
ムハンマド・アル=スラミ
リヤド—- イエメンのフーシ派民兵との連絡手段を持っている国際社会の国々は影響力を生かし、フーシ派を促して、イランとの関係を断ち切り、サウジアラビア主導の和平工作に取り組むように仕向けるべきであるとイエメンの上級大臣が述べた。
イエメンのムアマル・アル=エリヤニ情報・文化・観光相は、アラブニュースの独占インタビューで、特に治外法権のコッズ部隊、現在も続くマアリブへの軍事攻撃、民間施設や商船への攻撃など、イスラム革命防衛隊(IRCG)におけるイランの役割については明鏡止水の思いで認識していると言い添えて事態の改善を訴えた。
「私たちは、フーシ派の民兵が、この地域にテロと混乱を広げ、商船や国際航路に脅威を与えるという、サウジアラビアを標的とするイランの政策上の単なる道具であることは理解していますが、フーシ派と連絡をとっている国々に建設的な役割を果たすように呼びかけています」とアル=エリヤニ情報相は話した。
そのような国々は「政治および軍事上の決断に関わるイランの支配を退け」、「直ちにマアリブで加速させている軍事行動をやめ」、「即刻、無条件でサウジアラビアの同胞が立案した政策に応じる」よう、民兵に圧力をかけるべきだと同情報相は言い添えた。
また、「そのような国々はフーシ派に対し、管理地域の市民に対する日常的な犯罪行為や婦女暴行をやめるように圧力をかけるべきです。これは戦争犯罪および人道犯罪です」と述べた。
テヘランが2020年10月に、コッズ部隊将校のハッサン・イルローをイエメンの首都、サナアの駐在大使に配置したことで、イランはフーシ派の正式な代理を公認・任命する唯一の国となった。コッズ部隊の退役軍人であるイルローは、フーシ派に対する高性能兵器の供給を担ったとして米国財務省の制裁を受けてきた人物である。
イエメン北部の大部分を支配下におく民兵は、中東全体の代理勢力拡大の一環としてイランが融資し、武器を調達していることで国際的に知られているアブド・ラッブ・マンスール・ハーディ大統領の政権に忠実な戦闘部隊である。
イランがフーシ派に軍事と金融で支援をしてきたことは、2015年に民兵がサナアを占拠するずっと以前から知られている公然の秘密である。安全保障アナリストたちの間では、テヘランの悪影響が戦火を煽り、数々の和平努力の足を引っ張り、世界最悪の人道危機をもたらしたという見方が一般的だ。
米国国務省は1月19日にフーシ派を外国テロ組織(FTO)に指定した。これは、トランプ政権が、イランと中東におけるイランの代理勢力に対する「最大圧力」作戦
として最後に実践したことの ひとつである。
しかし、バイデン政権が2月15日に国の人道的緊急事態の緩和という目標を表明してFTOの指定を覆したため、フーシ派はミサイルやドローンを使ってサウジアラビアの人口密集地や民間インフラを攻撃しつつ、イエメン政府軍への攻撃を徐々に強化した。
「米国政府がフーシ派をテロリスト組織の指定から外した決断は、イエメン国民を失望させました。このことで市民に対する民兵の犯罪行為や婦女暴行がさらに増えると国民は見ています」とアル=エリヤニ情報相は語った。
「国民はまた、これによってフーシ派がマアリブ地区に自由に軍事攻撃ができるようになり、サウジアラビアの市民や重要な設備へのテロ攻撃の頻度を高め、紅海とバブ・エル=マンダブの国際航路のみならず、世界的なエネルギー供給の安定と安全性を脅かすことができるようになったと見ています。」
アル=エリヤニ情報相は、フーシ派をテロリスト組織の指定から外すという決断は、「フーシ派の過激思想、敵意あるスローガン、支配下の市民に対する犯罪行為に加え、フーシ派とIRGCのつながりを無視したものです。このような特徴は他のテロリスト集団と何ら変わりません。」
フーシ派の人命軽視は3月7日にいっそう明確に示された。歩哨がサナアの移民収容所にいた大勢のエチオピア移民に催涙ガス弾と閃光弾で攻撃し、火事が起こって、エチオピア移民が生きたまま炎に包まれたのだ。
同情報相にとって、残虐行為そのものよりも悪いことは、通常は歯に衣を着せない人権団体や国際社会が沈黙していることだ。
