
アラブニュース
アンカラ:トルコは、急増する新型コロナウイルス感染を抑制する最後の手段として、29日の夕方から5月17日までの全面的ロックダウンに備えている。
同国で毎日報告される感染者数は3万7000人を超え、毎日平均350人以上が亡くなっている。
今回の制限期間中は、物流、食品、製造、運輸などの一部の例外を除き、ほぼ全ての職場が業務停止を余儀なくされ、経済的支援を受ける仕組みがなく、社会の中の資金的な余裕のない業界の間で、激しい怒りが巻き起こっている。
専門家や政治家は、トルコ政府に対して、中小企業や店舗経営者、日当に頼っている人々など、苦境にあえいでいる市民に金融援助を行う緊急措置を導入するよう求めている。
「政府は、既に玉ねぎやじゃがいも、パンが必要になる状態にまで放置してきた人々を、見捨てて飢えさせてはいけないのです」と、トルコの主要野党、共和人民党(CHP)のアリ・セケル議員が述べた。
また、親クルド派の国民民主主義党(HDP)のガロ・パイラン議員は、ツイートの中で次のように述べた:「人々はどうやって食べていけというのでしょう?請求書や家賃、借金の支払いはどうするのでしょう?この命令で、恐らく彼らのラマダン休暇は台無しです」。
最新の公式労働データによると、2月にトルコでは25万人の労働者が失業し、新型コロナウイルスのパンデミック期間中に、250万人以上の従業員が無給休暇を取ることを余儀なくされた。
サバンチ大学の政治学者、ベルク・エッセン博士は、アラブニュースに次のように語った。:「厳しい財政運営のトルコ政府は、パンデミック時に最も脆弱な立場に立たされてきた都市部の貧困層に対して、最小限の経済支援しか行っていません」。
「救済パッケージが伴わない今回の全面的ロックダウンの決定は、多くが政府の保護をほとんど全く受けられずに取り残されてきた低所得の国民に深刻な打撃を与えることになるでしょう」。
国際通貨基金(IMF)は最近、この世界的な保健危機の中で国内総生産の2.5%以下しか公的支援に充ててこなかったトルコが、国民に対する財政支援が最も少ない世界の上位3ヶ国にランクインしたと発表した。
「野党が支配する地方政府は、社会の貧しい層に社会的支援プログラムを届けることにより、政府が残した大きな空白を埋めようとしています」と、エッセンは述べた。
アンカラのマンスール・ヤヴァシュ市長は、新型コロナウイルス流行への対応で同市の住民から称賛され、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の対立大統領候補として浮上している。
26日には、同市長は1億トルコリラ(1220万ドル)相当の包括的な支援策を発表した。これを通じて、11万3000世帯に400リラのショッピングカードが提供され、1万8500人の事業主に400リラが支払われ、10万851世帯が完全な食料パッケージを受け取ることになる。
市の銀行口座が内務省によって封鎖されたことを受けて、市は昨年以降、困窮者のための経済支援パッケージを立ち上げるために、寄付を募ってきた。
今年これまでに、市は、住民の水、交通、食料ニーズを賄うため、26日間で1400万リラを集めた。
また、学生がリモート授業に出られるようにするため、市はパンデミック中に未払いを理由に電気を止められた世帯の電気代を支払う。
「与党(公正発展党)が生み出した障害や、限られた予算が理由で、CHPの市長たちは、ラマダン中に貧しい有権者に大きな救いをもたらすプログラムを実施するために、民間の寄付に頼ってきたのです」と、エッセンは付け加えた。
「政府の無能な経済運営やパンデミックへの不十分な対応と比較すると、これらの政策は野党の市長たちにとって非常に大きな選挙アピールになっています」。
「ヤヴァシュ市長とイスタンブールのエクレム・イマモール市長は、どちらもエルドアン大統領と肩を並べる国民的政治家になっています。この状況は、いずれかの人物を野党陣営内の指導的立場にまで大出世させ、エルドアンと戦う大統領候補にする可能性があります」と、エッセンは語った。
イスタンブールは、集中治療室のベッドの71%が新型コロナウイルス患者で埋まっており、トルコで最も深刻な影響を受けている都市の1つとなっている。