会起業家、中東