
ポール・イドン
アルビル、イラク:イランの支援を受ける武装勢力が米国および連合軍の兵士に与える無人機の脅威は高まっている。特にイラン政府の能力が高まっているにもかかわらず、このような脅威に対する防御は限定的だ。これは、中東を担当する米軍の司令官が最近イラクを訪問した際に伝えた明確なメッセージだ。
海兵隊のフランク・マッケンジー大将の警告は、この地域のイランの代理人や同盟を結んだグループが、連合軍の陣地や米国の地域のパートナーに対して何度も無人機攻撃を行ったことを受けて発せられたものだ。これを、多くの人は戦略的パワーバランスが変化する兆候だと考えている。
「我々は、無人機に対してより効果を発揮できるようになるための技術的な対策を見つけるために懸命に取り組んでいる」と米中央軍(CENTCOM)司令官は述べた。「我々は、ありとあらゆるものを受け入れている。軍は一生懸命取り組んでいる。それでも、目標には到達していないと思う」
1月には、イラクから発射された無人機によるサウジアラビアへの攻撃があった。4月には、爆発物を積んだ無人機が、いつもは安全なクルディスタン自治区内にあるアルビル国際空港の米軍基地を攻撃した。大規模な火災が起こり、建物が損傷した。
これらの攻撃で多くの犠牲者が出ることはなかったが、脅威の性質が進化していることと、イランの無人機の能力が急速に進歩していることが明らかになった。
イランの支援を受ける、イエメンの武装勢力フーシ派は、サウジアラビアの民間・軍事インフラに対して、徘徊型兵器(自爆型ドローン)をよく使っている。これらは、主にイランの設計に基づいた部品でできているのが特徴のようだ。
ガザ地区の紛争では、パレスチナの組織ハマスがイスラエルに対して神風ドローンを使ったが、これらにもイランの設計との類似点が多数あった。
イランがハマスに無人機を提供している、とイスラエルが主張した数日後に、イランの無人機を製造する工場が入っている建物で大きな爆発が起きたのは、単なる偶然の一致ではないようだ。
日曜日に起きた爆発で、イスファハンの石油化学工場では少なくとも作業員9人が負傷した。イラン航空機製造工業会社は、イラン人や親イラン勢力のためにさまざまな航空機や無人機を製造しており、Sepahan Nargostar化学工業が所有する建物の中にある。
爆発の原因や、被害を受けた工場の詳細が第三者に確認されることはなかった。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が木曜日に、イランが製造し、イラクかシリアから飛来した、と同氏が言う無人機の部品を展示したことを、アナリストらは指摘した。
最近のロイターの報道によると、イランはイラクでの発射体の使用に関する戦略を変更したようだ。 米軍や連合軍に代理攻撃を仕掛けるのに、大規模な既成のシーア派民兵グループに頼るのではなく、かなり小規模だが、イラン政府に完全に忠実な民兵グループに頼るようになっている。
報道によると、イラン政府は昨年、上記のような民兵グループの戦闘員250人をレバノンに連れて行った。そこで彼らは、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)の教官から無人機の操縦やロケット弾攻撃の訓練を受けた。その結果、イラク国内外で無人機攻撃が相次いでいる。
専門家らによると、この種の兵器は、高度な防空システムを運用している米軍でも防御が困難な場合があるという。
「イエメンや最近のガザでの紛争で、兵器化した無人飛行システムを使ったのは、今後の紛争における無人機使用の計画を立てるためだ」と、南デンマーク大学戦争研究センターのジェームズ・ロジャース博士はアラブニュースに話した。
「複数の無人機とミサイルを同時に送り込むことができるということは、最も高度な防衛システムでも無力化され、突破される可能性があるということだ」
最近、中東の非国家主体や民兵の間で武装無人機が拡散しているが、イランが関与しているのは明らかだ。ロジャース氏が指摘しているように、無人機がもたらす距離や関係否認の能力は、イランの兵器庫の中の「貴重な道具」になっている。
