Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • 石油資源が豊富なイラクで、規範に反してリグサイトでの仕事に就く女性たち

石油資源が豊富なイラクで、規範に反してリグサイトでの仕事に就く女性たち

イラクのバスラ郊外の油田の近くで写真にポーズする石油化学技術者のアヤット・ラワン、2021年2月5日、火曜日。 (AP)
イラクのバスラ郊外の油田の近くで写真にポーズする石油化学技術者のアヤット・ラワン、2021年2月5日、火曜日。 (AP)
Short Url:
28 Feb 2021 10:02:59 GMT9
28 Feb 2021 10:02:59 GMT9
  • 彼女たちは、保守的な社会によって定められた制限を打破することにチャレンジしている新世代の有能なイラク人女性たちの一員である

バスラ: もうすぐ夜明けが迫る中、ザイナブ・アムジャドは夜通しでイラク南部の石油掘削施設で働いている。彼女は、自国の経済を支える原油の存在を伝えるソナー波が探知されるまで、センサーを油井の奥深い闇の中に沈めている。

石油が豊富なバスラ県の別の場所では、アヤット・ラワンが大型ドリルパイプの組み立てを監督している。こうしたドリルパイプが地上から地下へと入れられ、地価の岩石の組成に関する重要なデータを数メートル(フィート)離れた場所に設置されたスクリーンに映し出し、彼女が解析する役目を果たす。

どちらも24歳の二人は、イラクの女性石油エンジニアに一般的に与えられる退屈な事務職を避けた、まだ数少ない女性たちである。代わりに、彼女たちは、この国の石油業界の先駆けとして、過酷なリグサイトの現場で、ヘルメットをかぶって行う作業を選んでいる。

彼女たちは、保守的な社会によって定められた制限を打破することにチャレンジしている新世代の有能なイラク人女性たちの一員である。過去には男性の仕事とされていた産業に就こうとする彼女たちの決意は、急増する若者の人口が持つ熱意が、イラク南部の石油の中心地に深く根付く保守的な部族の伝統とますます対立していることを示す象徴的な例である。

アムジャドとラワンが油田で過ごす時間は長く、天候は容赦ない。彼女たちは、女性が、ここで何をしているのかと聞かれることが多い。「現場の環境は男性にしか耐えられないと言われた」とアムジャドは述べ、リグサイトでは一度勤務に就くと、6週間は離れられない仕事をこなしている。「もしここで私が諦めたら、彼らが正しかったことになる」

経済的にも政治的にも、イラクの国勢は石油市場に左右される傾向にある。国の収入の90%は原油販売が占めており、その原油の大部分は南部で算出されている。原油価格の暴落は経済危機をもたらし、反面価格の上昇は国家財政を潤す。健全な経済は安定をもたらすが、一方で国が不安定であれば原油部門の強さを損なうことも少なくない。現にイラクは何十年にもわたる戦争、内乱、侵略によって、原油生産は停滞している。

石油省の統計によると、コロナウイルスの流行や国際紛争の影響で一時的に原油価格が下落後、現在はイラクでも回復の兆しを見せており、1月の輸出量は1日あたり286万8,000バレルで、価格も1バレルあたり53ドルに達している。

ほとんどのイラク人にとって、石油業界は政府が公表する数字が全てであるが、アムジャドとラワンはより詳細な見方をしている。 個々の油井には、それぞれの課題がある。汲み上げ圧力を上げなければならない油井もあれば、有毒ガスが充満している油井もある。「別の油井の現場に行くのは、まるで新しい国に行くような気分です」とアムジャドは語った。

石油業界のイラク経済への極めて重要な位置づけを考慮すれば、同国の工学系の大学の石油化学関連学部は、最高の成績を収めた学生のためにあることが理解される。事実、ここで取り上げている二人の女性も、2018年のバスラ大学の卒業生の中でトップ5%に入っている。

