
ラマラ、パレスチナ自治区:パレスチナのマフムード・アッバス議長は30日、イスラエルが併合した東エルサレムで投票できることが保証されるまで、選挙は延期されたと述べた。2006年を最後に選挙が実施されていない社会で、選挙がさらに延期された。
パレスチナの派閥が集まった会議でアッバス氏は、東エルサレムでの選挙運動と投票を許可するようイスラエルに働き掛けるよう国際社会に要請したと述べた。東エルサレムはイスラエルによって1967年に併合されたが、パレスチナは東エルサレムを将来の首都だと主張している。
しかしアッバス議長は、5月22日に予定されていた議会選と7月31日に予定されていた議長選の前に、イスラエルがエルサレムに関して何の保証もしなかったため、投票を進めることはできないと述べた。
「我々は、エルサレムに関して保証が得られるまで選挙を延期すると決定した」と85歳のパレスチナの指導者は述べた。
イスラエルに占領されたヨルダン川西岸地区および封鎖されたガザ地区にいるパレスチナ人は、15年ぶりの選挙が、破壊された政治システムの改正を促す可能性があると期待している。
アッバス氏率いる、宗教色のないファタハは、ヨルダン川西岸地区を支配し、その長年のライバルであるハマスは、イスラエルに封鎖されたガザ地区を支配する。この両者の間で合意があり、今回の選挙は求められた。
ハマスは28日、「選挙を延期しようとする試みは、どんなものでも拒絶する」と発表した。
延期されたことで、政治的に分裂したパレスチナ社会の緊張が高まる危険性があり、ラマラの抗議者らはアッバス氏の動きを即座に非難した。
抗議者のTariq Khudairi氏はAFPに対し、「選挙がどういうものか知らない若い人たちがいる」と語った。
「この世代には指導者を選ぶ権利がある」と同氏は語った。
パレスチナ人はエルサレムでもイスラエル警察と衝突した。警察は、城壁に囲まれたエルサレム旧市街の外で催涙ガスを使って抗議者らを解散させた。
分裂した派閥によってファタハの将来が脅かされているため、アッバス氏は時間稼ぎのためにエルサレム問題を利用するだろうと、同氏を批判する人たちは非難している。
西側諸国のほとんどがテロリスト集団と見なしているハマスは、ファタハよりうまく組織化されており、ヨルダン川西岸地区で支持を得る上で有利な立場にあるとみられていた。
アッバス氏はファタハの分派からの挑戦にも直面している。パレスチナの象徴的指導者 Yasser Arafat氏のおいのNasser Al-Kidwa氏が率いる分派や、影響力があり、亡命中の、ファタフの元治安担当国務相Mohammed Dahlan氏が率いる分派などだ。
パレスチナの前回の選挙では、東エルサレムの住民はこの地区の外れで投票し、数千人が郵便局で投票したが、これはイスラエルが同意した象徴的な措置だった。
イスラエル外務省は今週、選挙は「パレスチナの中の問題であり、イスラエルには選挙に介入する意図も、妨害する意図もない」と発表した。
だがイスラエルは、同国の「不可分の首都」とし、パレスチナの全ての政治活動を禁止しているエルサレムでの投票についてはコメントしていない。
エルサレム問題に関しては、イスラエルには現在政府がないため、ガイドラインを提供できないというメッセージをイスラエルから受け取った、とアッバス氏はPLOの指導者らに話した。
イスラエルは、3月23日に行われた選挙で決着が付かなかったため、まだ政府が作られておらず、史上最悪の政治危機の中にある。
アッバス氏は、このイスラエルのメッセージを「ばかばかしい」と退けた。
パレスチナ人ジャーナリストで、アッバス氏を批判するNadia Harhash氏は、30日の発表の前に記者らに対し、延期を正当化するためにエルサレムを利用することは「パレスチナ自治政府にとって、決して賢明な行動ではない」と述べた。
反アッバスの派閥の選挙候補者であるHarhash氏は、イスラエルにパレスチナ人の選挙権に対する事実上の拒否権を与えることになると主張した。
延期することで、「(イスラエルの)占領の拒否権」に降伏することになる、とハマスは発表した。
エルサレムでは週末、晩のラマダンの祈りの後、旧市街の広場に集まる権利をめぐってパレスチナ人とイスラエル警察が衝突し、緊張が高まった。
数日にわたる騒動で数十人が負傷した後、イスラエル警察はダマスカス門の階段広場を封鎖していたバリケードを撤去し、パレスチナ人が集会を再開できるようにした。
しかしアッバス氏の発表後の29日、より激しい衝突が再開し、2人が逮捕された。エルサレム警察は発表した。
今回の選挙は、ハマスとファタハがある程度まとまって決まった取り組みだとみられている。イスラエルの主要目的を米政府が支持したドナルド・トランプ氏の4年間の後、ジョー・バイデン大統領の下で行われる可能性がある新たな米主導の外交の前に、パレスチナの統治に対する国際的な信頼を高めるのが目的だ。
アッバス氏は、今回の選挙によってファタハとハマスが権力を分かち合い続けられることを望んでいたが、強力な分派の出現や、同氏のリーダーシップに批判的な新たなグループの台頭に脅威を感じていた、とアナリストらは主張した。
アッバス氏に挑むのは、Kidwa氏が率いる「自由リスト」などだ。イスラエルの刑務所で複数の終身刑に服している、人気のある指導者Marwan Barghouti氏が支持している。
ファタハの元治安担当国務相Dahlan氏も脅威となっている。同氏はコロナウイルスのワクチンをガザ地区に持ってきて、ガザ地区とヨルダン川西岸地区に財政援助を行った功績があると信じられている。
AFP