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不安定なタリバンという中央アジアのリスク

アフガニスタンのカブールでタリバン戦闘員の脇を通るアフガニスタンの女性たち(2022年2月13日撮影)。(AP)
アフガニスタンのカブールでタリバン戦闘員の脇を通るアフガニスタンの女性たち(2022年2月13日撮影)。(AP)
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11 Sep 2022 02:09:21 GMT9
11 Sep 2022 02:09:21 GMT9

政権奪取から1年以上が経過し、タリバン政権は統治が戦闘よりもはるかに難しいことを実感し始めている。冬が近づきアフガニスタンは人道的危機に直面しているが政府は国際的な承認を得られておらず、外国の援助はごくわずかに減ってしまった。

経済は依然として悲惨な状況で改善の目処はたっていない。タリバン政権が抱える問題は山積している。これらの問題はタリバン政権自身の内部分裂によって悪化している。内紛で完全に麻痺してしまっており、効果的な統治を行うことができないのだ。

治安状況も全く改善されていない。トランプ政権とタリバン政権は「アルカイダを含むいかなる個人や集団にもアフガニスタンの国土を利用して米国とその同盟国の安全を脅かすようなことはさせない」と合意していたにも関わらず、タリバンによる政権奪取はテロ集団の活動を可能にしてしまった。ダーイシュはアフガニスタン政権崩壊時に国内の一部で生じた混乱に付け込んだ。シーア派の少数民族ハザラ人を狙う大量殺戮テロ攻撃は依然として頻繁に発生している。

アルカイダもまた、タリバンの政権奪取の恩恵を受けている。最近の国連の調査では「アルカイダのメンバーは歴史的に地盤とするアフガニスタン南部と東部に潜伏していると伝えられている。アルカイダはアフガニスタン北部に地盤構築を目指して新たな戦闘員を動員し、リソース拡充を画策している。アルカイダ指導部はタリバン政権の顧問的な役割を担っており、両グループは依然として緊密な関係にある」と報告している。7月のカブールでの米国のドローン攻撃でアルカイダのリーダーであるアイマン・アルザワヒリが殺害されたときも、アフガニスタンでのアルカイダ復権が強調された。

その影響はより広範な地域に及んでいる。カシミールのバザーにはアフガニスタンからの武器が出回っている。国境沿いではタリバンとパキスタン軍の対立が数多く報告されている。タリバン政権がアフガニスタンに逃げ込むパキスタン・タリバン運動(TTP)のメンバーを受け入れていることに対してパキスタン政府は正当な懸念を抱いている。パキスタン・タリバン運動(TTP)とはパキスタン政府の転覆を目的とするテロリスト集団だ。一方、タリバン政権は米国がアルザワヒリを殺害した攻撃作戦でパキスタンが果たしたかもしれない役割に疑念を抱いている。

国際社会は従来アフガニスタン南部のパキスタン国境を注視してきたが、北部国境にも注意が必要だ。ここ数週間ウズベキスタン政府がタリバン政権に連絡をとり協力を試みているがアフガニスタン・ウズベク国境付近の治安は悪化している。7月にはアフガニスタンから5発のミサイルが発射され、ウズベキスタンの都市テルメズに着弾している。先月にはタリバン政権・ウズベキスタン間で新たに国境で衝突が発生した。国境として機能しているアムダリヤ川の中州、アラル・パイガンバルにバルク州からアフガニスタン市民がやって来たのが引き金となった。ウズベキスタンの国境警備隊が発砲し、アフガニスタン人数名が死傷した。現在この中州がどちらの支配下にあるかは不明だ。

ウズベキスタン政府のもう一つの懸念はウズベキスタン・イスラム運動(IMU)だ。IMUは1999年の設立で、アルカイダやタリバンとの関係が深く、2021年のアフガニスタン転覆時には武装勢力と共闘している。従来IMUの本拠はアフガニスタン北部だった。しかし2001年のタリバン追放直後にIMUは南方のアフガニスタン・パキスタン国境地帯に逃亡した。近年のタリバン勢力拡大に伴い、IMUは元々の本拠の北部に戻り始めた。 現在IMUはアフガニスタン北部全域で自由に活動できるまでになっている。

アフガニスタンとの国境線が中央アジアで最長のタジキスタンもまた、新たな脅威にさらされている。この地域から過激派が出現し国の安全を脅かしてきた歴史があるのだ。

タジキスタンの懸念は現実のものだ。タリバン政権はタジキスタン・アフガニスタン国境の支配権をジャマート・アンサルッラーに委譲している。この組織は2010年結成の過激派で、タジキスタンの合法政府の転覆を活動目的としている。ジャマート・アンサルッラーの戦闘員の多くはイラクとシリアで訓練され、戦闘経験を積んでいる。タジキスタン・タリバン・ムーブメントと呼ばれる新しいグループもアフガニスタン北部で活動している。このグループとジャマート・アンサルッラーやIMUなどの他グループとの関係はほとんど知られていないが「タジキスタンの非宗教政府」には反対の立場だ。

中央アジアは新たな地政学的現実を目前にしている。アフガニスタンの治安情勢がどのように推移するか、中央アジア諸国は神経をとがらせ注視している。タリバン政権がアフガニスタン北部でより多くの悪質なグループの活動を許せば、混乱とテロが中央アジアに広がる可能性がある。これは中央アジア諸国がいま一番避けたい事態だ。

今後数ヶ月、数年のうちにアフガニスタン情勢はますます不安定になり、1990年代当時のようになるだろう。そして、その当時のように中央アジアの近隣諸国は地域の安定と平和のためにどんな役割を果たすか決める必要に迫られることになるだろう。

中央アジアはこれまでも、今も、そしてこれからも地政学的に重要な地域だ。パキスタンだけでなく中央アジアからも目を離すべきではない。

  • ルーク・コフィー氏はハドソン研究所のシニアフェロー。ツイッター: @LukeDCoffey-
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