大学では、彼女たちは切削に魅了された。彼女たちにとって、そこは専門用語に溢れた新世界だった: 「開坑」とは掘削作業を開始することであり、「クリスマスツリー」は坑口の最上部であり、「ドープ」は単にグリースを意味していた。

彼女たちは、必要なツールを使って鉱物や泥の地層を観察し、貴重な石油が見つかるまで、毎日のように地殻下の神秘的な世界につかっていました。「水の中に岩を投げ入れて、その波紋を調べるようなものです」とラワンが説明した。

二人の医師の娘であるアムジャドは、志望する分野で働くためには、国際的な石油会社に就職しなければならないことを覚悟していた。そのためには、誰よりも優秀でなければならなかった。国営企業は行き詰まっており、そこでは彼女は事務職に追いやられるのが予測できていた。

「自由な時間がある時、私の休暇や休日には、必ずトレーニングを予約し、可能な限りのプログラムに登録しました」とアムジャドは述べた。

中国石油工程建設(CPECC)が新入社員を募集したとき、彼女は当然の如く採用された。その後、テキサスを拠点とするシュルンベルジェ社がフィールドエンジニアを募集すると、彼女はそのチャンスに飛びついた。この仕事では、ある油井からどれだけの石油が回収できるかを判断する必要がある。彼女は、難しい試験に次々と合格して最終面接に臨んだ。

最終面接で、本当に求められている業務をこなせるか尋ねられて、彼女は次のように回答した:「私を雇って、見ていてください」

2ヶ月後、彼女は緑色のヘルメットから、光沢のある白いヘルメットに変わった。もはや研修生ではなく、監督としての地位を証明している。通常より1ヵ月も早い昇進だった。

ラワンもまた、自らの成功のためには、もっと一生懸命働かなければならないことを知っていた。ある時、彼女のチームが元の油井の隣に別の油井を切削するという珍しい「サイドトラック」を実行しなければならなかったとき、彼女は一晩中起きていた。

「私は24時間眠らずにいました。最初から最後まですべてのプロセス、すべてのツールを理解したかったのです」と彼女は述べた。

ラワンもまた、現在はシュルンベルジェ社で働いており、彼女は後に掘削経路を決定するために使用される油井からデータを収集する役目を担っている。彼女は掘削の技術をマスターしたいと考えており、同社はその業務では世界をリードしている。

当初親戚や友人、教師までもが懸念しました:ハードな肉体労働に耐えられるのか?バスラの灼熱の暑さには?1度切削が始まると、リグサイトで数ヶ月間続く生活に適応できるか?あるいは、夜間に貯水池を徘徊する砂漠のサソリの危険?

「教授や仲間たちは最初軽くみて、『確かに、赴任当初はいいだろうけれど、最後まで仕事を続けるのは無理なんじゃないかと』と何度も言っていました」とラワンは述べた。「しかし、そうした言葉はかえって私を本気にさせただけでした」

しかし、彼女の両親は協力的だった。ラワンの母親は土木技師で、父親は石油タンカーの船長で、一度航海に出ると、何ヶ月も洋上で過ごすことが多かった。

「両親は私の情熱を理解してくれています」と彼女は述べた。彼女は今、志を同じくするイラク人女性エンジニアを集めた組合の設立を支援したいと考えている。現在は、そのような組合は存在していない。

仕事に危険がないわけではない。地元の部族や失業者が率いる油田の外での抗議行動は、仕事を中断させ、時には石油労働者への暴力に発展することもある。イラクの原油資源の豊かさを物語る、燃え上がる油井の炎を毎日眺めるイラクの人々は、国家の腐敗、劣悪なサービス提供、失業に非難の声をあげている。

しかし、彼女たちはこうした苦難も喜んで引き受ける覚悟がある。アムジャドに至っては、そうした苦難について考える時間すらない:現在は午後11時だったが、彼女はこれから仕事に戻る必要があった。

「油井の掘削作業は決して止まることはありません」と彼女は述べた。

特に人気
オススメ

return to top

<