
ガザ:貧困にあえぐパレスチナ自治区で新型コロナウイルス感染者が急増する中、病人や死亡者の増加でガザの病床は急速に限界近くまで逼迫していると、保健当局が発表した。
パレスチナの人々は、貧困、医療の不足、ワクチン懐疑論、新型コロナウイルスのデータ不足、ラマダン中の大規模な集会などが、4月13日の聖なる月の開始前に始まった感染者の増加を加速させるのではないかと懸念している。
ガザの保健当局者らは、集中治療室のベッドの使用率は、3月末の37%から上昇して約70%となっていると語った。死者はこの6日間に86人となり、前の週に比べて43%の増加となった。
「病院はほぼ満床です。完全に満床ではないとはいえ、この3週間で重症・重篤な事例が大幅に増加しており、それが心配です」と、世界保健機関(WHO)のパレスチナ自治区保健緊急事態チームの責任者であるアヤディル・サパルベコフ医師が述べた。
ガザの1日あたりの陽性率は、今週43%にまで達した。ただし、検査薬の不足で、既に症状が出ている人に対して検査が行われるのがほとんどなので、この数字は膨れ上がっている可能性があると、サパルベコフ氏は語った。
またサパルベコフ氏は、ガザには感染力の高い新型コロナウイルスの変異株を検査で特定する能力がないため、これらに関するデータがほとんどないと語った。
墓場も逼迫している。ガザ市の墓堀り作業員のモハメド・アル・ハリシュは、新型コロナウイルスの犠牲者を1日に最大10人埋葬しており、1ヶ月前の1、2人から数は増加していると語った。
「戦争中も大変でしたが、我々にとってはコロナウイルスの方がはるかに大変です」と、2014年のイスラエル・ガザ戦争の間、ずっと墓を掘っていたハリシュ氏は述べた。
「戦争時は、休戦中や停戦中に墓を掘ったり、死者を埋葬したりしました。コロナウイルスに休戦はありません」。
人口密度が高く、200万人のパレスチナ人が住むガザは、イスラエルが主導し、エジプトが支援する封鎖により、長年にわたって外の世界へのアクセスが制限されてきた。
両国は、ハマスに関する安全保障上の懸念を挙げ、資金や武器の流入を阻止したいとしている。
パレスチナ人は、封鎖は集団的懲罰であり、ガザの経済や医療インフラを麻痺させ、必要不可欠な物資や設備不足がパンデミックに対処する能力を阻害していると言う。
ガザの状況は、世界一迅速なワクチン接種の展開により、国民の53%以上がワクチン接種を完了するに至っているイスラエルとは全く対照的だ。
懸念が高まる中、ハマスは1週間にわたる夜間外出禁止令を発令することになり、ラマダンの夜の礼拝で何百人もの礼拝者が集まるモスクを閉鎖する予定だった。
しかし、ガザの住民の約49%が失業中で、5月22日に評議会選挙が予定されている中、ハマスは経済にさらなる打撃を与える可能性のあるより抜本的な対策の実施を控えている。
「追加の対策を講じる可能性はあるが、今の段階では全面的なロックダウンは想定していない」と、ハマスのエヤド・アル・ボゾム報道官は語った。
保健当局者らは、現在の感染者急増の要因には、マスク着用やソーシャルディスタンス確保のガイドラインの軽視、2月にガザのエジプトとの国境が開放されたことで、新しい変異株の流入を許してしまった可能性があること、などがあると言う。
ワクチンに対する疑念も根強い。エルサレム・メディア・・アンド・コミュニケーションズ・センターが行った4月21日の調査によると、ガザの人々の大半(54.2%)がワクチンを受けないと答え、これに対して受けると答えたのは30.5%、まだ決めていないと答えたのは15.3%だった。
2月以降、飛び地のガザは、ロシア、UAE、世界的なCOVAXプログラムから10万9600人分のワクチンを受け取ったにも関わらず、接種したのは3万4287人だけだ。
「医療スタッフを含む多くの人々がワクチンを接種したがらないのは、依然として重要な懸案事項だ」と、国連人道問題調整事務所は、4月12日の報告書の中で述べた。
ガザで初回のワクチン接種の対象になったパレスチナ人の1人、カセム・アブドゥル・ガフールは、自分と家族を守るために、接種を決意したと語った。
「ここの状況はひどいものです。以前は軽く考えていましたが、決して軽く考えてはいけないと、私は断言します」と、彼は述べた。
ロイター通信