
ミシガン州:フォード社の主力ピックアップトラック『F-150』に電気自動車(EV)版の新型モデルが登場。アメリカがガソリン車からEVへの移行を早めるきっかけとなる可能性もある。
フォードの社長兼最高経営責任者(CEO)に最近就任したばかりのジム・ファーリー氏は、全米でトップクラスの販売台数を誇るF-150のEV版発売が、フォードと自動車業界にとり重大な分岐点になるという。『F-150ライトニング』と名付けられたこの新型トラックは、来年の春までにショールームに登場する予定だ。1回のバッテリー充電で最大300マイル(480km)走行し、最大1万ポンド(4500kg)のトレーラーを牽引できる。
それでも、EVF-150に社運を賭けるフォードにリスクがないわけではない。フォードはF-150ライトニングの開発に数百万ドルを投じた。しかし現在、アメリカ自動車市場でEVが占める割合はわずか2%にすぎない。「トラック所有者の多くが、ガソリン車からEVへの移行には消極的です。さらに生産開始から数カ月、下手すると数年は自動車メーカーがEV用バッテリーとバッテリー製造に必要な希少金属を十分調達できない可能性があるのは否定できません」とファーリーCEOはAP通信のインタビューで語った。
F-150ライトニングの基本価格はおよそ4万ドルだ。
F-150のEV版とガソリン車の価格差について質問されると、ファーリーCEOは次のように答えた。「相当近い価格帯になりそうです。仕様によっても変わりますが。ライトニングはラプター(F-150の高性能ガソリン車版)よりもスピードが出ます。ライトニングなら停電時には3日間家に電力を供給できますし、車内コンセントから電化製品に十分な電力を供給できます。内部には最新テクノロジーを搭載し、無線アップデート機能により常に改良されます」
世界では、急速に電気自動車への移行を進めている。ファーリーCEOは「移行が進むかどうかは、政府の支援次第でしょう。購入時の補助金に加えてインフラ(EVスタンド)の整備が鍵となります」と考えている。
「フォードには現時点で1台あたり7500ドルの助成金が支払われています。ですから、政策がどう変わるか、さらに購入者に対する補助の金額がどの程度増えるかどうかで変わってきます。ヨーロッパでは政策で電気自動車の普及を進めています。中国政府も急速に普及を促す政策を整備しています。フォードの『マッハE』(電動SUV)は完売しました。西海岸では、状況がすでに急速に変化しています。それが全米に広がるのは時間の問題でしょう」
世界的な半導体不足が自動車産業に与える影響について質問されると、ファーリーCEOはこう答えた。「最近では部品に占める半導体の割合が高まっています。半導体のような部品を常にタイムリーに仕入れるのは厳しい状態です。サプライチェーンのあり方が根本から変わっています。半導体メーカー側には前向きな兆候が複数見られます。大きな変化としては、日本のルネサスの工場(火災で操業停止になった)が生産を再開しつつあることです。フォードとしてはルネサスの工場が完全に元の生産能力にまで回復するにしたがって、ずいぶんと安心できるようになるでしょう。したがって、半導体供給不足の問題は解決していません。今年後半の状況に対する予測を述べるのは控えます」
AP通信