
ブリュッセル:欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は月曜日、今月初めにトルコの大統領と会談した際、傷つき、孤独を感じたと述べ、女性であることを理由に粗末な扱いを受けたと語った。
フォン・デア・ライエン委員長とシャルル・ミシェル欧州理事会議長は、今月初めに緊張するEU・トルコ関係について協議するため、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とアンカラで会談した。しかし、3人の首脳のためにEUとトルコの国旗の前に用意された椅子は2脚だけだった。ミシェル欧州理事会議長がエルドアン大統領の隣の椅子に座った。
フォン・デア・ライエン委員長は、着席した男性たちを見ながら、「エッ」という声と、ガッカリしたようなしぐさで驚きを表現した。その後、彼女は男性陣から離れてベージュの大きなソファに腰かけた。
「私は欧州委員会の委員長になった最初の女性です。私は欧州委員会の委員長であり、2週間前にトルコを訪問した際には、相応な扱いを受けることを期待していました。欧州委員会の委員長としての扱いです。しかし、そうはなりませんでした」と、フォン・デア・ライエン委員長はEUの議員たちに語った。
「欧州の条約で、私が受けた扱いを正当化する理由を見つけることはできませんでした。ですから、私は女性であるがゆえに差別されたと結論づけざるを得ないのです」と語った。「もし、私がスーツを着て、ネクタイをしていたら、こんな扱いは受けなかったでしょう」
フォン・デア・ライエン委員長は、エルドアン大統領やミシェル議長を公の場で責めることはしなかったが、過去に行われた同様の会議で、椅子が足りないという経験をしたことは無いし、また多くの女性が同じような経験をしたと聞いたことも無いと述べた。
「女性として、そして欧州人として、傷つき、孤独を感じました。なぜなら、これは座席の配置やプロトコルの問題ではないからです。これは、私たちが誰であるかということの核心に関わることです。これは、私たち欧州連合が支持する価値観に関わることであり、いつでもどこでも女性が対等に扱われるようになるには、まだまだ遠い道のりを歩む必要があることを示しているのです」と彼女は語った。
トルコの大統領官邸で起きた明らかな儀礼上の失態は、世間を騒がせた。トルコ側は、EU独自のプロトコルが適用されたと主張したが、欧州理事会のプロトコル責任者は、準備のための視察の際には、事件が起きた部屋には立ち入ることができなかったと述べた。
ミシェル議長は月曜日、この件について謝罪した。本来ならば席を譲るべきだったが、トルコと他27カ国の関係が悪化していることもあり、より広範な外交問題に発展することを懸念したと語った。
フォン・デア・ライエン委員長は、幸いにも当時会議にはカメラが設置され、事の顛末は映像として世界中に流されたが、多くの女性が同じ幸運に恵まれているわけではないと述べ、コロナウイルスのパンデミックに見舞われている現在、隠れたところで女性や子どもに対する暴力が増加していることを指摘した。
また、EU議員の間でも、スピーチの巧みさを賞賛されているEU執行部のトップは、エルドアンとの会談で、トルコが女性に対する暴力に反対するための欧州評議会の国際人権条約である通称イスタンブール条約を放棄したことを問題として取り上げている。
フォン・デア・ライエン委員長は、「欧州評議会の創設メンバーの一ヵ国が脱退することは、ひどいシグナルです」としながらも、EU加盟国の中でも条約を批准していない国もあり、さらに脱退を検討している国もあることを指摘した。
「現在のような状況は受け入れられません。女性や子どもに対するいかなる暴力も犯罪です。私たちはそれを犯罪と呼び、正しく処罰しなければなりません」と彼女は語った。
フォン・デア・ライエン委員長は、EU自体がこの条約に参加することを望んでいるが、その動きは一部の加盟国によって阻止されていると述べた。同氏は、欧州委員会が年内には「オフライン、オンラインを問わず、女性と子どもに対する暴力を防止し、闘うための代替法案を提出する」と述べている。
AP