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ダーイシュ戦闘員家族らのシリアからの帰還が、イラクのモスルに恐怖を掻き立てる

ダーイシュ組織との繋がりを疑われる何十世帯ものイラク家族のシリアからモスルへの帰還が、ダーイシュ支配の恐怖の中を生き延びてきた地域住民たちの間に恐怖を掻き立てている。(資料/AFP)
ダーイシュ組織との繋がりを疑われる何十世帯ものイラク家族のシリアからモスルへの帰還が、ダーイシュ支配の恐怖の中を生き延びてきた地域住民たちの間に恐怖を掻き立てている。(資料/AFP)
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29 May 2021 09:05:03 GMT9
29 May 2021 09:05:03 GMT9
  • モスルは3年間、ダーイシュが宣言する「カリフ」の中心拠点であった

モスル:ダーイシュとの繋がりが疑われる何十世帯もの家族がシリアからモスルへ帰還することで、ダーイシュ支配の恐怖の中を生き延びてきた住民たちの間に恐怖が広がっている。

約90世帯300人ほどの人々が火曜日に、イラク軍の護衛の下、シリア北東部のクルド自治政府が管轄するアルホル難民キャンプを出発した。クルド自治政府の関係者が匿名でAFP通信に語った。

これは、ダーイシュ戦闘員の親族を含む6万人以上を収容する難民キャンプから帰還するイラク人家族の第1陣であり、ダーイシュと戦う多国籍軍とイラクとの間で取り交わされた合意の一環だ。しかしこの動きが、多くのモスル住民に悪夢を呼び起こしている。

モスルは3年間、ダーイシュが宣言する「カリフ(イスラム共同体の指導者)」の中心拠点だった。

ダーイシュ戦闘員たちは「シャリア(イスラム法)」の厳格な解釈を強制し、音楽や喫煙を禁じ、違反者には公開斬首を含む残虐な処罰を下した。

「我々は彼らの帰還を全面的に反対します」と、父親をダーイシュ戦闘員に殺害された28歳の兵士であるオーマル氏は述べた。

「過激派たちが近くに住むことで、我々の未来は陰鬱で危ういものになります」と述べたオーマル氏は、身の危険を案じて姓を明かすことを控えた。

「彼らは時限爆弾のようなものです」

ニナワ県の県都モスルからダーイシュを追放した数ヵ月後の2017年末にイラクは、ダーイシュに対する正式な勝利を宣言した。

今回の出発が、アルホル難民キャンプからのイラク人家族の帰還「第1陣」となるとシリアのクルド自治政府関係者は述べた。

家族たちは、モスルの南のカイヤーラ地域に向けて送還された。そこにはアルジャダーキャンプがある。

このキャンプには、難民やダーイシュ戦闘員の家族たち7500人近くが2ヵ所のエリアに分かれて収容されていると、難民担当のイラク当局は発表している。

「どの家庭にも、ダーイシュに拘束されて行方不明になり遺体も見つからないという家族が少なくとも1人はいて、多くの人が今でも嘆き悲しんでいるというのに、彼らの帰還を受け入れることなどできません」とオーマル氏は述べた。

シリアのクルド人たちは、繰り返し国際社会に対して、シリア北東部にいる外国人たちの本国送還を要請してきたが、その訴えはほぼ聞き流されている状態だ。

国連によると、アルホル難民キャンプに収容されている半数近くはイラク人であるという。

「送還されたイラク人を受け入れ、既存の難民キャンプに収容した後に、彼らを出身地へ融合させるのが国家の義務です」と移民・難民担当のエバン・ガブロ大臣は述べた。

カイヤーラ地区のサラハ・ハサン・アル・ジュブリ行政長官は、住民たちを安心させることに努めている。

「彼らがアルホルからの送還者であることから、住民たちの反対も理解できないわけではありませんが、だからといって(これらの家族が)安全を脅かすということにはなりません」とジュブリ長官は述べた。

帰還者の多くは女性や子供たちで、そのほとんどは、かつてダーイシュが同じく最後の砦としていたアンバル県周辺の出身だと長官は言う。

「ニナワ県を出身とするのは、4家族か5家族に過ぎません」とジュブリ長官は述べた。

イラクの人権委員会メンバーであるアリ・アール・バヤティ氏は、住民たちの不安は「透明性の欠如」から来ていると述べた。

「それらの人々が尋問を受けたのか、また、調査を条件付けられていたのか、誰も知らされていません」と彼は述べた。

「彼らを受け入れる前に、(当局は)彼らの中に犯罪を犯したり起訴されたりした者がいないことを確認すべきでした」

モスルの人権活動家オーマル・アール・フシーニ氏は疑念を表明している。

これらの家族はダーイシュの影響下にあるアルホル難民キャンプで何年も過ごしてきたのであり、「政府は慎重であるべきです」と彼は述べた。

「国家は彼らを融合させることができるでしょうか、そして何よりも、社会を守ることができるでしょうか」

国連によると、イラクがダーイシュの敗北を宣言して3年以上を経た現在、130万人近くの人々が国内での避難生活を送っており、その5分の1が難民キャンプに収容されている。

イラク当局はここ数ヵ月でキャンプの閉鎖を加速させてきたが、国際移住機関によると、多くの住民がダーイシュとの繋がりを問われて帰宅できない状態であるという。

兵士のオーマル氏にとって、帰還者との生活は「あり得ない」という。

「彼らは過激派の思想を持ち続けてきたのです」と彼は述べた。

AFP

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