「イランの無人機計画は、洗練された国産無人機で革新し、それを地域の味方に提供している」と同氏は述べた。
「このようにイランの無人機の技術が拡散しているため、この地域で破壊的な無人機攻撃を行った人物や、責任を負うべき人物を特定するのはほぼ不可能だ。ますます難しくなる一方だろう」
イランが提供している設計は、イラン政府独自のモデル、特にアバビルシリーズと酷似している。これらの無人機のバリエーションは、フーシ派やハマス、そしてイランの主要な地域の代理人である、レバノンのヒズボラの兵器庫に現れている。
この無人機の技術には、簡単に分解し、こっそりと運び、目的地で再び組み立てることができるという付加的な利点がある。
例えば、匿名のイラク高官がAP通信に語ったところによると、1月にリヤドを標的にした無人機は、「イランから部品の形で」イラクの民兵に届けられ、「イラクで組み立てられ、イラクから発射された」という。
問題になっている兵器の効果は、最近の商業用ドローンの技術の進歩によって増強されている。
「現在、いくつかの非国家主体がイランの設計を持っている。それらは、商業的に利用可能な技術を搭載した独自のシステムを構築でき、それを味方に供給することができる」とロジャース氏は話した。「要するに、無人機の秘密はばれていて、脅威が広がっている」
イランは、敵の弱点を見つけたことをよく分かっていて、その脆弱性を積極的に利用している。
バイデンチームは就任前から、イランとともに包括的行動計画に復帰する道を見つける決意を声高に表明していた。この表明した目的は、その後、ウィーンでの間接協議に姿を変えた。
戦略・防衛の専門家らは、イランは複数の地域で、計算された挑発で米政権を試していると考えている。これは、ジョー・バイデン大統領の力を見極める取り組みでもあり、核交渉における影響力を得る方法でもある。
ニコラス・ヘラス氏は、ニューラインズ・インスティテュートの上級アナリストで、「国家の回復力と脆弱性」プログラムの責任者であるが、同氏によると、イランの国防機関は「無人機部隊を活用し、より技術的に進んだライバルの国家主体に非対称な挑戦を提示する戦略に傾いている」という。
「イランは、空中・海上の無人機の大群というコンセプトで、クラス最高の能力を構築している。これは、中東に配備されている米軍を守る義務がある、米国の国防・諜報当局者を悩ませるスキルセットだ」と、ヘラス氏はアラブニュースに話した。
「IRGCは、無人機戦の戦術・技術・手順を非国家主体に広めた世界的リーダーだ。それらは、イランの敵に対して高度の慎重を要する攻撃を実行できる一方で、イランに、イランが攻撃を命じたことを否定する能力を与えている」
IRGCが好んで使っているのは、それぞれの目標に突っ込み、衝撃で爆発する神風ドローンだ。組み立てや操作が簡単で、大群による圧倒的な攻撃にも使いやすく、対抗するのが非常に難しいからだ。マッケンジー氏が考えているのは、こうした無人機である可能性が高い。
「IRGCがイランのパートナーや代理人に教えているドローン戦法に対して最もうまく機能する対空システムはない」とヘラス氏は述べた。
「イランのネットワーク化されたドローン戦に対抗するには、工作員や無人機製造所を特定するための活発な無線諜報と、それらが行動を開始する前にたたくための迅速な対応攻撃が必要だ」
無人機が米国、ひいては米国の地域のパートナーに与える脅威は、米国の「永遠の戦争」を終わらせ、ロシアと中国の脅威に焦点を当てるという目標を表明した政権でさえ無視できないものとなっている。
「これらの中小型(無人機)は、我が国の軍隊や、パートナー・同盟国の軍隊にとって新たな複雑な脅威となる」と、マッケンジー氏は4月に議会で述べた。
「朝鮮戦争以来初めて、我々は完全な制空権を持たずに活動している」
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Twitter: @pauliddon