
ダウド・クッタブ
アンマン:中東問題の専門家たちは、アメリカ合衆国のロイド・オースティン国防長官のイスラエル訪問は、イスラエルとイランの緊張を緩和し、一般的にはイラン核合意と呼ばれている包括的共同行動計画(JCPOA)へのアメリカ政府の最終的な復帰を円滑化することが主目的だと考えている。
オースティン国防長官は、アメリカが「軍事的にイスラエルの安全が守られるようにすること」と、イスラエル政府との「戦略的パートナーシップ」の取り組みの推進も確約した。
この訪問の目的は、アメリカのJCPOA復帰を後押しすることだ、とアンマンを拠点とする経験豊かなアナリスト、ラミス・アンドニ氏がアラブニュースに語った。「ジョー・バイデン大統領は、(イスラエルの首相、ベンヤミン)ネタニヤフ氏に、イランの核合意への最終的な復帰を妨害するために、状況を悪化させる意図があるのではないかと懸念しています」と、アンドニ氏は語った。
ネタニヤフ首相は自らの将来しか気にしていないので、湾岸諸国に団結してイランに対抗させるために、イランの脅威を強調することに力を注ぐだろう、とアンドニ氏は付け加えた。
ビルツァイト大学のアリ・ジャルバウィ教授が、オースティン国防長官の訪問を、イスラエルをなだめようとする企てにすぎない、とアラブニュースに語った。
「新政権がイランの核合意に復帰することになるという事実に関して、彼らはイスラエルに安心してもらいたいのです」と、ジャルバウィ教授は語った。
退役したヨルダンのマーモン・アブ・ナウワー空軍大将が、この訪問の目的はイスラエルが湾岸地域での状況を悪化させないようにさせることだと語った。「バイデン政権の高官が初のイスラエル訪問をするという事実は、しかもその訪問者が軍人であるという事実は、イスラエルとイランの間で…緊張の高まる危険性に、オースティン長官が対処することを、政権が望んでいる何よりの証拠です」と、ナウワー空軍大将がアラブニュースに語った。
ハーバート・ケルマン紛争変革研究所の中東プログラムのディレクター、オファー・ザルツバーグ氏は、アメリカの方針の内部矛盾が、この訪問の特徴と言えるだろうと語った。「この訪問は、核の交渉を上手く進めるために必要な信頼の確立に、悪影響を与えるイランを狙った最近のイスラエルの攻撃に、アメリカが関与したというイランの認識を払拭しつつ、アメリカとイスラエル、湾岸諸国とイスラエルの防衛関係を強化することで、イスラエルを安心させることを目的としています」と、ザルツバーグ氏は語った。
ヨルダン大学戦略研究センターのムサ・シュテイウィ元所長は、イスラエルが正反対の方向に向かおうとしている時に、この訪問はイラン問題を解決しようとしている。「彼らはイラン核合意への復帰を円滑化するために、パートナーシップを推進する問題について話し合うでしょう」と、シュテイウィ元所長は語った。
テルアビブを拠点とし、アクシオスに寄稿するジャーナリスト、バラク・ラヴィド氏はオースティン長官の地位と、この訪問のタイミングの両方が重要だと主張した。
「これは、バイデン政権高官のイスラエルへの初訪問です。イランに関して言えば、オースティン長官は、イスラエルとアメリカの間で予想外の政策は一切扱わないようにするでしょうし、イランとの核の対話に関しても、イスラエル国民を安心させようとするでしょう。バイデン政権は、核の対話を妨害するようなことで、この地域の緊張が高まらないようにしたいのです」と、ラヴィド氏は語った。
軍事上の緊張への懸念には関係なく、真の問題が政治問題であることは、観測者たちにとっては明白だ。アブ・ナウワー空軍大将は、バラク・オバマ元大統領の政権が当初署名したイランの核合意が、最終的には再開されることになると考えている。「他にもっと良いものがない状況での唯一の選択肢です」と、アブ・ナウワー空軍大将は付け加えた。