
エフレム・コサイフィ
ニューヨーク: リビアから欧州へ入ろうとする移民や難民の数が増加しており、そうした人々が途中で拘束・救助されてリビアへ送り還され、過密な収容施設に拘留されている。
国連人道問題調整事務所(OCHA)が公表した報告書によると、それらの施設では虐待、暴力、強制労働が横行し、食料、水、日光が剥奪されているという。行方不明になる人々もおり、人身売買の餌食になっているのではないかとの危惧もある。
こうしたリスクに加え、熱波で全国的な停電となったリビアの酷暑も重なり、現在、収容施設に拘留されている6170人以上の移民たちは、「極めて非人道的」な状況で暮らしていると報告書は述べている。
今年初めから6月30日までの間に1万4700人以上の移民や難民たちが、リビア沿岸警備隊に海上で拘束・救助されてリビアへ送り還されており、この数は2020年全体の数をすでに上回っている。6月だけでも、4500人以上が収容され、数百名が海上で命を落としている。
長年の内戦や政情不安からの復興の遅れ、新型コロナウイルスによる国内経済への影響なども、リビア国内の移民たちの窮状に加担している。
国際移住機関によると、リビアの移民の大多数はエジプト、スーダン、ニジェール、チャド、ナイジェリアからの人々であるという。現在リビアにいる60万人の移民には計53ヵ国の人々が含まれている。昨年、イタリアに海路で到着した移民で最も多かったのは、バングラデシュ、チュニジア、コートジボワールの人々であった。
2011年にムアンマル・カダフィ氏が失脚し、それに続く内戦で混乱に陥って以降、リビアを出発地として海路で欧州へ向かおうとする移民たちの数が増加している。しかし、2016年の移民危機からは欧州の国境警備が厳しくなり、多くが足止めを食らっている。
移民の数は現在、まだ新型コロナ以前の水準より低いとはいえ、3月にリビア暫定統一政府が発足したことや、2020年10月のリビア国内停戦合意の効力が継続して治安が改善されていることなどが要因となり、今年に入って急増している。
「リビアからの出発が続いているということは、中央地中海ルート上に、即座に効力を発揮し、国際的な人権の原則や基準に完全に乗っ取った、予測可能な救助および下船メカニズムの必要性を浮き彫りにしている」と報告書は述べている。