
アラブニュース
ロンドン: 英国政府が、バッシャール・アサド大統領と親密な関係を持つ主要なシリア人実業家に対する制裁を解除した。人権活動家らは制裁を再び科すよう求めている。
英大蔵省は、タリフ・アル・アフラス氏は「もはや資金凍結の対象ではない」と発表した。「シリア国内で事業を経営または管理する主要な人物」を含むアサド政権と関係を持つ人物への制裁を維持する法案が可決されて以来、初めての個人への制裁解除となる。
シリアのアスマ・アサド大統領夫人の従兄弟である実業家のアル・アフラス氏は、シリア国内の商品・物流事業に関わるアフラスグループ の創設者だ。
70歳のアル・アフラス氏は、「政権の恩恵を受けており政権を支援する主要な実業家」として2011年9月に欧州連合 (EU) の制裁リストに掲載された。
アル・アフラス氏はEUの制裁に上訴したが、EU は同氏が「シリア政権を経済的に支援しているか同政権から恩恵を受けている」とし、2016年4月に上訴を棄却した。
また、アル・アフラス氏は、シリアへの食品輸入に関する契約締結後、米国企業に2600万ドルを支払わなかったとして、2014年に英国の高等法院の判決で12カ月の懲役を言い渡された。
人権法律事務所のゲルニカ37は英紙デイリー・テレグラフに対し、英政府はアル・アフラス氏に制裁を再び科すべきだと述べた。
ゲルニカ37の弁護士であるイブラヒム・オラビ氏は、「タリフ・アル・アフラス氏よりもはるかに目立たない存在であるシリア人有力実業家たちは、英国がEU加盟国だった時、非常によく似た基準の下で制裁リストに加えられており、英国のEU離脱後、英国の制裁対象に移行した」と話した。
シリアのブリティッシュカウンシルはテレグラフに対し、「シリア政権の主要な資金提供者の一人」を制裁リストから除外する英政府の決定にショックを受けたと述べた。
カウンシルによると、アル・アフラス氏は「シリア政権に直接的な経済支援」を提供し、「同政権が戦争犯罪と人権侵害を犯し続けるのを可能にしている」という。
カウンシルのエグゼクティブマネジャーを務めるマゼン・ガリバ氏は、「私たちの考えでは、今回の決定は、シリア政権を支援し犯罪活動に関与したすべての人物に責任を負わせるという英国の現行政策に適合しない」と話した。
身の安全を懸念して匿名を希望したあるシリア人実業家は、テレグラフに対し、アフラスグループのような事業は政権の支援を受けなければ発展することはできないと述べ、以下のように続けた。
「ダマスカスでは、政権の支援を受けて、政権を100パーセント支持しない限り、誰もアル・アフラス氏のようなビジネスは行えない」。
アル・アフラス氏はアサド政権が2019年に早急に資金を集めるために企業に対し大規模なゆすりを働いた際に被害を被ったが、同氏とアサド氏は良好な関係に戻ったと報じられている。
英政府は、シリア政権と関係を持ち同政権を支援する人物を対象にした制裁を科し続けることを改めて表明した。
保守党のケビン・フォスター議員は先月、声明の中で「英国の制裁はアサド政権とその支持者に明確なメッセージを伝えるものだ。同政権が重大な人権侵害を犯し続けるのを我々は傍観しない」と述べた。
「制裁は、そのような人物の責任を追及し、また、制裁対象者が英国に入国し、英国の銀行を介して資金を動かし、英国経済から利益を得るのを防ぐ目的で使用される」。