
アラブニュース
ジェッダ:イランの人権状況に関する国連調査官は29日、イランの新大統領に選出されたイブラヒム・ライシ氏が司法官であった1988年に、国家の命令で数千人の政治犯が処刑された出来事への独立調査を求めた。
ジャバイド・レーマン氏は国連人権理事会へ提出するための証拠は集まっていると述べたうえで、証拠隠滅のために共同墓地の破壊が行われていることに懸念を示した。
「今こそが非常に重要な時だ。我々は1988年に起きたことと個々人が果たした役割について、調査を開始すべき時だと考えている」とロンドンの法学者で2018年にイランの人権に関する国連特別報告者に任命されたレーマン氏は強調する。
「今、実施しないなら、ライシ大統領について、また彼が過去の大量処刑に果たした役割について、将来、非常に深刻な懸念を抱えることになるだろう」
ライシ氏は過去の人権侵害をめぐり米国の制裁対象となっている。制裁理由の中に1988年の大量処刑を取り仕切った4人の裁判官の1人であることが含まれており、この事実によりライシ氏は「テヘランの虐殺者」と呼ばれている。アムネスティ・インターナショナルは処刑された人数を5000人と推定しており、2018年の報告書では「実際の数はもっと多い可能性がある」と指摘している。
レーマン氏は「伝えられている処刑の規模からいって、一個人のみの判断ではなく、政策の一環として行われたものと考えられる」と述べた。
さらに、1979年のイスラム革命以降で最悪の騒乱として、多数の死者を出した2019年11月のデモ弾圧に対しても「公正な調査は行われていない」と訴えた。
「少なく見積もっても300人以上の人々が恣意的に、法によらずに殺害されたうえ、誰も責任を問われず、補償も行われていない」
「この国では、過去の歴史的事象についても、現在においても、著しい人権侵害が罪に問われない体制が蔓延している」
「我々は再び墓地破壊政策が取られたり、共同墓地の証拠隠滅活動が行われたりすることを懸念して、イランと情報のやりとりを続けている。正義が行われるよう運動を起こす予定だ」
ライシ氏は8月3日に、ロウハニ大統領の後任としてイランの新たな大統領に就任する。これは今月行われた選挙の結果だが、この選挙は有権者からそっぽを向かれたことで、「形式的」なものとして広く受けとめられている、。レーマン氏はこれについて「穏健派の候補者を排除し、特定の候補者の当選が確実となるよう意図的に操作された戦略」と非難している。
そして「逮捕や弾圧が行われ、ジャーナリストらはライシ氏の背景について特定の質問を行うことを禁じられている」と訴えた。