
ジュマナ・アル・タミミ
ドバイ:バーレーンは、地域で初めてアラビア湾の石油が発見され、初めて電気インフラが設置され、最初の女子校が設立された都市だ。そこにさらにもうひとつの地域初が加わった。
バーレーン王国の首都であるマナーマは、人間の幸福に寄与する環境を作り出す取り組みが認められ、世界保健機関(WHO)より「健康都市2021」の認定を受けた。中東の都市では初めてである。
「大変な栄誉だ」。マナーマ県知事のシェイク・ヒシャム・ビン・アブドゥル・ラーマン・アル・ハリファ氏はアラブニュースに語った。「達成できて非常に嬉しく思っている。マナーマは地域で初めて健康都市として認められた」。
WHOによると、「健康都市」はあるプロセスによって定義される。健康に配慮し、その改善に向けて励む都市だ。現状の健康の状態にかかわらず、どの都市も認定を受ける可能性はある。
WHOは「健康都市とは、物理的・社会的環境を継続的に創成・改善し、そこに住む人々が生活の中であらゆる役割を果たす上で互いに助け合い、それぞれの力を最大限に発揮できるよう、都市にあるさまざまな資源を幅広く活用していく都市を指す」と説明している。
「健康都市」の概念は、市民サービスと持続可能な開発政策の実施との間をつなぐため、1990年に提唱された。
このアプローチは、都市の政治的・社会的課題における健康の優先度を上げ、地方レベルで公衆衛生を意識した強力な動きを組織することを目指している。健康の決定要因に取り組むための公平性、参加型ガバナンス、連帯、協力、行動を特に強調している。
成果を上げていくには、生活条件のあらゆる側面に対処する改革と、都市間の広範なネットワークが欠かせない。
バーレーンは、2015年にWHO健康都市ネットワークに参加し、まずマナーマ南部のウム・アル・ハッサム地区でパイロット計画を始動させた。その取り組みが2018年にWHOに認められた後、王国はプロジェクトを首都全体に拡大し、実施状況を監督する特別評議会を組織した。
6月にWHO東地中海地域事務所が主催したバーチャル式典でマナーマの「健康都市」宣言が行われた。
世界の他地域と同様に、バーレーンはコロナウイルスによる都市封鎖、不確実な状況、経済的混乱に見舞われている。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が中国で発生し、地球上のほぼすべての国を飲み込んでから18か月以上が経過した今、バーレーンは危機を脱したようだ。1人当たりのワクチン接種回数に関しては、先行を許しているのはUAEとマルタのみだ。
世界に広がる急速な都市化により、健康都市の概念の妥当性が高まっている。都市には、不適切な廃棄物処理、空気汚染、路上の暴力に加え、標準以下の住宅や危険な労働条件などの問題が山積している場合が多い。
国連の統計によると、2018年の時点で世界人口の約55%が都市に暮らしていた。その割合は、2050年までに68%に増加すると予測されている。
国連経済社会局によれば、都市化が進展すると、教育や医療などの基本的なサービスと共に、「都市成長の効率的な管理」と、住宅、輸送、エネルギーに関連する問題のより適切な処理が必要になってくるという。
2017年にWHOが発表した2015年のプロフィールによると、今日、バーレーンの人口の大半は都市部在住であり、王国の全人口の推定11.4パーセントが地方に住んでいる。
健康と幸福に関する複数の指標に基づいて見れば、王国の成果は好調だ。たとえば、現在の出生時の平均余命は平均77年。識字率は若年者で98.2%、成人で94.6%である。
国連の統計によると、人口1,641,000人で首都に20万人が暮らすバーレーンの医療従事者数は1万人あたり医師が9.1人、看護師と助産師が24.1人である。
健康関連の概要
* 6月、マナーマはWHOが定める「健康都市2021」の宣言をした。
* バーレーンの1人当たりの医療費は、2005~2013年の間に1,067ドルに増加した。
* GDPに占める同期間の医療費の割合は4.9%に上昇した。
(出典:WHO)
WHOによると、バーレーンの主な環境リスク要因には、「大気汚染、化学物質への暴露、住居、負傷の環境決定要因」などがあり、これは「非感染性疾患および負傷の負荷の大きな原因である」。
