
エフレム・コサイフィ (Ephrem Kossaify)
ニューヨーク : アサド政権がこのような兵器すべての破壊を命じた決議案に従わないことについて議論する、水曜日の国連安全保障理事会会合では、シリアにおける化学兵器による攻撃の犠牲者については、ほとんど言及されなかった。
犠牲者のことは脇へと追いやり、理事国は、また別の、あまりにありふれた内輪もめによって、お互いを非難中傷した。
これは、シリアにおける化学兵器の問題について議論するために召集された、第 88 次安全保障理事会のことだ。理事国は、決議 2118 の実施について、中満泉国連事務次長兼軍縮担当上級代表から手短に説明を受けた。
この決議は、前月にダマスカス郊外における民間人への化学兵器の使用を確認した国連の調査に続いて、2013 年 9 月に全会一致で採択された。神経ガスを吸い込んだ後に窒息した子供や人々の映像は、世界中に怒りを巻き起こした。
決議は、シリア体制に対し、2014 年半ばまでに化学兵器の備蓄の破壊を要求し、これに従わない場合には、懲罰的措置を用意した。これによって、シリアは、化学兵器の使用、開発、製造、取得、備蓄や保持、あるいは他の国家や非国家主体への移送が禁止された。
2013 年 10 月、シリアは、化学兵器計画に関する正式な初めての宣言を、化学兵器禁止機関 (OPCW) に提出した。それには、備蓄された同兵器の破壊計画も含まれていた。
中満は水曜日、安全保障理事会でこう発言した。7 年以上が経ち、宣言は「化学兵器禁止条約 (CWC) に従って、的確かつ完全とは考え難い。」
内戦中の化学兵器削減に関し、その実がどの程度であるのかに疑問を呈するような「乖離、矛盾そして不一致」が特定されている、と彼女は加えた。
「一定の前進」が成され、当初の宣言に関連する 3 の問題は解決されているものの、19 の問題は未解決のままであり、「様々な事件」における化学兵器の使用についての申し立てについて、調査が継続している、と中満は話した。
これら問題の一つは、化学兵器の製造に使用されたことはない、とシリア当局が言う施設に関するものだ。しかし、2014 年以来 OPCW が収集した情報と証拠からは、化学戦争用神経ガスの製造、武器化が事実その場所で行われていたことが示唆された、と中満は話した。国連は、シリア政府に対し、同施設で製造、武器化された化学物質の種類および量を開示するよう命令したが、未だ回答はない。
「私は毎月このことを話しています。一貫して繰り返す必要があるからです」、と中満は話した。「特定するだけでなく、国際法に違反して化学兵器を使用した者すべてに説明責任を果たしてもらう必要性が、早急にあるのです。こうした行動がなければ、化学兵器を使用することが、罰を受けることなく行われることを許すこととなるのです。」
また彼女は、地政学的不和を調停し、共通の立ち位置を見つけることを優先事項とするよう、理事会理事国に注意喚起した。
「今日の攪乱状態にある平和と、安全上の脅威に取り組むため、常識に戻って架け橋を見つける必要性があるのです」、と彼女は話した。「私たちには、一致団結した安全保障理事会が必要なのです。」
中満の嘆願にもかかわらず、理事会理事国は、団結とは程遠い姿を即座に晒したのだった。
ロシアがアサド体制の擁護に出てきて、OPCW の報告と同報告の「信じ難い 19 の問題」の信頼性を損ねようとした。
「この国は、CWC を遵守していないという非難、今回の場合には、初期の宣言における問題が未解決であるという非難、つまり、ダモクレスの剣と言うべき状況 ( 下 ) に生きている」、とロシア恒久国連代表ワシーリー・ネベンジャ (Vassily Nebenzya) は話した。
「シリアに圧力をかける」ことによって、同国政権は、OPCW に協力する意欲を失くす可能性がある、と彼は理事国を警告した。彼曰く、同国は、「責任あるパートナー」として共に行動してきた。「しかし、譲歩すればするほど、より多くの非難を浴びることとなっている。」
ネベンジャは OPCW と、同機関の使用者調査・特定チーム (IIT) の「違法な性質」と彼が呼ぶものを批判した。そして、「私たち西側諸国が沈黙を守ることを好む、他の事実」を強調し始めた。
彼は、シリアの特定の施設を調査することをロシアが提案したことを、西側の使節団が妨害したことを非難した。この調査が行われれば、理事会の疑問はすべて解消されたであろう、と彼は話した。
また、同使節は、シリア政権が何か正しいことを行う時には、「私たちの西側の同志」が何一つ発言しないことを叱責した。そして、シリアの当初の宣言の関連する 19 の未解決問題に集中していることを、「明らかな狡猾さと、力点のすり替え」と評した。
彼は、OPCW を公正さに欠けると非難し、安全保障理事会に対し、その客観性を維持するよう要請し、こう話した。「シリアに対し『もっと協力する』よう、執拗な要請がなされるのをよく耳にします。これについては、こう問いかけることもできるかもしれません。『もっと』とはどういう意味なのでしょう。この要請にこたえられるものはただ一つ、シリアが『その罪を認め』、恐ろしい罪について、公の場で洗いざらい告白することだけのように見えます。」
彼はこう加えた。「ダマスカスが、国連に協力し続けることの要点は何なのでしょう。結局、皆さんの目標は、シリアを「破壊する」ことです。ありそうもない口実で、かつてイラクにそうしたようにです。あるいは、シリアの大地に化学兵器がないことを確かめるためですか。」
リチャード・ミルズ (Richard Mills) 米国国連大使代理はこう話した。「アサド政権は、シリアの人々に対して繰り返し化学兵器を使用してきました。そして説明責任を逃れようとしました。独立した調査を妨害し、OPCW の責任と業務を弱体化させることによってです。」
彼は、ロシアがアサド政権を庇うことを非難した。ロシアは、「誤った情報を拡散し、OPCW の専門的な業務を攻撃し、さもなければアサド政権が化学兵器を使用したことに対する説明責任を果たすことに責任を持つ国家の努力を弱体化させている。」
米国および共同提案の 45 ヵ国は、締約国の OPCW 会議に、OPCW 理事会が要求した方針にシリア政権が従わなかったことに対する決議案を提出した。理事会は政権に対し、事態に取り組む行動を要求していた。
「驚くことではありませんが、シリアは、決議に記載されているどの方針も終了していません」、とミルズは話した。彼は、春に再招集する時には適切な行動を取ることを、締約国会合に要求した。「これは、化学兵器禁止条約に直接違反する化学兵器の使用が招く帰結について、アサド政権と彼の支持者に対し、強力なメッセージを発信するためです。」