4月21日、UAEはファイザーとビオンテック両社の開発による新型コロナワクチンの使用を承認した。アブダビでは、昨年の12月以来、一般市民が接種を受けられるワクチンはシノファーム製のものだけ、という状態が続いていた。
「UAEは、新型コロナウイルス流行との戦いにおいて、多くの初めての試みを実現し、世界の最前線に立ってきました」と、G42 Healthcareのアシシュ・コーシー(Ashish Koshy)CEOはアラブニュースに語った。
「UAEの挑戦の範囲は幅広く、最大規模の試験・診断ラボの設立から、不活化コロナワクチンの中東地域初の第IIIフレーズ臨床試験、最前線の医療従事者を保護するためのタイムリーな緊急使用許可、そして国の人口の52パーセント以上にワクチンを既に接種している現在進行中の全国的なワクチン接種プログラムにまで及んでいます」とコーシーCEOは説明している。
「これは世界的にも優れた水準であり、UAEは人口100人あたりワクチン接種を受けている人数で世界の上位3か国にランクされています。」
G42 Healthcareは、UAE保健省の主導により、2019年12月に設立された。同社は、深センに本拠を置く中国のゲノミクス企業BGIと提携してUAEに新型コロナウイルス用の検査ラボを建設し、イスラエルの業者への外注を通して新型コロナ感染症と戦うための技術を開発してきた。
BGIは、1999年に北京ゲノミクス研究所という名称で設立された。同研究所は、ヒトDNAの最初の包括的なマッピングを作成するための世界的なプロジェクト「ヒトゲノム計画」に貢献するよう、国の支援を受けたものだった。
G42による新型コロナウイルスのゲノム配列決定研究は、UAE保健省の監督により2020年5月から6月の間、アブダビで収集された1,067の鼻腔スワブ検体を用いて行われた。
この研究で、UAEにおけるウイルスの遺伝的変異と拡散パターンが明らかにされた。調査結果を活かして、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)テストの設計を改善して診断の精度を向上させ、新しいローカル変異体を検出が可能になるものと期待されている。

「UAEは、新型コロナウイルスの流行との戦いにおいて、多くの初めての試みを実現し、世界の最前線に立ってきました」と、G42 Healthcareのアシシュ・コーシーCEOはアラブニュースに語った。(AN Photo、レベッカ・アン・プロクトー撮影)
「私たちの全体的な成功の重要な要因の1つは、官民のパートナーシップモデルおよび各分野で最高の専門家たちによる国際的な協力を効率的かつタイムリーに実現することで、課題に対処するだけでなく、国民の健康を将来にわたって守っていく能力を養成できたことです」とコーシーCEOは述べた。
「例えば、新型コロナウイルスの変異株に関する研究は、感染症流行の管理と効果的な公的医療システムに関する知見の増強という面でも役立っています。」
また、最近の英国、南アフリカ、ブラジルからのより感染性の高いコロナウイルスの変異株 ― 特に懸念されるブラジルからのP1変異株は、現在接種可能なワクチンに対して強い耐性を持っているかも知れないと科学者が恐れている ― の広がりの中で、変異株に関する研究はひときわタイムリーなものとなっている。
「この研究の分析により、UAEに固有のいくつかの変異株と、流行の第一波におけるウイルスの拡散パターンが明らかになりました。第二波の検体の分析はまだ全国規模で進行中です」とG42の最高研究責任者であるワリード・アッバース・ザーヘル博士はアラブニュースに語った。
「この研究および類似の研究の結果は、通常、診断の精度と感度の両方の改善につながります。今回の研究はまた、持続可能なスクリーニング方法と、将来の発生に備える国としての態勢作りをどう支援すべきかについての、新たなの知見を提供するものでもあります。」
G42は、UAEおよび中東の他の地域でのシノファームの第III相臨床試験実施の際の調整も担当しており、2020年7月に開始された治験には、125カ国から43,000人以上が自主的に参加した。G42はアラブニュースに「選択された人々のグループが、免疫系の反応を観察するため、3回目の接種を受けているところです。」とコメントしている。

ドバイのグル・ナーナク・ダルバール・グルドワラで、医療従事者が中国のシノファーム製のコロナウイルスワクチンを接種している。(2021年2月28日、ファイル写真:AFP)
G42はまた次のように付け加えている。「UAEで進行中の研究は、シノファームとUAE当局の間の緊密な協議により行われており、科学的安全プロトコルに基づいたものです。研究はまた、新型コロナウイルスの流行が続く中で、公共の安全へのリスクを軽減する努力の一環でもあります。」
わずかな変化や突然変異を理解することこそが、最終的にはウイルスを打ち負かし、感染症の流行を終わらせ、待望の各種制限の解除を実現するための鍵となる可能性があるのだ。
「ウイルスは突然変異によって絶えず変化しており、新しい亜種が時間とともに出現することが知られています。これは、医師たちの治療を常にかいくぐろうとするウイルスが用いる手段のひとつです」とザーヘル博士は述べている。
「私たちの研究や類似の研究は、感染症の症状、およびウイルスの拡散に症状がどのように影響するかを理解するのに役立ちます。ウイルスの小さな突然変異は、通常はワクチンに影響を与えません。しかし、最近の変異およびワクチンの有効性に対するそれらの影響は、シノファームのものを含む各社のワクチンについてまだ研究中です。」
遺伝子解析は急成長している産業だ。G42では、新型コロナウイルスの研究に加えて、個人のDNAを検査し、潜在的な「問題領域」について「スクリーニング」する一般対象のゲノミクス試験も行っている、とG42の子会社・バイオジェニックスラボ(Biogenix Labs)の研究所ディレクターで臨床病理医のサリー・マハムード博士はアラブニュースに語った。
「一般対象のゲノミクス試験を用いることにより、各人がライフスタイルに基づく病気に気を配り、特定の遺伝性疾患の発症につながる可能性のある潜在的な危険因子についての知識を得ることができるのです」とマハムード博士は説明した。
私たちのDNAを理解することは、現実に、病気を予防または管理するのに役立つということなのだ。
新型コロナウイルスの流行が生物学における最も根本的な青写真の理解を加速するにつれて、科学と医学の双方に新たな機会の領域が開かれつつある。アラブ地域もそこに貢献していくことになるだろう。
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ツイッター: @rebeccaaproctor