健康都市ネットワークの一員になる資格を得るには、都市は、清潔で安全な物理的環境を備えている必要がある。具体的には質の高い住宅、長期的に安定性・持続可能性を見込める生態系、助け合いの基盤になる搾取的ではない強固なコミュニティ、市民の生活に影響を与える決定を行う際の高い参加率などが含まれる。
食料、水、住まい、安全、収入を確保できる仕事といった基本的なニーズについて、すべての居住者が享受できなければならない。また、他者との交流やコミュニケーションの機会など、さまざまな経験やリソースにアクセスできることが求められる。
さらにメンバー都市は、多様で活気に満ちた革新的な経済を備え、過去との連結性を維持し、都市生活者の文化的・生物学的遺産をそれ以外の遺産と共に引き受けていく必要がある。
また、すべての人が利用できる、地域に合ったレベルの適切な医療サービス、都市として総体的な健康の維持が求められる。
アラブニュースの直近のインタビューで、バーレーン保健省次官のワリード・アル・マネア博士は、「(パンデミックが)始まって以来、保健省では透明性戦略を採用してきた。これは私たちにとって非常に重要だ」と語った。
「透明性の維持と共に、欺瞞ではなく事実を基に政策を進めることを誓ってきた。私たちは常に事実を確認した上で判断を下している」。
WHOは、「『健康都市』のアプローチは、健康の決定要因と、公設・私設機関、ボランティア、コミュニティセクターの組織間で協力して取り組む必要性を認識している」と述べている。
「この取り組み方と考え方には、意思決定に地元の人々を巻き込むことが含まれる。政治的コミットメントに加えて組織やコミュニティの発展が不可欠であり、プロセスが結果と同じくらい重要であることを認識している」。
シェイク・ヒシャム県知事はアラブニュースに対し、健康上のリスクを排除し、意識を高めるために、約70のさまざまなプロジェクトがマナーマで実施されていると語った。
公園や公共庭園の数を増やし、二酸化炭素排出量を削減する「グリーンキャピタル」プロジェクトはそのひとつで、「中小規模の環境にやさしいプロジェクトを奨励し、環境原則に対する意識を高め、さらに持続可能な開発プロジェクトへのボランティア参加を増やすことに力を入れる。たとえば、ビーチ清掃プロジェクトなどだ」と県知事は話した。
「色と癒しと幸せ」と呼ばれるイニシアチブは、保健省と約60人のボランティアアーティストの協力を得て実施された。バーレーン大学の研究者による、色と描画がメンタルヘルスに及ぼす影響調査に従って行われた取り組みだ。
別のプロジェクトの一環として、住民と地方自治体間の円滑なコミュニケーションを促進するために、オンラインプラットフォーム「マイ・キャピタル」が立ち上げられた。
さらに別のイニシアチブ「ユー・マター」は、医療専門家の協力を得て、新型コロナウイルス感染症が原因で精神的に苦しんでいる人々を支援するために導入された。
住居の面では、専門委員会が大規模な検査を行い、安全基準に達していることを確認している。基準を満たさない建造物は、改修や改築の対象になった。
シェイク・ヒシャム県知事によると、マナーマの2,627件の施設で検査が行われ、うち最大97%で安全対策を確実にするために改修が実施された。
貧困地域では最大2,250戸の住居で、健康と安全の基準を改善するため、非公認・無許可の電気配線の撤去などの改修がなされた。一部の市街地の過密を軽減するため、約18,400人の低所得労働者が他の宿泊施設に移された。
ハリーファ・ビン・サルマン港の工業地帯にある古い建物もいくつも改修の対象になっている。同時に、住居や食料をまかなっている地域と工業地帯との間に安全で健康を守れる距離を確保する措置が講じられている。
シェイク・ヒシャム県知事は、マナーマ市民の都市復興と発展に向けた協力に感謝の意を表し、バーレーンのすべての町や村に及ぶ「『健康都市』実現のプロセスは今後も続く」と述べた。
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Twitter: @jumanaaltamimi