Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 特集
  • 岩垂徳行、様々なゲームミュージックを手掛けた作曲家

岩垂徳行、様々なゲームミュージックを手掛けた作曲家

作曲家は「ラングリッサー」のような様々なゲームに携わった。(提供)
作曲家は「ラングリッサー」のような様々なゲームに携わった。(提供)
Short Url:
08 Apr 2024 03:04:19 GMT9
08 Apr 2024 03:04:19 GMT9

ドバイ:岩垂徳行氏は、「LUNAR」、「グランディア」、「ラングリッサー」、「逆転裁判」など様々なゲームシリーズを手掛けたことで知られる著名な作曲家である。

アラブニュース・ジャパンの独占インタビューに応じた岩垂氏は、「子供の頃、『ブロック崩し』や『ピンポンゲーム』、『インベーダーゲーム』などで遊んでいました。たまたま親戚の家にあったんです。ゲームセンターに行くこともあったけど、夢中になったことはなかった。任天堂のファミコンも持っていなかったし」と語る。

「友達と集まって一緒に楽しむのが好きなので、大人数で楽しめるテレビゲームがいいですね。『マリオパーティー』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズのような、大勢で遊ぶタイプのテレビゲームが好きでした」と同氏は続けた。

小学5年生の時の担任の先生にインスピレーションを受けたという、この作曲家は「音楽が大好きな先生でした。朝のホームルームでは合唱の練習をし、昼休みにはリコーダーを合奏し、放課後には金管楽器を演奏した。放課後もベースを練習しました」と教えてくれた。

「小学校を卒業した後も、先生から歌や指揮の指導を受け続けた。これがとても楽しくて、結局一生音楽をやることになりました」と、彼は続けた。

作曲を始めたのは高校生のとき。大学ではマルチトラックレコーダーとシンセサイザーを購入し、音楽の実験を行った。「音楽制作のコンセプトは自己表現だったので、その時思いついたものを作っていました」と、彼はアラブニュース・ジャパンに語った。

岩垂氏は、1991年に発売されたビデオゲーム「ラングリッサー」シリーズのプロデューサーに抜擢され、音楽を担当した。「(『ラングリッサーI』では)ロックをベースにしたクールでダイナミックな曲を1週間くらいで作ったと思います。驚くほど簡単でした」と彼は語った。

「『ラングリッサーII』では、ほとんどすべての曲を僕が作曲しました。PC-FX、スーパーファミコン、プレイステーション、セガサターン、ウィンドウズなど、様々なゲーム機向けに作曲するのはとても楽しかったです。『ラングリッサーIII』については、私はほとんど関わっていないのでよく知らないです。『ラングリッサーIV』では、オープニングとエンディング、その他数曲を手掛けました。 『ラングリッサーV~The End of Legend~』では全曲僕が手掛けました。現在に至るまで、ラングリッサーのモバイルゲーム用に毎年新しい曲を作っています」と彼は続けた。

2019年、作曲家は韓国を訪れ、ラングリッサーモバイルのファンフェスティバルに参加した。「このゲームが、日本国外の多くのユーザーに愛されていることを実感しました。これほど多くのゲーム機向けに発売されたり、リメイクされるとは思ってもいませんでしたが、世界中の人々に愛されるこのゲームに携われたことをとても誇りに思いますし、嬉しく思います」

さらに、1992年に発売されたビデオゲーム「LUNAR」シリーズの音楽も手がけており、ロールプレイングゲームの音楽制作はこれが初めてだった。

アラブニュース・ジャパンの取材に対し、「映像をもとに音楽を作るのも好きですが、ストーリーをもとに作曲するのはもっと好きです。このゲームに携わることができ、このような素晴らしいスタッフと一緒に仕事ができたことは、この上ない喜びです。どの曲も約30秒でした。何回ループしても飽きないようにいろいろ工夫しましたが、それでも30秒では音楽的に描ききれないことも多かったですが、ユーザーからは好評でした。また、『ルナさんぽする学園』(1996年、セガゲームギア)の音楽も担当しました。主人公は小さな子供たちなので、音楽はもっとマイルドでソフトです」と同氏は語った。

このゲームは1992年に最優秀ゲーム音楽賞を受賞している。「最高の音楽を作ろうという努力が認められて、とても嬉しかった」と彼は続けた。

このアーティストは、自然や周囲の環境からインスピレーションを得ることが多い。例えば、彼は、「ルナ シルバースターストーリー」のテーマ曲を作るために、麦畑の風にインスピレーションを受けた。「よく曲のアイデアに出会いますが、共通しているのは自然からインスピレーションを受けていることです」と彼は語った。

