
ムハンマド・アブ・ザイド
カイロ: エジプトの裁判所が、パナマ船籍のコンテナ船「エバーギブン」がスエズ運河を封鎖したことに対する賠償金を巡る裁判の審理を延期した。当事者間での裁判所外での話し合いによる解決を促すためだ。
この件に関する次回の審理は、スエズ運河庁と大型コンテナ船の船主双方の弁護士の要請を受け、6月20日まで延期された。同コンテナ船は3月に座礁し、6日間にわたり運河の通行がストップした。
エバーギブンが座礁した責任は相手側にあると双方が主張している。争いの主な内容は当局がコンテナ船を離礁させるのに要した費用の賠償額だ。
当初、スエズ運河庁は9億1600万ドルの賠償金を要求していたが、後に5億5000万ドルにまで引き下げた、と運河庁長官を務めるオサマ・ラビー中将が5月30日のテレビ番組で語った。賠償金を使ってコンテナ船の離礁費用、運河で船が足止めされたことへの補償金、エバーギブンが運河を封鎖した週に取り損ねた通行料の回収に充てるものとみられる。
船主の日本企業「正栄汽船」と保険会社は、以前1億5000万ドルの賠償金が提示されこれを拒否したとの当局側の主張に異議を唱えた。
スエズ運河庁は声明を出し、イスマイリア経済裁判所は船主側が法廷外で和解したいとの新たな申し入れをしたため、審理が延期されたと述べた。
離礁して以降、アジア・ヨーロッパ間で貨物を輸送するエバーギブンは、賠償金交渉がまとまるまで、運河の中央部分にある湖に留まるよう当局から命じられている。
運河が閉塞されたため世界の海運が混乱し、数百隻の船に遅れが生じ、中にはアフリカ大陸最南端の喜望峰を回るはるかに長いルートを通ることを余儀なくされた船もあり、燃料と費用が余分にかかった。
公式数値によると、世界貿易の推定10%がエジプトの外貨獲得の主要な手段であるスエズ運河を通過しており、昨年は1万9000隻が通過したという。
当局側交渉委員会の顧問を務めるハレド・アブ・バクル氏は、裁判所が事件の審理を延期したと発表し、エバーギブンの船主側は当局が座礁事故に対し適切に対応したことを認めており、賠償額を巡る交渉はいまだ継続中と述べた。
バクル氏は、船主と代理人らの関係保持のため、交渉内容の詳細や賠償金額は公表されないだろうと指摘した。
当局側交渉委員会のムハンマド・アル・サイード氏は、当局がコンテナ船や貨物に損傷を与えずに、エバーギブンを離礁させるのに成功したと述べた。
しかし、離礁作業中に作業船1隻が沈没し作業員1人が死亡するなどの損害が発生したことを指摘した。
スエズ運河庁の代理人弁護士ナビル・ザイダン氏は、コンテナ船のブラックボックス(VDR=航海情報記録装置)から得られたデータによると、運河の制限速度を超えて22ノット(時速40.7キロメートル)で通過していたため、エバーギブンの船長に事故の責任があるのは明らかだと述べた。
ザイダン氏は、悪天候にも関わらず航行を許可した当局の側に事故の責任があるとの船主側の主張をはねつけた。
スエズ運河庁のジョージ・サフワット報道官は、離礁作業には600人以上の職員が参加したが、死亡した作業員は請負業者の社員だったと述べた。