
パリ・ブリュッセル:ロイター通信が入手した外交文書によると、欧州連合(EU)がレバノンの政治家らに対して適用されることとなる制裁措置の基準案は、汚職、政府樹立の取り組みの妨害、財務上の不適切な処理、人権侵害などになるとみられる。
レバノンが財政破綻、超インフレ、停電、燃料・食糧不足などの危機に直面してから11ヶ月が経過しており、フランスを中心としたEU諸国は、互いに対立するレバノンの政治家らに対する圧力を強めようとしている。
先月から実行可能な措置について詳細な議論を重ねてきた欧州連合(EU)は、まだどのようなアプローチを取るべきか決定していないが、ジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は今週末にレバノンに滞在しており、月曜日に外相らに報告する予定である。
レバノンの有力政治家の多くは、EUに自宅や銀行口座、投資先を持ち、子供をEU内の大学に通わせているため、それらに対するアクセスを遮断することで、彼らの気を引き締めることができるだろう。
フランスは、レバノンの一部の政府関係者に対する入国制限措置を既に取ったという。フランスは入国制限措置をとった一部の政府関係者は、何十年にも渡る国家の腐敗と債務に根ざした危機に対する取り組みを妨害したと見なしている。しかし、特定の政府関係者の名前を公表してはいない。
EUはまず、制裁体制を確立する必要があり、制裁体制の確立後、個人に対して渡航禁止や資産凍結などの措置を取ることが可能となる。しかし、すぐには誰もリストアップしないこともできる。
制裁に関する外交文書は、このような措置を取ることの長所と短所も紹介されており、4つの基準に焦点を当てている。その基準は、政府の樹立、政治手続き、政治的移行の完了の妨害に始まり、政治的、経済的、社会的危機を克服するために必要となる緊急の改革の実施の妨害にまで至る。
さらに、経済・社会危機の結果としての人権侵害と同様に、財政や銀行部門の不始末に責任があると考えられる人物や企業、組織を対象とした、財政上の不祥事も中核的な制裁の基準となっている。
「レバノンの指導者の政治的責任の欠如が、レバノン経済の大規模な崩壊の核心であるとみる可能性がある」と、制裁案は人権基準の可能性について言及している。
「これは重大な苦しみをもたらし、レバノンの人々の人権に影響を与えている。」
このような外交文書は、EUの政策決定において一般的であり、EUの外交官や政府関係者の間で回覧されるが、公開されることはない。
また外交文書は、制裁体制が目的を果たしたかどうかを確認し、個々の指定を更新または解除するための基準を提案する「出口戦略」も導入する必要があるとしている。
どのくらいの期間で制裁が発動されるかはまだ不明だが、政治的な対立が悪化し続けていることから、EUは夏休み時期前に制裁を発動させる可能性が高い。
EUによる制裁の是非については、EU加盟27カ国の間でも意見が分かれており、EUの2大国であるフランスとドイツが賛成していることが、重要なポイントになりそうだ。しかし、このEUの制裁案に対しより多くの国が、まだその態度を明確にしていない。
ハンガリーは、レバノンの政治家に圧力をかけようとするEUの取り組みを公に非難している。
欧州の高官がロイター通信に語ったところによると、フランスはキリスト教系の有力政治家であるジブラーン・バシール氏への制裁に照準を合わせている。
ロイター