
バグダッド:それは想像を絶する恐怖の夜だった。バグダッド病院の集中治療室が炎に包まれたのだ – 耳をつんざくような悲鳴、猛火から逃れるため飛び降りて死んだ患者、そして人工呼吸器につながれたコロナウィルス患者を見捨てることを拒否し、愛する者の側にとどまる近親者たち。
壊滅的な火災の最初の瞬間を目撃したイラク人医師や医療スタッフ、救助隊員たちがその場面を詳しく語った。トラウマに襲われる多くの人々が、その夜は永遠に記憶に焼き付けられると述べている。
イブン・アル・ハティーブ病院のコロナウィルス病棟で土曜の遅い時間に発生した火災は数時間にわたって猛威をふるい、82人の命を奪って110人を負傷させた。死者の数はまだ増える可能性があり、負傷者の多くが重体となっている。
当局によれば、火災は酸素ボンベの爆発が原因になったという。数日が経過し、ボンベが爆発した原因について憶測が飛び交っているものの、当局は正式な調査結果をまだ公表していない。
数十年におよぶ独裁政治や戦争、宗派間対立に苦しめられ、今もパンデミックへの対処に苦しんでいるイラクは、いまだにショック状態の中にある。保険当局の高官たちが、職務怠慢の嫌疑の中で解雇や停職の処分に付された。
医師のサバ・サメルと、救急医療隊員のユーシフ・フセインは、犠牲者たちを助けようとして最初に炎の中へ突進した者たちの1人だった。彼らは、病院の中でも特に避難が困難だった場所が、COVID-19病棟だったと言う。
「燃えやすい酸素ボンベのせいで、火の広がり方が非常に速かった」と、サメルは述べた。「部屋の壁にはプラスチックとナイロンが埋め込まれており、それに火がついた」
彼は建物の中にいる時、毎分のようにボンベが次々と爆発し、炎が病院の窓から吹き出したのを覚えていると話した。少なくとも20回は爆発が起こったという。
サメルや他の救助隊員たちは、患者の多くへは近づくことができなかったと述べた – 病院の2階から叫び声や、助けを懇願する声が聞こえたという。
看護師を務めていてCOVID-19に感染したある患者は、窓から飛び降りて亡くなり、その体は炎に包まれた。後で彼の黒焦げになった遺骨が病院の中庭から回収されたと、サメルは述べた。
それ以来、多くの人たちが病院の安全対策の目に余る欠陥を指摘してきた。消火装置は機能せず、非常口は不可解なことに閉鎖されていた。
カマル・アル・ルバイエ医師(28才)は出火当時、酸素吸入を受けるCOVID-19患者でいっぱいの、病院2階のICU病棟にいた。彼は患者の1人が亡くなったことを受け、家族に哀悼の意を伝えようとしていた時に、最初の火花を見た。
同医師は、昨年10月に最初のローテーションでこの病棟に来て以来、ずっと酸素ボンベを怖いと思っていたと言う。呼吸集中治療病棟の中の各部屋には通常、十本以上のボンベが保管されており、患者一人あたり一日に2~3本が必要である。同医師によれば、病棟には当時、30人の患者がいた。
患者の看護が毎日続く中で、それぞれのボンベが正しく機能しているかチェックするのに十分な病院スタッフがいなかった。アル・ルバイエ医師によれば、訓練を受けていない患者の家族が、その作業を任せられることがよくあると言う。この病院で働いたことのある他の医師たちも、同じことを述べた。
AP