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「国境なき医師団」事務局長、イスラエルによる病院攻撃の「パターン」は故意か「無謀な無能さ」によるものと国連安保理で述べる

2024年2月3日撮影の、イスラエル軍の砲撃で破壊されたガザ市内のハマド病院。(AFP/資料)
2024年2月3日撮影の、イスラエル軍の砲撃で破壊されたガザ市内のハマド病院。(AFP/資料)
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23 Feb 2024 07:02:56 GMT9
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  • クリストファー・ロックイヤー氏は、停戦以外の措置を求める決議は「重大な怠慢」だと述べている
  • 同氏は、人道法が完全に無視されている状況で、ただ生き延びることだけに注力しているガザの医療施設、スタッフ、患者の絶望的な姿を伝えた
  • わずか5歳の子供たちが、けがやトラウマを抱えて生きるよりも死にたいと言うようになった

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク:国際医療人道組織「国境なき医師団(MSF)」の事務局長は22日、ガザ紛争が始まって以来国連安保理で行われた最も説得力ある演説の中で、ガザの即時停戦、および、医療施設、医療従事者、患者の保護を国連に求めた。

同事務局長は、世界は理事国が「民間人が死亡している中、協議を行い先延ばしにしている」のを見ていると述べ、「最も明確な決議、すなわち即時かつ持続的な停戦を要求する決議」の採択を妨げた最近の米国の拒否権行使に憤りを表明した。

クリストファー・ロックイヤー氏は、 「この理事会には、切実に必要とされている停戦に賛成する機会が3回ありました。しかし、米国は3回とも拒否権を行使したのです」と述べた。

同氏は、米国が先週提出した決議案は、同国が拒否権を発動したアルジェリア案に対抗するものであり、「表向きは」停戦を求める米決議案は、「よくてミスリーディングなものに過ぎない」と述べた。

問題の決議案は、停戦の呼びかけを支持してはいるものの、「可能な限り速やかに」実施する必要のある一時的な措置としており、その実施の決定はイスラエルにゆだねられていると大方には解されている。

ロックイヤー氏は安保理に対し、「現地の人道的努力をさらに妨げ、ガザで続いている暴力と大規模な残虐行為を安保理に黙認させるような決議案」を拒否するよう求めた。

「ガザの人々は停戦を必要としています。可能な限り速やかにでなはく、今です。一時的な平穏ではなく、持続的な停戦を必要としているのです。これ以外の措置は重大な怠慢だといえます。政治的目的をぼやかすために人道主義を利用するような安保理決議によって、ガザの民間人保護の成否が左右されるようなことがあってはなりません」と同氏は付け加えた。

ロックイヤー氏は、ガザ人にとって最後の避難地であるラファの絶望的な状況を伝えた。ラファには現在100万人以上のパレスチナ人が避難し、地上侵攻の恐怖に包まれている。

MSFによると、4カ月以上にわたる紛争では、イスラエルによる絶え間ない爆撃や攻撃により、3万人近いパレスチナ人が死亡したという。

170万人以上の人々が強制的に避難させられ、細菌感染した傷や病気に直面していると推定されている。MSFによれば、医療施設が軍事攻撃から保護されていないガザでは、医療を提供することは「事実上不可能」になりつつあるという。

「我々の患者は大けが、四肢切断・粉砕、重度の火傷を負っています」とロックイヤー氏は語る。

「彼らは高度なケアを必要としています。長期にわたる集中的なリハビリもです。戦場や破壊された病院の焼け跡では、医師はこうしたけがの治療はできません。我々の外科医は、出血を止めるための必要最低限のガーゼすら使い果たしてしまいました。ですから、一度使ってから血を絞り出し、洗って滅菌し、次の患者にまた使っているのです」

「ガザの人道危機によって、妊婦は何カ月も医療にアクセスできません。陣痛が起きた女性は、まともな分娩室にたどり着くことができないので、ビニールテントや公共施設で出産しているのです」

「医療チームはWCNSF という新たな略語を使い始めました。『負傷した子ども、家族は全員死亡(Wounded child, no surviving family)』です」

「この紛争を生き延びた子どもたちは、外傷やけがといった目に見える傷だけでなく、度重なる避難、絶え間ない恐怖、目の前で家族が文字通りバラバラにされるのを目撃するという目に見えない傷も負うことになります。こうした心理的な傷により、わずか5歳の子どもたちが、死んだほうがましだと我々に言うようになりました」

2月20日、イスラエル軍の戦車がハーン・ユーニスのアル・マワシにあるMSFスタッフの避難所をそれと明確に標示されているにもかかわらず攻撃し、MSFスタッフの妻と義理の娘が死亡、6人が負傷した。

イスラエル軍は先週、ガザ南部に残る最大の医療施設であるナセル病院から人々を退去させ、その後急襲した。退去させられた人々は行き場がない、とMSFは言う。ほとんど破壊されている北部には戻れないため、ラファの絶え間ないイスラエル軍の空爆と大規模な地上侵攻の恐怖の中で暮らしている。

ガザ紛争が始まって以来、MSFの医療チームと患者は、ガザ地区の9つの医療施設から避難を余儀なくされている。MSF職員は5人が死亡した。MSFの支援活動は、現在「全く不十分だ」とロックイヤー氏は言う。

「我々は138日間、ガザの人々の想像を絶する苦しみを目の当たりにしてきました。そして、138日間、我々が何十年も支援してきた医療体制が組織的に抹殺されるのを見てきました。患者や同僚が殺され、傷つけられるのを見てきました。このような状況は、イスラエルがガザ地区の全住民に対して仕掛けている戦争、すなわち集団的懲罰戦争、ルールなき戦争、あらゆる犠牲を払う戦争がもたらしたものなのです」

「我々が人道支援を可能にするための拠り所としてきた法や原則は、今や無意味になるほどに無視されています」

「今日のガザにおける人道的対応は幻想に過ぎません。この紛争が国際法に則って行われているという物語を長続きさせる、都合のいい幻想なのです。人道支援を求める声は、この議場に響き渡っています。しかしガザでは、場所も、薬も、食料も、水も、安全も、日に日になくなっていきます。我々はもはや、人道支援の拡大を話題にはしていません。必要最低限のものがなくてもいかに生き延びるかが現在の課題となっているのです」

ロックイヤー氏は、医療施設やスタッフに対するイスラエルの攻撃は、今や「あまりにもありふれた」ものになった、とも語った。

「イスラエル軍は我々の車列を攻撃し、スタッフを拘束し、車両をブルドーザーで破壊しました。病院は爆撃され、襲撃されました」

「この攻撃パターンは、意図的なものか、あるいは無謀な無能さを示すものです。ガザにいる我々の同僚は、今日皆さんに話したように、明日攻撃されるのではないかと恐れているのです」

ロックイヤー氏は、国際人道法を安易に軽視しないよう警告し、さもなければ「ガザ紛争をはるかに超えた影響があるでしょう。我々が共有する良心にとって永続的な重荷となります。これは単なる政治的怠慢ではなく、政治的共犯なのです」と訴えた。

そして、人道当局者として、「国際人道法の下で約束された保護」と、両当事者の停戦を安保理に求めた。

ロックイヤー氏は安保理メンバーこう尋ねた。「我々は、援助という幻想を意味のある支援に変えるための場を求めます。そのために何をしますか?」

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