「収容所のひとつで、緩射によって多くのアフリカ人移民に死傷者が出るという、ぞっとするような犯罪を引き起こしたのはフーシ派のテロリスト民兵ですが、残念ながら、国際社会や国際人権団体は一部の及び腰の声明を出しただけで、あまり関心を寄せていません」とアル=エリヤニ情報相は話した。
「フーシ派民兵の犯罪と婦女暴行に対するこの恥ずべき不当な国際的黙認はこの事件に限ったことではありません。アデン国際空港での政府を標的にした攻撃計画をはじめとして、罪のない女性、子供、高齢者に対する冷血な何千件もの犯罪や婦女暴行を考えてみてください。」
外交官によれば、国連の専門家チームの調査で、12月30日の攻撃の責任はフーシ派にあったことが明らかになった。この攻撃では、少なくとも22名が死亡したほか、多くの負傷者が出た。サウジアラビア主導の和解の試みの一環として、新内閣の南部暫定協議会の参加者と合流するためにイエメン政府当局者が空港に到着した際に、ミサイルが着弾した。死者の中には、政府当局者と3名の赤十字国際委員会の職員がいた。
アル=エリヤニ情報相によれば、2000年代はじめにサアダ県にフーシ派が出現して以来、フーシ派は無防備な市民に対し、あらゆる蛮行を行ってきた。「殺害、誘拐、強制失踪、精神および肉体の拷問、隠された収容センターでの女性への暴行、公共・私有財産の略奪、反対派の家やモスクの爆撃、子供戦士の勧誘、市民と難民に対する徴兵の義務化、地雷・魚雷の設置、国際海路における商用船舶やタンカーへの攻撃」などだ。
サウジアラビは何度もフーシ派とイエメン政府の和解計画を主導してきた。直近では3月22日に、国連指導下での全国規模の停戦、サナア空港の再開、紛争解決に向けた新たな協議の呼びかけを試みた。
アル=エリヤニ情報相は、フーシ派に対するイランの影響力が計画の進展を滞らせていると確信している。
同情報相は、「サウジアラビアの政策は、イエメンに平和をもたらす努力に水をさすテヘランの役割とサナアの事実上の支配者であるイルローの役割を明確に白日の下に晒しました。イルローがフーシ派民兵の政治および軍事上の決定を支配しているのです」と語った。
協議には双方の協力が必要だ。同情報相によれば、イエメン政府は既に譲歩する意思を示している。同情報相は「国連の助けを借り、フーシ派と話し合いを進める中、イエメン政府は流血の事態とイエメン国民の苦しみに終止符を打つために多くの譲歩をしました」と述べた。「しかし、フーシ派はそのような譲歩を冷淡に受け止め、そこから搾取してさらに人を集めて人的損失の穴埋めをし、さらにはイランから弾道ミサイルやドローンなどの兵器を密輸して集め、段階的に軍事的再拡大を目論み、武力政変を押し付けようとしています。」
イエメンの戦争と人道危機に加え、国際社会は、FSOセイファーという緊急課題を抱えている。FSOセイファーはイエメンの西海岸に停泊し、放置されている石油タンカーだ。フーシ派が緊急の修理を許さなければ、船に積まれている4,800万ガロンの石油が紅海に流出する。そうなれば環境と漁業をする沿岸部の地域社会にとって大打撃だ。
サウジアラビアの外相であるファイサル・ビン・ファルハン王子はリヤドで王国の最新の和平政策を発表した際に、生態系への破壊的影響の可能性を視野に入れ、崩壊寸前の船を「時限爆弾」だと表現した。
アル=エリヤニ情報相は「サウジアラビア外相の説明は非常に的を得ています」と述べた。「フーチ派はFSOセイファーを時限爆弾として、また、政治的・物的収穫を得るために国際社会を脅し、圧力をかける手段として利用しています。 残念ながらフーシ派は目の前に浮かび上がっている環境、経済、人道の惨事には興味がないのです。」
アル=エリヤニ情報相は、イエメン政府のFSOセイファーの問題に関する懸念を表明し、「私たちは国際社会、とりわけ国連安保理加盟国に、フーシ派が直ちに無条件で国連との協議を実施し、技術チームがセイファーの状態を調査できるようにするため、フーシ派に圧力をかけるよう、求めています。紅海に深刻な結果をもたらし、かつ、地域と世界に影響を与えるような惨事を避けるためです」と語った。
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