
アラブニュース
アンカラ:トルコの民族主義者行動党(MHP)のデヴレト・バフチェリ党首(レジェップ・タイップ・エルドアン大統領の政治的盟友、MHPは大統領の連立相手)は31日、トルコ憲法裁判所の閉鎖を要求した。トルコに残る少数の民主主義的な組織や機関に対する攻撃を強めた形だ。
バフチェリ党首はまた、トルコの反体制派のジャーナリストも多数標的としており、氏名をリストアップして、彼らが最大野党・共和人民党(CHP)の支持者であると主張した。
バフチェリ党首の発言は、米国国務省による最新の年次国別人権報告書の発表と偶然タイミングが重なっている。同報告書は、トルコを恣意的な殺害、拷問、言論の自由の制限について批判し、同国で民主主義が弱体化し、人権も正しく尊重されていないと強調している。
トルコの外務省は、米国の報告内容を「根拠のない」「偏った」ものだとしている。バフチェリMHP党首の声明に対する政府の公式な反応はまだ明らかにされていない。
バフチェリ党首は、クルド系の政党・人民民主党(HDP)を非合法化しようとする起訴状を、手続き上の欠陥のために検察官に差し戻す、という憲法裁判所の決定に猛反発している。
さる3月17日、ベキル・シャヒン検察官は、トルコ議会で3番目の勢力を持つ政党HDPとその党員600人以上の活動を、非合法のクルディスタン労働者党(PKK)と関係している疑いで非合法化するよう求める起訴状を提出していた。
HDPの非合法化は、MHPの長年の目標であった。しかし、ディヤルバクルを本拠とする調査会社、ソシオポリティカル・フィールドリサーチセンターが3月18日から21日にかけて行った調査では、トルコ南東部と東部のクルド人が多数を占める地域の回答者の71.8%がMHPのこの動きに反対している。。
「憲法裁判所が、テロと分離主義に対するトルコの戦いに無関心で大きく距離を置いていることは、もう知られていることです」とバフチェリMHP党首は3月31日の書面による声明で述べている。「HDPの閉鎖と同様に、憲法裁判所の閉鎖もまた、今や先延ばしにできない目標となっているのです。」”
バフチェリ党首のこの声明に反応して、ジャーナリストのラギップ・ソイル氏は「バフチェリ氏の過去の実績から見ても、彼のことを決して甘く見てはいけません」とツイートしている。
ワシントン近東政策研究所のトルコ系学者であるソネル・カガプタイ氏は、バフチェリ党首は今生き残りのために必死なのだと捉えている。彼とMHPの支持基盤が、2017年にMHPと最大野党の共和人民党(CHP)から離脱した政治家たちが結成した善の党(IYI)に流れているためだ。IYIは、保守的、中道右派、世俗的またナショナリスト的な争点を掲げて、エルドアン政権に挑戦しようとしている。
「IYIが、メラル・アクセナー党首のリーダーシップにより、トルコのナショナリズム支持者の間でより大きな存在感を示しているため、バフチェリ氏は、クルド問題や憲法裁判所について非常に強硬な態度を取ることによって彼を支持する有権者層が去ってしまうことを防ごうとしているのでしょう」とカガプタイ氏はアラブニュースに語った。
IYIは、2023年に予定されている次の選挙でMHPから相当数の票を奪うものと予想されている。1日に結果が発表された世論調査では、MHPの9.4%に対して14%の有権者がIYI党に投票する見込みとなっている。議会で議席を得るには、政党は少なくとも10パーセントの票を獲得しなければならない。
カガプタイ氏によれば、バフチェリ党首は右翼の有権者層にアピールするため、クルド人とクルド的なものに対して今後さらに強硬な立場を取っていく可能性が高い。MHPは「灰色の狼」と呼ばれる極右武装組織の支持を受けており、その政治活動の歴史においては、クルド人や左派に強力に反対する中で暴力にも訴えてきた。
「しかし、トルコにおける政治的争点はもはやクルド問題に関する紛争が中心ではなく、エルドアン派か反エルドアン派かという点が中心になっています」とカガプタイ氏は言う。「そして、バフチェリ氏の支持基盤は明らかに、エルドアン大統領との選挙協力を承認していません。」
バフチェリMHP党首の最新の発言は、反対勢力の怒りを再び買うこととなった。与党から分裂して生まれた未来党の党首、アフメト・ダウトオール元首相は、「憲法裁判所を“閉鎖されるべき機関”だなどと宣言することは、民主主義に与えられる最大の打撃です」と非難している。
ダウトオール元首相はまた、ビデオ声明の中で、政党や政治家、活動家たちが憲法裁判所を支持する声明を発表しない限り「国民が誰も認めていないプロセスが、権威主義体制をもたらし、民主主義は完全に無視されてしまうだろう」と警告している。