

バグダッド:政府当局によると木曜日、イラクの首都にある人の多い市場の2か所で自爆テロが発生し、少なくとも32人が死亡し、数十人が負傷した。
総選挙の早期実施と深刻な経済危機をめぐる政治的緊張が高まる中、バグダッド中心部のバブ・アル・シャルキ商業地区ではまれとなる自爆テロが発生した。衣類や靴が山積みにされた賑やかな市場の床には血が滲んでおり、生存者たちは混乱の余波を目の当たりにした。
今回の自爆テロに対する犯行声明は出されていないが、イラク軍当局者は、今回の自爆テロは過激派組織「イスラム国」による犯行だと述べた。
イラクのハッサン・モハメッド・アル・タミミ保健相によると、今回の自爆テロにより少なくとも32人が死亡、110人が負傷した。またアル・タミミ保健相によると、負傷者の中には重体の者もいた。イラク軍はこれまで死者数を28人と発表していた。
保健省は、負傷者の治療のために首都の全病院が動員されたと発表した。
イラク軍部隊を含む統合作戦コマンドの報道官を務めるタフシン・アル・ハファジ少将は、最初の自爆テロ犯は、混雑した市場の中心で自分は病気だと大声で叫び、彼の周りに群衆が集まるように促し、群衆が集まった時に犯人は爆発物のベルトを爆発させたと述べた。また、2人目の犯人はその直後にベルトを爆発させたとハファジ少将は述べた。
「これは『イスラム国』の潜伏戦闘員により行われたテロ行為です」とアル・ハファジ少将は述べた。
アル・ハファジ少将は、「イスラム国」の過激派を根絶する軍事作戦により、大きな打撃を受けた後、彼らは「自身の存在を証明したかったのです」と述べた。
3年ぶりに発生した今回の自爆テロはバグダッドの人の多い商業地区を標的にした。
当時のハイダル・アル・アバディ首相が「イスラム国」に対する勝利を宣言した直後に、同じ地域で2018年に自爆テロが発生した。
木曜日の自爆テロに対する犯行声明は出ていないが、イラクではここ数ヶ月、「イスラム国」と民兵組織の両方による攻撃が行われている。
民兵組織は日常的にロケットや迫撃砲により、イラクにある米国の施設を標的にして攻撃しており、特にバグダッドの厳重に要塞化された旧米軍管理領域(グリーンゾーン)にある米国大使館を標的にしている。しかし、10月にイラン政府が支援する武装グループが事実上の停戦を宣言して以来、これらの攻撃の頻度は低下していた。
木曜日の自爆テロの手法は 過去に「イスラム国」が行った自爆テロに類似する。しかし、2017年にイラク軍と米国主導の連合軍によって排除されて以来、「イスラム国」が首都バグダッドに侵入することは ほとんどなかった。
イラク政府が「イスラム国」に対する勝利を宣言してから3年が経過した今もなお、その存在感を維持しているイラク北部地区において、イスラム国はますます巧妙な攻撃を行う能力を示している。
イラクの治安部隊は、キルクークやディヤラの農村部で頻繁に待ち伏せされ、即席爆発装置(IED)で狙われている。
昨年の夏、政府が新型コロナウイルスの世界的大流行に重点的に取り組んでいることを利用し、民兵組織による攻撃の増加が見られた。
今回の自爆テロは、イラク政府が10月に総選挙の早期実施に全会一致で合意した数日後の木曜日に発生した。ムスタファ・アル・カディミ首相は7月、反政府デモ参加者の要求に応えるため総選挙を早期に実施すると発表していた。
反政府デモ参加者らは昨年、数万人規模で街頭に出て、政治の変革と、横行する汚職や劣悪な政府に終止符を打つことを要求した。治安部隊が実弾と催涙ガスを使ってデモ参加者らを分散させたため、大規模デモで500人以上が死亡した。
また、イラクは原油安による深刻な財政危機に直面しており、イラク政府は国内での借入や外貨枯渇のリスクを抱えている。イラク中央銀行は支出義務を果たすため、昨年、イラクの通貨ディナールの公定レートを約20%切り下げた。
AP