
モスクワ:ジョー・バイデン氏の大統領当選によって米国が核合意へ復帰する可能性が生まれたが、その後ロシアとイランのトップ外交官が初めて会談を行い、1月26日(火)、両国はイラン核合意の救済を訴えた。
モスクワでの会談に先立ち、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、「最も切迫した問題の一つは、包括的共同作業計画(JCPOA:Joint Comprehensive Plan of Action)の救済だ」と述べた。
イランのムハンマド・ジャヴァド・ザリフ外相は、2018年に米国がJCPOAを脱退して以来ロシアが行ってきたJCPOA修復のための働きかけと、JCPOAに関するロシアの「建設的かつ道義に基づいた」立場に対し、ロシアに感謝の言葉を述べた。
ザリフ外相は、「米国脱退後に生まれたリスクと脅威からJCPOAを救うために」ロシアとイランとの団結を呼びかけた。
モスクワにおける会談の数日前に、ザリフ外相は米国に対し、イランへの制裁を撤回し、テヘランへの強硬路線を張った前政権による「政策の失敗」を修復するための「根本的な選択」を行うよう求めている。
彼は、さらなるイランの譲歩を引き出そうとする米国側のいかなる試みも最終的には失敗に終わるだろうと警告した。
「イランは核合意の成立を望んでいる」とザリフ外相はフォーリン・アフェアーズ(Foreign Affairs)誌の署名入り記事に載せている。
ドナルド・トランプ前米国大統領は一方的に核合意から脱退し、トランプ政権による「最大限の圧力」の一環としてイランへ厳重な制裁を課すよう高官らに命じた。それ以降この核合意はほぼ紙切れ同然となっていた。
この核同意は2015年にイラン、米国、中国、ロシア、英国、フランス、ドイツの間で締結された。
イランの核開発の抑制と引き換えに制裁を外すという協定で、イランが核爆弾の製造を行わないことを保証させるものだった。イランは、民間用の原子力エネルギープログラムを進めてきただけだと主張し続けている。
米国による新たな制裁がイランの生命線である石油部門と国際的な銀行取引に大きな影響を与え、経済が不況に突入している。
イランは米国新政権との交渉には前向きに応じる構えを見せている一方で、ロシア高官からの発言にはトランプ政権時代からの方針に変更を求める意味合いが込められている。
ジョー・バイデン米大統領が指名したアンソニー・ブリンケン国務長官は、今月の上院における指名承認公聴会で、トランプ政権の方針はイランを「さらに危険な存在」にしてしまったと述べている。
ブリンケン国務長官はバイデン大統領が核合意復帰を望んでいることを認めたが、その一方で米国とイランの両国はそれぞれ、協定が再び施行されるには相手側が全面順守を約束する必要があると主張している。
米国の脱退によって核合意が崩れ始めて以来、ロシアとヨーロッパの加盟国はその協定を救うための努力を呼びかけており、核濃縮の増強の動きについてイランに警告を発している。
ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は12月に、イランがその主要核濃縮プラントに高度な遠心分離機を設置する計画を発表したことを受け、イランに対して「最大限の責任」を負うよう求めた。
ロシア外務省は今月、イランの核合意規範からの逸脱について、米国による「体系的でぞんざいな違反行為」を非難し、合意条件に戻る用意があるというイランの声明を賞賛した。
ロシアの兵器交渉担当官が米国の姿勢について「実務的かつ現実的」だと評したことを受け、モスクワは米国新政権下における核合意の行方に関し、慎重な中にも楽観的な姿勢が見られる。
「進展の可能性があるということを意味している」と先週ミハイル・ウリヤノフ氏が国営テレビで述べている。
しかし協約加盟国がこの核合意を復活させて全加盟国がふたたびその軌道に乗るには、時間があまりない。
イラン議会が12月に可決した法令により、2月までに制裁が解除されなければ、イラン政府はウラニウム濃縮を加速し、国連による視察を制限することが規定されている。
AFP