
メネクセ・トキャイ
アンカラ:トルコとイスラエルの何年間にもわたる最低限度の気まずい関係の後、トルコ政府はイスラエル政府に和議を申し出て、両国間の外交関係を改善するつもりだ。
アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領が調停を申し出たという報道の後、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は12月25日、「何だかんだ言っても、諜報分野における私たちのイスラエルとの関係は、中断したことはありません」と述べた。
最近、エルドアン大統領の顧問、メスット・ハック・カシュン氏は、トルコがイスラエルから再び兵器を購入し、トルコとイスラエルの防衛産業の協力を強化する可能性があると語った。
両国間の諜報分野における機密情報のやり取りが再開され、通商関係は今でも継続中ではあるものの、ガザ国境沿いでのイスラエル軍によるパレスチナ人数十人の殺害と、大使館をエルサレムに移転するアメリカの決定により、両国は2018年5月、双方の大使を国外追放していた。
エルドアン大統領は、トルコが「イスラエルのトップレベルの人々」との間に幾つか問題を抱えていると述べ、パレスチナ問題はまだトルコの越えてはならない一線のままであり、パレスチナ領へのイスラエルの「無慈悲な」政策を、トルコ政府は受け入れることは不可能だと付け加えた。
2010年に、パレスチナ人の人道支援物資を運ぶガザ行の船団を襲撃したマーヴィ・マルマラ号事件は、トルコとイスラエルの関係に深刻な危機を招くこととなり、アメリカが仲裁したにもかかわらず、関係が回復するまでにほぼ10年掛かった。
イスタンブールにいるハマスのメンバーに、パスポートを与えたことで、イスラエルはトルコを非難しており、これは関係正常化の深刻な障害となっている。これに対して、イスラエルと湾岸諸国の最近の和平合意を、トルコ政府は非難し続けている。
2021年3月のイスラエルの選挙結果がはっきりするまで、専門家たちは両国関係の真の回復を期待していない。
イスタンブールのボアズィチ大学、トルコ・イスラエル関係の研究者、セリン・ナシ博士は多分、3月のイスラエルの選挙の後、両国は将来大使の交換を行うだろうと考えている。
「しかし、外交関係の将来的な回復と、本物の永続的な両国関係の正常化をはっきりと区別する必要があります。後者の場合、相互の信頼構築が不可欠となります。これは、両国の政策を再調整と同じくらい長い時間が必要です」と、ナシ博士はアラブニュースに語った。
アンカラを拠点とする中東の専門家、アイドゥン・セゼル氏によると、トルコは国際舞台で「敵」の数を減らすつもりだという。
「アメリカの大統領選挙で、ジョー・バイデン氏が選出されてことは、関係修復のチャンスとなりました。イスラエルのこうした動きと共に、トルコはアメリカのユダヤ人ロビーに接触し、彼らの無条件の支援を得たいのです」と、セゼル氏はアラブニュースに語った。
トルコとイスラエルの関係正常化は、この地域に細心の注意を払っているイラン政府にメッセージを送ることにもなるでしょう」と、セゼル氏は付け加えた。
ウフク・ウルタス氏はほぼ大使と言っても差支えないが、職業外交官ではない。同氏はイラン関係の専門家として、政府系シンクタンク、SETAのディレクターで、イラン関係の専門家として、ザ・ヒーブロー・ユニバーシティ・オブ・エルサレムで研究し、パレスチナ支持者として知られている。
ウルタス氏がさまざまなテレビインタビューや報告書で、過去に発言してきた反イスラエル的見解により、イスラエル政府から外交関係者として承認を受ける際に、同氏が直面しそうな深刻な問題に関して、イスラエルとトルコで意見が高まっている。
ウルタス氏が伝えるトルコの選択は、「トルコ政府の継続的な挑発政策」とイスラエルのマスコミに解釈されている。
マーヴィ・マルマラ号事件が発生するまで、このポストに職業外交官を任命することは、両国関係において常にしきたりとなっており、この関係にふさわしい大切さを示すための意思表示と考えられていた。
ワシントン近東政策研究所のソネル・カガプタイ氏は、エルドアン大統領の25日の発言を、トルコが中東と東地中海で友好国も同盟国もほぼない状態なので、この地域での完全孤立化を止めたいという合図だと考えている。
「こうした親交関係を回復したいというトルコの意欲の中に、東地中海という隠れた狙いも存在します」と、カガプタイ氏はアラブニュースに語った。
エジプト、ギリシャ、イスラエルのエネルギーと防衛の協力は、この地域でのトルコの戦略に厄介なムードを生み出す可能性がある。
「トルコを除くこの同盟からイスラエルを離脱させる必要性を、トルコは感じているのです」と、カガプタイ氏は語った。
「イスラエルは中東で最も親密なアメリカの同盟国なので、エルドアン大統領のバイデン氏への魅力的な外交活動は、アメリカに甘いものを提供することだという認識がトルコ政府にはあります。アメリカに甘いものを提供したいというこのような動機もまた、エルドアン大統領の関係正常化への望みの背後にはあります」と、カガプタイ氏は付け加えた。
東地中海ガスフォーラムの誕生と、イスラエルの湾岸諸国との関係正常化は、トルコ政府の独自性を基本にした外交政策の限界を明らかにしている、とナシ博士は考えている。
「イスラエルと関係を正常化することにより、トルコ政府は地中海の勢力ブロックを分割できるし、または、そうならなくとも、自らを抑圧してくると考えている非友好国勢力の影響力を、せいぜい和らげることを主として望んでいます。イスラエルとの親交関係の回復は、トルコがアメリカ政府の注目を取り戻し、敵対勢力を回避することに役立ちます」と、ナシ博士は語った。
しかし、イスラエルが完全かつ速やかに、この提案に応じるかどうかに関しては、カガプタイ氏は確信を持っていない。
「10年前と比較すれば、今日ではイスラエルがこの地域で関係を正常化しています。同国はたくさんの友好国を持っているので、すぐにエルドアン大統領と抱擁したりしないでしょう。イスラエルの温度は高まらないままであり、いつでもすぐにトルコとの本格的な関係をつくる、と即断しないでしょう」と、カガプタイ氏は語った。「正常化の前には、トルコとハマスの関係も障害となるでしょう」
ナシ博士に異存はなく、トルコがハマスとムスリム同胞団への支援提供の問題で、この段階で妥協するかどうかという疑いも抱いている。ハマスとムスリム同胞団への支援提供は、イスラエルの考え方からすれば、和解を妨げている主要な障害の1つとなっている。
「トルコとイスラエルの長期的な正常化は、共通の地政学的利益を基にした両国関係の再定義を必要とし、優先すべきイデオロギーを軽視することになります」と、ナシ博士は語った。
ナシ博士にとって、トルコ政府がコースを変更する明らかな指標はまだない。
「トルコの統治者たちは、楽勝した後、最小コストで最大利益を得ようとしているようです。トルコがハマスのメンバーにパスポートを与え、エルサレムを解放するメッセージの入った動画を発表しているという疑いを示唆する報道があるなか、正常化の取り組みは困難です」と、ナシ博士は語った。
「この日の最後に、国内の聴衆に向けられたメッセージはいつも、国際世論に監視されているのです」