


テルアビブ:ロケット弾と空爆の激しい応酬や、ユダヤ人とアラブ人が混在する町での暴動は12日、イスラエルとパレスチナ人の間での死者を伴う暴力が「全面戦争」に発展するのではないかという不安を煽ることになった。
イスラエルのベニー・ガンツ国防相は、停戦を検討する前に、ハマスやその他のガザのイスラム過激派グループへの攻撃をさらに強化し、「完全かつ長期的な静寂」をもたらすと宣言した。
「これは始まりに過ぎない」とベンヤミン・ネタニヤフ首相は警告した。「彼らが夢にも思わないような打撃を我々は与えるのだ」。
ガザの過激派は10日以降、1000発以上のロケット弾を発射したと、イスラエル軍が語った。同軍は、海岸沿いにある人口の多い飛び地ガザのイスラム教グループに数百回の空爆を行っている。
この7年間で最も激しい戦闘で、10日以降、ガザでは子ども14人を含む少なくとも56人が、イスラエルではイスラエル軍兵士1人とインド人1人を含む6人が死亡した。
ヨルダン川西岸での衝突では、パレスチナ人3人が死亡した。また、少なくともパレスチナ人230人、イスラエル人100人が負傷している。
この流血の惨事は、イスラム教徒とユダヤ教徒の両方にとって神聖な場所であるエルサレムのアル・アクサモスクの複合建造物で週末に起きた騒動が発端となった。
世界の大国がこの危機に対して懸念を募らせていることを表明する中、国連の中東担当特使であるトル・ウェネスランド氏は「我々は全面戦争に向かってエスカレートしている」と警告した。
国連安全保障理事会は、再び緊急会合を開いたが、イスラエルの同盟国である米国の反対により、共同声明には合意しなかった。
I am urging Israel and the Palestinians to step back from the brink and for both sides to show restraint. The UK is deeply concerned by the growing violence and civilian casualties and we want to see an urgent de-escalation of tensions.
— Boris Johnson (@BorisJohnson) May 12, 2021
ネタニヤフ首相は、ユダヤ人とアラブ人が混在するイスラエルの都市ロードに非常事態宣言を出した。同市では警察が、「一部のアラブ系住民の間で大規模な暴動が勃発した」と述べ、当局がその後、夜間外出禁止令を発令した。
パレスチナの旗を掲げたデモ隊が車やシナゴーグを含む建物を燃やし、イスラエル警察と衝突し、ユダヤ人とアラブ人が混在する複数の町でユダヤ人運転手を襲撃する中、市民の不安が拡大する懸念がある。
イスラエルのルーベン・リブリン大統領は、珍しく強い口調で、これは「扇動され、血に飢えたアラブ人の暴徒」が人々に怪我を負わせ、ユダヤ人の神聖な場所を攻撃した「ポグロム」だとして非難した。
リブリン氏は、イスラエル国民は「準備と武装を整え、しっかりと断固とした姿勢で、我々の故郷を守る準備をする」必要があると述べた。
ハマスやイスラム聖戦を中心とするパレスチナ人グループは、1000発以上のロケット弾を発射したとイスラエル軍は発表し、そのうち数百発はテルアビブに向けて発射され、同市では一晩中空襲警報が鳴り響いた。
このうち850発はイスラエル国内に着弾したり、イスラエルの防空システム「アイアンドーム」で迎撃されたりし、残りはガザ地区内で爆発したと、軍は発表した。
イスラエルは、ハマスが支配し、イスラエルが封鎖を行っている人口200万人のガザ地区に対して、数百回の空爆を行い、軍が「テロ」施設と呼ぶ場所を標的とした。
ハマスは、ガザ市の軍幹部バッセム・イッサ氏を含む複数の軍の幹部司令官が、イスラエルの空爆で殺害されたと発表した。イスラエルの国内治安当局である「イスラエル総保安庁」も、他に3人のハマス幹部を殺害したことを認めた。
同組織の指導者であるイスマーイール・ハニーヤ氏は、攻撃を激化させると迫り、「もしイスラエルがエスカレートさせたいのなら、我々にはその準備ができている」と警告した。
イギリスのボリス・ジョンソン首相は、双方に「瀬戸際から一歩下がる」よう求めた。フランスのジャン・イヴ・ル・ドリアン外相は、新たな中東戦争を回避するために「あらゆる措置を講じなければならない」と述べた。
アントニー・ブリンケン国務長官は、米国の特使が「暴力の段階的緩和」を求めるため、イスラエルとパレスチナの指導者のところへ面会に訪れると発表した。
ガザ市では、イスラエル軍の空爆により、ハマスが住宅として使用していた12階建てのビルが破壊されて、人々が瓦礫をかき分けていた。ここは、複数のハマス幹部の事務所があったことでも知られる。
ガザ北部では11日、イスラエル軍の空爆により一家5人が死亡した。この中には、当時わら袋を詰めていた幼い兄弟、イブラヒムとマルワンも含まれていた。
「笑って楽しんでいる時に、突然、爆撃され始めたんです。周りのものは全て燃えてしまいました」と、同じくイブラヒムという名のいとこがAFP通信に語った。
「いとこたちに火がつき、バラバラになるのを目にしました」と、14歳の彼は語り、泣き崩れた。
イスラエル中部の都市ロードでは12日、男性1人と少女1人がガザからのロケット弾攻撃で死亡した。イスラエルは、死者の1人は16歳のアラブ系イスラエル人のナディン・アワドさんであることを確認した。
彼女のいとこのアフマド・イスマイルさんは、公共放送カンに対し、ナディンが52歳の父親ハリル・アワドさんと一緒に殺害された時は、近くにいたと語った。
「私は家にいて、ロケットの騒音を聞きました」と、イスマイルさんは語った。「本当に一瞬の出来事でした。どこかに逃げようと思っても、安全な部屋はありませんでした」。
テルアビブ近郊のリション・レジオンにロケットが着弾し、イスラエル人女性1人が死亡した。また、ハマスが「地獄にする」と脅迫していたガザ近郊の町、アシュケロンでは、11日に武装勢力が発射したロケット弾によって女性2人が死亡した。
この危機は先週の金曜日、数週間にわたる緊張状態が沸点に達し、エルサレムのアル・アクサモスクで、イスラエルの機動隊がパレスチナ人の群衆と衝突して勃発した。
以降、東エルサレムでは毎晩のように騒動が勃発し、パレスチナ赤新月社によると、900人以上のパレスチナ人が負傷している。
この混乱の要因には、エルサレムのシェイク・ジャラー地区からのパレスチナ人家族の立ち退きが迫っていることへの怒りがある。
イギリスや南アフリカ、また、クウェートやレバノン、オマーン、パキスタン、チュニジア、トルコなどのイスラム教徒が大半を占める国々を含め、世界中でパレスチナ人に連帯する大規模な抗議活動が行われている。
AFP通信