
クリストファー・ハミル-スチュワート
ロンドン:世界的に著名なチェスの元世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフ氏が、イランの現政権の手による一般のイラン人たちの窮状について語り、米国のイランとの交渉を「ひどい間違い」だとして、交渉をやめるよう米国に呼びかけた。
現在ニューヨークを本拠とする人権財団の理事長を務めているカスパロフ氏は、アラブニュースも出席したイラン反体制派のイベントで次のように語った。「正当性を持たないイランの政権によって外国への干渉、テロ、そして戦争が数多く引き起こされてきた中で、イランの国民が最も苦しめられているということを忘れてはいけません。」
カスパロフ氏は続けて言う。「今のイラン政府は国民から託された権限など持っていません。代わりに、政府は国民を恐れさせ、抑圧し、拷問しているのです。」
カスパロフ氏は、世界で最も華々しい経歴を持つチェスプレイヤーの1人だ。最長記録の255か月間にわたって世界一の座に君臨し、2013年にマグヌス・カールセン氏に抜かれるまで、14年間チェスのレーティング最高値を保持していた。
チェスを引退して以来、カスパロフ氏は人権問題や独裁政治 — 彼の母国であるロシアのもの含む — に反対する活動に専念してきた。
カスパロフ氏は、イランに対する西側の交渉重視の姿勢を非難し、「自由な世界、人間の生命を大切にするはずの民主主義の世界が、殺人者たちの政権とどうして交渉できるのでしょうか」と訴えた。
イランとの交渉は「ひどい間違い」だとカスパロフ氏は付け加えた。
彼は続けた。「人権の重要性についてしばしば語る米国のような国の指導者たちは、1988年の虐殺に関与したことがはっきりしているライシ氏との交渉の席に、どうやって着こうというのでしょうか」とカスパロフ氏は指摘した。
イランの次期大統領、イブラヒム・ライシ師は、人権団体のアムネスティ・インターナショナルが「死の委員会」と呼ぶ組織の重要人物であり、1988年、数千人の政治犯に、見せしめ裁判の後、即時執行による死刑を命じたという。
イラン政府の手により今日苦しみ続けている人々の中には、カスパロフ氏と同じチェスプレイヤーたちもいる。
イランには国際的にも有名なチェスプレイヤーたちがいるが、イラン政府は政治的な理由で彼らのキャリアを妨害し続けている。
イランのプレイヤーたちはイスラエルの相手と試合することを何度も妨げられ、代わりにトーナメントの棄権または試合の辞退を余儀なくされている。こうしたやり方は、昨年の国際チェス連盟(FIDE)からの厳しい警告につながった。
「私たちは規定に従うようイランへの圧力を強めているところです。もし従わない場合、イランの協会には相応の処分を受けてもらうことになります」と国際チェス連盟はコメントしている。
イランのチェス協会が規定の遵守を拒否した場合、「彼らは間違いなく資格停止になるでしょう」と国際チェス連盟では話している。
昨年、イランのあるチェス審判は、写真に写ったヒジャブ(ムスリム女性が頭部をおおうスカーフや布)の巻き方がゆるすぎるとしてイランのメディアから攻撃され、イランを脱出し英国で亡命申請することを余儀なくされた。
夫や家族とはなればなれになってしまったその審判は、当時アラブニュースに次のように語っている。「彼らは私を監視し、私の写真をチェックしていました。私たちについて悪意ある報告もしていたでしょう。そんな状況に、私のキャリアも、幸せも、影響されていました。」
「外国にいる時でさえ、私たちは自由だとは感じられないのです」と彼女は付け加えた。