
アラブニュース
アンカラ:夜間に公開された批判的内容の声明に署名した司令官らの最近の一連の逮捕劇により、この弾圧がトルコの「ユーラシア主義への移行」によるものかどうかという議論が沸き起こっている。
トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は月曜、104人の退役海軍司令官らが公開書簡を通じて「政治的クーデター」を図ったという疑いをかけた。この公開書簡は、政府が新たに建設した「カナル・イスタンブール」と呼ばれる長さ45キロの人工水路および、それがイスタンブール海峡の戦艦の通行を規制する1936年のモントルー条約にもたらす直接的影響について批判するものだ。
署名者のうち最も注目すべき名前は、議論の的となったトルコの過激主義的な海事政策「マーヴィ・ヴァタン」(『青い祖国』)の首謀者、セム・グルデニズ司令官である。
月曜から警察に身柄を拘束されているグルデニズはトルコ軍の有名なユーラシア主義派閥のよく知られた一員である。この派閥は反西側的戦略やロシア・中国との関係強化を支持している。
イスタンブールのサバンチ大学の政治学者ベルク・エセン博士は、司令官らの声明はエルドアン政権が国内での立ち位置の再考を図るという重大な分岐点で出されたものだと述べた。
「この数年間、トルコ政府は修正主義への道により広範囲の支持を得ようと、ロシアやカタール等の独裁国家との関係強化を図ってきた」と、博士はアラブニュースに語った。
非民主的なトルコ政治に対する西側の批判に対し、一部のトルコ政府高官らはユーラシア主義派閥に属する退役将校や元アナリストらの支持を取り付けてきたと、博士は述べた。
過去数年間にわたり、ユーラシア主義運動はトルコの政権をロシアや中国との関係修復へと動かしてきた。この一派は政府で著しい支持者を獲得しており、トルコの外交・安全保障政策の方向性を決定するまでになっていると噂されている。
トルコの極右勢力から生まれたユーラシア主義者らにおいて支配的なイデオロギーは、反西側的外交政策と同国内の超国家主義に基づくものだ。
ユーラシア主義者はNATO脱退およびEU加盟交渉の放棄を支持し、代わりに上海協力機構への加盟を支持している。
エセン博士によると、トルコ・EU間の合意に関する報告から判断して、トルコ政府の反西側政策はまもなく終焉を迎える可能性があるという。
「この流れを強化するため、エルドアンは最近のアメリカの対ロ攻勢を支持することでバイデン政権に取り入ろうと企んでいる。司令官らの声明はこのような地政学的な状況の変化を背景に出されたものだ」と博士は語った。
ウクライナ東部の国境地帯における直近のロシア軍の動きはバイデン政権の怒りを買い、アメリカ国務省がロシアに対しこの「挑発行為」について説明を求める事態となっている。
しかし、ロシアはカナル・イスタンブールプロジェクトを脅威と見ている。NATO加盟国が黒海とクリミア半島へ自由にアクセスできるようになるからだ。この地域にはロシアが2014年に併合した戦略拠点、セヴァストポリ港も含まれる。
よって、トルコが平和時および戦時下の海軍船舶の航行を規定するモントルー条約から脱退する可能性がある中、司令官らは新しい水路がロシアを怒らせるのではないかと恐れている。
黒海外の海軍戦艦の停泊日数および重量は同条約により規制されている。地域内に21日間を超えて停泊することはできず、船舶の最大重量は45,000トンまでとなっている。
しかし、月曜にテレビ放送された演説でエルドアンは、政府は条約からの脱退は検討していないと述べ、「将来必要が生じれば、国をよりよくするためにすべての条約を見直してもいいだろう」と続けた。
エセン博士によると、書簡の署名者が全員「マーヴィ・ヴァタン」を支持しているわけではなく、司令官らはエルドアンがモントルー条約を黒海へのアクセスを求め数十年間にわたり条約の弱体化を図ってきたアメリカとの交渉材料に利用することを恐れている可能性が高い。
「この数年間、ユーラシア主義者との間に暗黙の同盟関係の構築を図ってきたエルドアンはアメリカとの関係強化を狙う中、マーヴィ・ヴァタンに関係した退役将校らを始末するための格好の口実を得たのかもしれない」とエセン博士は語った。
一方、アンカラの中国大使館はアンカラのマンスール・ヤワシュ市長および優良党(Good Party)のメラル・アクシェネル党首を、1990年の中国軍のウイグル人虐殺を追悼するメッセージを書いたとして非難した。
大使館は「中国は相当の対応をとる権利を有する」とツイートし、さらに「新疆ウイグル自治区は中国の領土の不可欠な一部である。これは国際的に認められたことであり、議論の余地のない事実である」と続けた。
トルコの野党は、中国のウイグル人イスラム教徒弾圧に対して沈黙するトルコ政府を長い間批判してきた。