さらに、岩垂氏はゲームソフト「グランディア」シリーズの音楽も手がけている。作曲家のオーディションを知ったのは、締め切り前日だった。「その日の夜に曲を作って応募し、5人の候補者の中から選ばれました」と語り、それから3日間でゲームのテーマ曲を作曲したことを明かした。

「シナリオは世界中を旅するものだったので、世界中の民族音楽を聴きまくりました。それぞれの国や地域の音楽の特徴を分析したり、楽器について学んだりするのは、とても興味深かったです」と、その時うけたインスピレーションを振り返り「『どこにも存在しない新しい音楽 』を創造するのはエキサイティングでした。例えば、『City of Palms』はイギリスの産業革命の時代にインスパイアされたので、バグパイプと蒸気機関の音を使いました。『Lily』はフランスのシャンソンにインスパイアされ、それにアラブ音楽を加えました」と彼は語った。

このゲームは1997年に最優秀ゲーム音楽賞を受賞した。「受賞の知らせを聞いたときは、自分の作品が多くの人に受け入れられた喜びでいっぱいでした。また、多くのインタビュー、初めてのサイン会、ピアノ譜の出版、CDの増刷など、予想以上の音楽の人気に感激しました」

続編では、歌手の川澄かおり氏と仕事をした。ゲームを米国に販売する際のローカライゼーションの問題を避けるため、日本語ではなくポルトガル語の曲を作った。「私が曲を書き、それから歌詞を考えました。重要な単語を列挙して、観客に意味を当ててもらうんです」と彼は続けた。

2000年、『グランディア2』は最優秀ゲーム音楽賞を受賞した。「1作目の評判が良かったので、2作目の音楽が受け入れられるかどうか心配でした」とアーティストは明かした。

2020年3月、前2作はニンテンドースイッチに移行され、最近ではHDコレクションとして他のプラットフォームにも移行された。「最近、新しいファンがこうしてゲーム音楽を手にとって、聴いてくれていることがとても嬉しいんです。これからもこのシリーズが愛され続けることを願っています」

岩垂はカプコンのゲーム「逆転裁判」シリーズの音楽も手がけている。「社長と一緒に大阪に行き、巧舟さんとお会いして、正式に作曲することになりました」と明かした。

「その後、『逆転裁判2』(2011年、ニンテンドーDSで日本限定発売)でも、『逆転裁判』と同様に全曲を作曲しました。『逆転裁判5』、『逆転裁判6』も、同様に全楽曲を担当しましたた。作品が成長していく様子をリアルタイムで体感できるのが、とても楽しかったです。ゲームだけでなく、オーケストラのCD、ジャズのCD、オーケストラのコンサート、バンドの演奏会、映画、舞台、アニメ、ミュージカル、さまざまなメディアで作品が広がっていくのは刺激的で楽しいです。この作品がいろいろなメディアを通じて広まっていくのは、わくわくしました。スタッフと一緒に作る喜びを分かち合うことができますし、嬉しい知らせや、世界中のファンがこの作品を愛してくれていることを知ったときは、興奮しました」と続けた。

「こんなに長い間、このシリーズに関われるとは夢にも思っていなかったですし、多くの熱狂的なファンの方々と交流する機会にも恵まれました。これほど世界中から愛されているゲームは珍しいと思います。また、シリーズを通して多くのゲームで作曲を担当できたことは、とても幸運でした。今後も何らかの形で関わっていけたらと思っています」と岩垂氏は、シリーズの音楽制作に携われた事に感謝の意を表した。

作曲中に直面した困難について、岩垂氏は「まず、どんな音楽プロジェクトも同じものはありませんし、プロジェクトごとにスタッフもコンセプトも違います。音楽の依頼も違います。自分のエゴを押し通すこともできますが、ゲーム制作はチームワークですから、多くのスタッフ(そして多くのユーザー)が共感できる音楽を作ることが重要で、これがなかなか難しい。みんな意見が違うから」と語った。

「ゲームにはそれぞれ思い出があり、作っている時は大変なこともたくさんありましたが、今では良い思い出として残っています。初めて作ったPCエンジン用ゲーム『スペースインベーダーズ復活の日』は、曲だけを提出したのですが、コンソールで初めて音を聞いたときの感動は、今でも鮮明に思い出せます」と続けた。

中東にはまだ行ったことがないが、今後は様々な観光地や史跡を訪れる予定だという同氏は「(中東の)音楽にすごく興味があるんです。ゲーム『ラジアータ・ストーリーズ』にはベリーダンスにインスパイアされた音楽があると思うし、中東の音楽はとてもユニークで魅力的です。それぞれの地域に独自の音楽があると思うので、実際に聴いてみたいですね」と意欲的に語った。

岩垂氏は、ゲーム音楽の作曲家を目指す人には、あらゆるジャンルの音楽に興味を持つことを勧める。

特に人気
オススメ

return to top