Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • チュニジア、気候変動に対抗する希望の種を蒔く

チュニジア、気候変動に対抗する希望の種を蒔く

2021年6月12日、首都チュニスから北西30キロメートル(18マイル)ほど離れたジェダイダの農業地帯で小麦を収穫するチュニジアの農民。(AFP)
2021年6月12日、首都チュニスから北西30キロメートル(18マイル)ほど離れたジェダイダの農業地帯で小麦を収穫するチュニジアの農民。(AFP)
Short Url:
01 Sep 2021 06:09:56 GMT9
01 Sep 2021 06:09:56 GMT9
  • チュニジアで、1980年代に開発された小麦の品種は虫害で枯死しつつあるが、伝統的な品種のほうが耐性が高そうだと農民はいう

チュニジア、ジェダイダ:北アフリカの国チュニジアが干ばつや病気、気候変動に苦しむ中、同国の農民は未来を確実なものにするため過去に目を向け、在来種の種子を蒔いている。

伝統的な種子は環境に最もよく合った遺伝遺産を受け継いだものなのだと、チュニジアでサステナブル農業の発展を推進する国立ジーンバンク(National Gene Bank)のマヘル・メディニ氏は語る。

「何百年、何千年もの時を経た遺伝子の貯蔵庫なのです」とメディニ氏は語り、これらの種子はますます危険度を増す地球温暖化の影響に対する耐性がより高いのだと付け加えた。

気候変動は降雨量、気温、湿度に厳しい変動をもたらしており、作物に病気を引き起こしていると氏は語る。

「適応の基礎は多様性です」とメディニ氏は語る。

チュニジアで、1980年代に開発された小麦の品種は虫害で枯死しつつあるが、農民によると伝統的な品種のほうが耐性が高そうだという。

かつてチュニジアの農民は在来種の種子を用い、次の季節に蒔くために作物の一部を取っておいた。

雑種や遺伝子組み換えの種子の開発の結果よりよい収穫が得られるようになり、在来種の多くが使用されなくなった。

問題のひとつは、新しい品種の種子は植え直すことができず、農民が毎年さらに多くの種子を買い入れなければならないことである。

現在、一部の農民は先人が採用していた手法に目を向けている。

モハメド・ラサド・ベン・サレ氏は、首都チュニスの北西約30キロメートルの農業地域ジェダイダで農業を営んでいる。

8年前、氏はアル・ムセクニとして知られる伝統的な小麦の品種に切り替えた。氏の畑では今、収穫が大詰めを迎えている。

農地のヘクタール毎の区画から収穫された小麦は区画別に計量され、各区画の生産性を算出できるようにしている。

「良い結果が出ています」とベン・サレ氏は言う。

他の農民に会うと、氏は伝統的な種子の成果について知らせている。

近年の収穫量の全国平均はヘクタール当たり1.4~2トンだが、ベン・サレ氏の畑の収穫量は5トンだという。

ベン・サレ氏は氏の使用する種子は干ばつや病気への耐性がより高く、これはその分使用する殺虫剤も少なくて済むことを意味すると報告する。

「新しい品種は弱く、すぐにカビの影響を受けます」と氏は語る。

大半の農民が季節毎に新たな種子を購入し、チュニジアは現在、種子の70~80パーセントを毎年輸入している。

「地元や在来の種子への回帰は、食の主権を取り戻すために必要な条件のひとつです」と農業政策の研究者、アイメン・アマイェド氏は語る。

国際連合食糧農業機関(FAO)は雑種種子の使用増加について警告を発しており、在来種および各地の遺伝遺産への脅威とみなしている。

FAOは過去1世紀において、世界の作物の多様性は約4分の3が失われたと試算している。

しかしチュニジアのジーンバンクは「遺伝遺産を取り戻す」べく取り組んでいる。

.2008年以来、ジーンバンクは農民から伝統的な種子を収集するとともに、世界中のジーンバンクに貯蔵されたチュニジアの在来種の種子を取り戻すべく取り組んでいる。

これまで、世界中で見つかった11,000以上の果物、穀物、野菜の種子のうち7,000以上の標本を取り戻すことができた。

これらの種子は、再びチュニジアの土壌に蒔かれつつある。

ジーンバンク所長のムバレク・ベン・ナスール氏によると400人以上の農民がこれらの種子を使用する説得に応じ、アル・ムセクニやアル・マフムディ等の古い品種が再び蒔かれているのだという。

「これらの種子はこの土地の子孫であり、彼らはそれがわかっているのです」とベン・ナスール氏は語る。

「私たちの品種は何千年にもわたり気温上昇や間伐に適応してきましたから、気候変動や気温上昇にも耐えます」と氏は付け加えた。

先月発表された国連の気候変動に関する政府間パネルによる報告書では、気候は以前の見通しよりも速く、しかも人間の活動が原因で変動していることが明白に示された。

8月は気温の記録が塗り替えられた:チュニスでは正午に48℃(華氏118度)に到達し、同市の1982年の46.8℃の記録を破った。

「現在から2050年までの間に、世界中の気温が1.8~2度上昇します」とベン・ナスール氏は述べた。

「2050年は明日にも迫る勢いです―遠い未来の話ではありません。耐性のない品種は消え去ります」

AFP

特に人気
オススメ

return to top