
ポール・イドン
イラク・クルディスタン地域アルビル:証拠が手元にあるため、独立アナリストたちは、月曜日のイラク・クルディスタン地域アルビルへのロケット攻撃について、特定のグループに責任を押し付けることに躊躇している。しかし、攻撃のタイミングと性質の双方が、主に米軍関係者がいる空港の基地を標的にした行いであり、イランが支援する民兵の仕業であることを強く示唆している。
報道によると、約14発のロケット弾がエルビル国際空港とその周辺の住宅地を直撃し、民間請負業者が死亡、最大9人が負傷した。事件の映像は瞬く間にソーシャルメディアに氾濫し、ツイッター上では、この状況における米国の取るべき行動の正しい方向性をめぐって、防衛アナリストたちの間で長時間の議論が交わされている。
ワシントン研究所のバーンスタイン・フェロー、デビッド・ポロックは、攻撃の責任を主張している自称シーア派民兵のサラヤ・アブリヤ・アルダムが、インスタグラムを通じて、イラクの「アメリカによる支配」を標的とした、より多くの攻撃作戦を企図していると脅していると指摘する。
「イランは公式に攻撃を非難したが、それはいつものプロパガンダだ」とポロックはアラブニュースに語り、実行犯はまだ特定されていないという事実を強調した。彼は加えて、次のように述べた:「イランは、彼らが行っているその他の脅しと同様、イラクを離れるよう、米国に圧力をかけるために、実際に今後も攻撃を支援するかもしれない」
クルド自治区は、イラクの他の地域と比較して、明らかに安定した安全な地域として長い間見られてきた。しかし、2月15日のテロ事件を境に、この地域に対する国際的な認識は変わる可能性がある。
クルド地域政府(KRG)は、攻撃の可能性は十分に認識していた。「我々の懸念は、クルディスタンがこの種の攻撃や不安定さに慣れていないという事実にある」と、KRGの外交部長であるサフィーン・ディザイエはアラブニュースに語った。
「クルディスタンはこれまでこの地域の安定性;共存;経済的、政治的発展;そして繁栄で知られている。したがって、このような事件が発生した場合、コミュニティ、政府、ここに住むすべての人々、そして他の地域にいる友人たちにとっても憂慮すべき事態になる」
ディザイエは、KRGの関連部門は「最大限のセキュリティを提供し続け、今回の攻撃の犯人や加害者、そしてここ数回の攻撃に責任があると思われる人物を見つけるために努力していく」と主張した。
同時に、今後このような事件を未然に防ぐため、KRGと連邦治安部隊との連携を強化することの重要性を強調した。
キルクークやシンジャーなどの紛争地域にある連邦軍の陣営とクルド人ペシュメルガとの間には、2017年後半からかなりのセキュリティギャップが存在することが知られている。ディザイエが「国家のコントロールの及ばない地で行動するならず者たち」と表現したダエシュ(イスラム国)や他の勢力は、この力の間隙を悪用してきた。
問題となっている勢力には、イラク国が認めているシーア派が大半を占めるハシュド・アル・シャビ(PMF)の傘下で活動している民兵があるが、彼等の忠誠心は主にイランと、イラクにおけるイランの利益に置かれている。こうした勢力は近年、表向きは米軍をイラクから撤退させる圧力をかける戦術として、米軍への攻撃を繰り返し行ってきた。
ポロックは、キルクークとシンジャー周辺の 「継ぎ接ぎ」地域でのクルド人ペシュメルガとPMFの間の安全保障上のギャップの緊張が、「現状起きている行為」の要因となっていると考えている。
「現在、KRGをはじめ、国連、イラク政府関係者の高官レベルの声明の多くが、こうした地域のより良い治安調整の呼びかけを繰り返していることは注目に値する」と、彼は述べた。
一部の安全保障アナリストは、米国は自国軍が標的にされたことに対して怒りをもって反応しているのに、報復措置を発表も、実行もしていないのかを訝っている。ポロックは、いずれにしても、直近のアルビル攻撃は、「クルディスタンを含むイラクに留まるという米国の決意を強めることになるだろう」と述べている。
ワシントンD.C.にある戦争研究所の政府関係ディレクターであるニコラス・ヘラスは、イランが支援しているグループが攻撃を通じて米国の決意を試そうとするのは「組織の性質上」仕方が無いことだと考えている。
さらにヘラスは、今回の攻撃は、過去にイラクの米軍を標的にしていた強固なイラクのカターイブ・ヒズボラ民兵が、トルコとの協力に反対するKRGへの警告である可能性があると疑っている。
「イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)がどれだけこれらの影の民兵、あるいはカターイブ・ヒズボラのような勢力を支配しているかは、アナリストの間でも強い意見の相違があるポイントである」とヘラスはアラブニュースに語った。
ヘラスは、米国が2020年1月にゴドス軍司令官のカセム・ソレイマニを排除したことを受けて、IRGCは影の武装集団を支配下に置くことに苦労しているとの見方を示すアナリストもいるという。
しかし、他の人々は、これらの勢力はカターイブ・ヒズボラやアサイブ・アール・アルハークの隠れ蓑に過ぎず、イラクにおける米国の利益を侵害するために必要な「一見もっともらしい反証」を提供していると考える人もいる。
それでも他のアナリストは、「イラクのカターイブ・ヒズボラグループの生態系は、すべてIRGCが中心に据えられており、ヒドラの異なる頭にすぎない」と考えている、とヘラスはアラブニュースに語った。
エルビルのルドー・メディアネットワークのシニアエディター、オサマ・ゴルピーは、イランがアルビルへの攻撃を直接指揮したわけではないかもしれないが、これはイランが望んでいたことだと言う。彼はクルド人のことわざを引用し、テヘランの立場を要約して、次のように語っている:「私はあることが起きることを願っている(心の底からそう願っている)が、私の手によってではない」
ゴルピーは、IRGCに近いメディアネットワークが最近、クルド人指導者のマスード・バルザーニが2014年にダエシュのアルビルへの脅威に直面し、無力の弱さをさらけ出し、何とか英雄ソレイマニに救われたとする、俳優が演じたビデオクリップを公開していることを指摘した。KRGはこのビデオの存在を非難している。
テヘランは、イランのメディアは厳しく検閲され、政権によって厳しく管理されているにもかかわらず、ビデオは必ずしも自分たちの見解を表しているわけではないと主張した。
「同じ枠組みで今回の攻撃も捉えるべきだと思う」とゴルピーはアラブニュースに語った。ゴルピーの言うシナリオとは、イラン当局は、ロケット弾を発射した勢力が誰で、またその意図も知っているにもかかわらず、そうした勢力とのつながりはあくまで公式には否定する。
ゴルピーはまた、イランが非正規戦争と軍事諜報活動を専門とする5つの分派の1つであるゴドス軍を通じて、こうした勢力の行動の一部を指示している可能性を排除していない。
ゴルピーの見解では、今回のロケット弾がアルビルに近い場所から発射され、初めて住宅地を直撃したことは、イランが支援する民兵が、イラクの米軍関係者がクルディスタン地域への移転を強めていると考えていることを示唆している。
簡潔に言えば、ゴルピーは、民兵は「ここアルビルにおいて、バグダッドで作りあげたと同じような雰囲気を作ろうとしている」と述べる。
ツイッタ: @pauliddon