
サラ・グラブ
ロンドン:新たに発表されたサウジアラビアのイエメン戦争終結に向けた和平案は、平和に向けた現実的なチャンスをもたらす初めての案であると専門家は述べている。
これまで、イエメンでは正式な和平プロセスや十分な外交への投資が行われていなかったと、サヌア戦略研究センターの会長兼共同創設者であるファレア・アル=ムスリミ氏は述べている。
「過去5年間の地域紛争解決モデルは全体的として、我々が直面している事態に対応するのに十分ではありませんでした」とチャタムハウスが主催したイエメン戦争の現状と地域の動向に関するパネルディスカッションで述べた。
サウジアラビアは先週、6年間に及ぶイエメン戦争を終結させるための新たな和平案を発表した。同案は、国連の監督下での全国的な停戦、サヌア空港の民間航空路の再開、ホデイダ港の規制緩和、および紛争の政治的解決に向けた交渉の再開などを求めている。
アル=ムスリミ氏は、真の和平の実現を後押しする要素として、湾岸諸国間の和解、ジョー・バイデン米大統領による新政権の発足、ホワイトハウス直属のイエメン特使の派遣などを挙げた。
同氏は「イエメンでの外交的圧力を高めるために、特使を増員する時期に来ている」と述べた。
また同氏は、欧州、英国、湾岸諸国、アラブ連盟は、イエメン担当の特使を置いていないと指摘した。
彼はまた、これまでの和平案が完全に遵守されなかった理由として、単独では民主的な移行を達成することができない国連が全責任を負っていた点を挙げた。
主に国際的に承認されているアベド・ラブボ・マンスール・ハディ大統領率いる政府と、イラン系の武装勢力であるフーシ派との間で起こったイエメンの内戦は、2014年末に始まった。翌年、サウジアラビアを中心とするアラブ連合が政府を支援するために介入した。
アル・ムスリミは、サウジアラビアは戦争によって引き裂かれたイエメンの再建に深く関わっており、今イエメンから手を引くことはできないし、そうすべきではないと述べた。
イエメン文化遺産・芸術研究所の所長であるサマア・アル・ハムダニ氏は、「今こそ平和を実現するまたとない時期である」という。また新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な大流行がなければ、「おそらく昨年には、何らかの和平案が実現されただろう」とも付け加えた。
さらに同氏は、オマーンの新スルタン就任、米国によるイランのカセム・ソレイマニ元帥の殺害、サウジアラビアのハリド・ビン・サルマン国防副大臣のイエメン担当就任など、この1年間に起きたいくつかの出来事について言及し、中東地域は「新たな分岐点に差し掛かっている」と述べた。
「米国とサウジアラビアが和平案に前向きであることを示す多くの出来事が起こりました」とアル・ムスリミは語る。
また同氏は、駐英サウジアラビア大使のハレッド・ビン・バンダール・ビン・スルタン王子が掲載した論説にも言及した。そこで王子は、和平プロセスや再建活動へのサウジアラビアの貢献について語り、「紛争解決に向けてサウジアラビアがこれまでになく真剣に取り組んでいる」ことを強調している。
一方、アル・アラビーヤ英語版の編集長であるモハメド・アリヤは、今回の和平案は、戦争が始まって以来、最も重要な和平案であると述べた。
「今回の和平案は、フーシ派がはたしてイランの革命防衛隊の言いなりにすぎないのか、それとも国益とイエメンの政治社会の一員になりたいという願望によって動かされているのかを試す試金石となるでしょう」と同氏は言う。
さらに彼はこうも述べている。「フーシ派の行動はまったく正当化できないものです。フーシ派の支配下での生活は、困難が絶えないものとなっています。とくに彼らは、自分たちの地域に提供される援助を戦争の資金源としているのです」
「平和は重要です」とアリャリャは言う。「イエメンにとって安定は重要ですが、フーシ派の支配下で暮らす人々を犠牲にしてはなりません」